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リリアナとの戦いの火ぶたがついに幕を上げた。
先手を打ってきたのはリリアナ。
まずは小手調べと言わんばかりに両手に持っていた小型ナイフを宙に持ち上げ、同時にほとんど間を開けることなくオレに向かって飛ばしてきた。
飛ばされたナイフは不規則な動きで常人では対応しきれないレベルの速さだが、ここをオレは前日に買っておいた拳銃を取り出し、狙いづらい動きをしてくる2本のナイフを一発で撃ち落とした。
真っすぐな軌道であれば、多少拳銃を取り出すのに時間がかかったとしても問題はないのだが、さっきのナイフは明らかに意思をもった動きをしていた。
「流石にこの程度の攻撃はちゃんと対応してくるんだ。流石だね。じゃあ、次はこれで行くよ!」
今度は近くに置いてあった十本近くある様々な種類のナイフを手に取ることなく、能力を使ってナイフを自分の周りに浮かせ、今度は一斉にではなくわずかに時間をずらしながら間髪入れずにさっきよりも速度を上げた状態で飛ばしてくる。
相変わらず飛んでくるナイフの挙動は不規則で、やはりナイフそのものに心という名の意思が宿っているような動きをしている。
ここは流石に拳銃一つで全てのナイフを撃ち落としきるのは難しいので万が一のために用意していた保険用拳銃二つの内の一つを一度口にくわえ、先に右手に最初から持っていた拳銃で不規則な動きで飛んでくるナイフを先に五本ほど落とした後、くわえていた拳銃を既に持っていた右の拳銃と瞬時に持ち替え、ほとんど時間をかけることなく残りのナイフも全て撃ち落とした。
前日に武器部屋だからそこで武器を補充すればいいという先入観を捨てて、自分のKPTを使って最低限の自分専用の武器を補充しておいた甲斐があった。
「すごいね。今の攻撃も殺された人たちは反撃どころかまともに抵抗すらできずに突き刺されて死んでいったのに、完璧な動きで処理するなんて。やっぱり今まで私が戦ってきたどんな奴らよりも強いね」
自分の攻撃を全て防がれてもなお、この余裕の表情。
やはり、さっきの攻撃はリリアナなりのオレの実力を測るための様子見だったわけか。
それでも、今の二回の攻撃である程度リリアナの能力がわかってきた。
やはり、彼女の能力は剣やナイフといった刃物を自分の操り人形のように操ることができる能力だ。
飛んできていた刃物が真っすぐできれいな軌道ではなく、ブレながら不規則な軌道で飛んできていたのはリリアナが刃物そのものを操っていて、その刃物を意図的にブレさせることで拳銃による撃ち外させる狙いがあったのだろう。
「その顔はある程度私の能力にも察しがついたのかな?」
「大体の能力はな。刃物を操り人形のように操る能力といったところだろ?」
「ご名答! まぁ流石にわかるよね。わかったところで私の有利は変わらないけど」
リリアナの言う通り、仮にこいつの能力がわかったところでこちらが不利だという状況に変わりはない。
なんせここはリリアナのホームと言っていいほどの豊富な刃物の数々。
言うなれば、リリアナの方が武器に困るという状況はまずない。
オレとしては長期戦になればなるほど、リリアナの豊富な攻撃手段に耐え切れなくなっていき、ジリ貧でやられるリスクがある。
この完全アウェイの状況をどう打開していくか。
オレはすぐそばに並べられていた爆弾を片手に取り、村上と特別模擬をした時のようにふんわりとした軌道で投げる。
リリアナはすぐさま近くにあったナイフで爆弾を空中で起爆させる。
爆弾は空中で轟音と共に大爆発を引き起こし、辺りは鼠色の煙で覆われる。
「目くらましのための爆弾……この程度で私を騙せるとでも?」
リリアナは不敵に笑った後、今度はナイフではなく近くにあった剣を持ってくるとこの日初めて自らの右手に持つ。
そして背後から忍者の如く迫っていたオレの方へと真っ二つにするべく振り下ろされた。
対するオレも、この攻撃をある程度推測した上での攻めなのでこちらも保険用に用意していた小型攻撃ナイフでリリアナの攻撃を防ぐ。
「へぇ~。そんなナイフで私の攻撃防げるんだ」
「そっちこそ、流石に不意打ち程度では通用しないようだな」
互いに攻撃は読み切っているというわけか。
リリアナの攻撃をうまく勢いに合わせて受け流し、わずかに態勢が崩れたところに拳銃を右手に持ち替え、引き金を引こうとするがリリアナもすぐに武器倉庫に並べられているナイフを拳銃の方へと飛ばした。ナイフは銃弾が放たれるよりも先に拳銃に直撃し、右手から離れていった。
さらにリリアナは追い打ちをかけるべく、今度はナイフではなく複数の剣をオレの方へと今度は数制限なく飛ばしてきた。
ここからは新たに飛ばしてきた剣だけでなくリリアナの本人の攻撃にも対処する必要があるわけか。
ここは一度、リリアナから距離を取り、凄まじい勢いと数で襲ってくる剣に対して近くにある武器などを投げ飛ばして剣の軌道をずらしながら、中にある倉庫の方へと身を隠した。
リリアナは完全に爆弾の煙が消えていなかったこともあり、オレの姿を見失った。
「一時的に身を隠したようね。流石の危機管理能力といったところかしら。でも、どれだけ逃げようともどれだけ隠れようとも私の刃には逃れられない運命なのよ!」
リリアナは自身の高揚感をさらに増幅させると、パチンとこの広い倉庫全体に響くように鳴らす。
すると、至る所に落ちていた剣たちが命を宿して蘇ったかのように次々に宙に浮き始め、そのままリリアナの方へと近づいていく。そしてリリアナの合図とともに何かの号令がかかったかのように剣たちは一斉に合体し始め、そして剣たちは一つの巨大な剣の刃の部分が残った円盤に近い武器へと進化を遂げた。
そして、リリアナの両手にはその剣円盤を繋ぐ鉄の紐をガッチリと掴む。
「さぁ。この一度動くと私の意思以外に止まる手段がない剣型殺人円盤ヨーヨーから何秒耐えられるかな!」
リリアナがこの日一番の楽しそうな声を上げると、そのまま殺人円盤ヨーヨーを豪快に振り回し始めた。
殺人円盤ヨーヨーは聞いたことのない破壊音と共に倉庫中を駆け回り、次々と破壊神の如く辺りを蹂躙していく。
その殺人円盤ヨーヨーはすぐにオレの隠れていた武器部屋にも躊躇なく迫ってくる。
最初はうまく身をかがめるなどで殺人円盤ヨーヨーの餌食にはならなかったがそのわずかに見えたオレの姿をリリアナは見逃さなかった。
「そこね!」
リリアナは獲物をターゲットに捉えたチーターの如く、二つの殺人円盤ヨーヨーをオレの方へと襲わせる。
仕方なく、隠れている状態から表に出ると殺人円盤ヨーヨーの餌食にならないギリギリのタイミングで回避し続けながら動き回る。
「このヨーヨー、威力もさることながら恐ろしいくらいに小回りがいいな」
この殺人円盤ヨーヨーの一番恐ろしいところにオレは気づいた。
それは、このヨーヨーはリリアナ自らが両手で操作していることもあり、恐ろしいくらいに方向の切り替えが早いということ。
これはつまり、どれだけ殺人円盤ヨーヨーが動きづらくなるルートで立ち回ったとしてもヨーヨーの小回りと切り替えの速さによって瞬時に追いかけることができるということ。
リリアナがこの殺人円盤ヨーヨーをかなり使いこなせているからこそできる攻撃なのだが、オレにとってはまさに厄介極まりない。
今のようにずっとギリギリで回避し続けていたとしても、いずれ疲れなどで足に疲労が来て動きが少しでも鈍くなれば殺人円盤ヨーヨーの餌食になるのは目に見えている。
さらに、リリアナは殺人円盤ヨーヨーのみでは仕留めきれないことを察すると今までと同じく、ほとんど躊躇なく、なおかつこの日一番のスピードでナイフと剣を織り交ぜながら間髪なく飛ばしていく。
怒涛の波状攻撃に流石のオレも次第に神経と体力を奪われていく。
その時だった。
わずかに集中力を欠いたその隙をリリアナの刃は逃さなかった。
暴れ回る殺人円盤ヨーヨーを避け続けることに集中力を一極集中させていたことでリリアナが飛ばし続けていた剣とナイフにほんのわずかに反応が遅れ、対応するよりも先にナイフがオレの右足に突き刺さった。
「ぐっ!」
ナイフが突き刺さった右足に激痛が走る。
常に全速力で避け続けていた足が一気に加速を落とした。
その隙をリリアナは逃さなかった。
「かかったね!」
巧みな操作術で殺人円盤ヨーヨーを動かし、避けれなくなっていたオレの身体をグサリという日常生活では絶対に聞かないであろう生々しい音が響くと同時に2つのヨーヨーについた刃によって貫かれた状態で武器倉庫の壁を破壊したところで止まった。
そしてリリアナは入念かつ確実に息の根を止めるべく残された数本の剣をオレの方へと飛ばす。
そして、飛ばされた剣は血だらけになっていたオレの身体を無慈悲に貫いた。
リリアナは数本の剣と殺人円盤ヨーヨーによって貫かれたオレの身体がピクリとも動かなくなったのを確認したリリアナは殺人円盤ヨーヨーを自分のところへと戻す。
「これで任務は完了っと。流石に今まで私が殺してきた奴らよりも強かった。けど、あの人からは警戒するべきって言ってたけど、想像よりも大したことなかったわね。残念だけど、あなたを作品として創り上げるに値しない。やはりまだまだ私の理想のためにはこの刃を赤く染め続けなければならないわけか~」
リリアナは動くなくなった鶴川の姿に失望の表情と眼差しで見つめていた。
そして、そこから一転してまた不敵な笑みを浮かべると
「さてと。次のターゲットはシルフィー一族のあの女と死んだこいつに親しい関係だったあの女ね。二人はどんな素晴らしい血と絶望という名の作品を創り上げてくれるのかしらね」
再び獲物をターゲットに捉えた目つきと表情へと変貌を遂げた。




