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本当であれば、朝比奈も逃げて行った白いローブの女の方へと追いかけたかったそうだが、今の両足の状態ではとても追いつけないと判断した上で、それよりも先にオレたちに事の状況を伝えるべきだと判断し、そして現在に至る。
「白いローブの女か。この前の一件といい色々と気になるところがあるな」
まだ不確定要素もあるが、一連の流れや朝比奈の話を聞いている限りではこの間オレたちを遠くから襲撃してきた人物と同一人物であると見ていいだろう。
その考えはベルティアも同意見だった。
「朝比奈さんの話を聞く限りではおそらく、死神の目の誰かがやったと見て間違いなさそうね。美神さんをなぜさらったのかととか色々謎もあるけど。その前に村上君、早速だけど一つ聞いてもいいかしら?」
「ん? 俺が知っている範囲でならどうぞ」
ベルティアは村上の方に視線を飛ばし、村上は分かってましたと言わんばかりの表情でうなずく。
確認を取ったベルティアはそのまま聞こうとしていた内容について問いただす。
「村上君、あなたがこの学園に入学してからヴィサラ含めたサルクレーン家の関係者が白いローブを被った人間と何かしら接触しているところは見たことあるかしら」
「いいや、そんな奴は一度たりとも見てないな。ただ、ヴィサラ本人が何度か定期的に他クラスを行き来しているところは見たことあるぜ」
村上の発言にベルティアはほとんど間髪入れずに立て続けに質問を行った。
「なるほどね。じゃあそのヴィサラ自身が直接訪れたクラスが具体的にどこのクラスかはわかる?」
「そんなことを聞いて何をする気か知らねぇがよ、一応言っておくと一部のクラス以外には最低でも一回は行き来しているはずだぞ」
一部のクラスというのは気になるが、今の村上の話的にオレたちのT組には来たことがないのは間違いなさそうだ。
ベルティアは少し、頭の中で軽く一度状況を整理をした後、もう一度村上に質問を投げかけた。
「わかったわ。じゃあ、どちらかでいいから答えてくれる? ヴィサラが来ていない一部のクラスかヴィサラ自身が複数回行き来したクラスがどこかわかる?」
ここであえて両方聞こうとせずに、片方だけ答えてほしいといったのはどちらの方が正確な情報なのかを判断するため。
仮にどちらかの情報が聞けなくても、どちらか情報を集めたり、整理をしていけばある程度謎はわかってくるものだという割り切っているようにも感じ取れた。
「そうだな。俺は基本的にヴィサラの奴隷として積極的に使われていたわけじゃねぇから絶対にそうだという確証はないということを前提に言うが、ここ最近のヴィサラはやけにE組に足を運んでいる様子だったそうだぜ。ただ、直接見たわけじゃないから誰と何を話しているのかまではわからないな。もう一つのどのクラスに来ていないのかは正直、俺にはわからんな」
村上の話を最後まで聞いたベルティアは心の中で考えていた可能性と一致しつつあることにニヤリとベルティアの口角が自然と上がった。
「なるほどね。ありがとう。今はこれだけでも十分よ。それじゃあ次に朝比奈さん、少しだけ質問してもいいかしら?」
自分がベルティアから何かを聞かれるとは思っていなかった朝比奈は不意を突かれたような驚いた表情に変わった。
「な、何かな? それより玲奈ちゃんを助けに……」
「それはこの質問に答えてからよ。大丈夫。美神さんはきっと無事なはずよ。それじゃあ、早速だけどあなたが奇襲してきたのは女性だって言ってたけどどこで女性だと判別したの?」
「え? え、え~と、パッと見た感じの体型かな。声は全くしゃべってなかったからわからないけど少なくとも胸が男性よりは膨らんでいたからそうなのかなって」
ベルティア自身も実際に見ていたがベルティアの場合はかなりの遠距離からの視認だったこともあり、体型だけで性別を推測することは難しかった。
だが今回の朝比奈の証言で白いローブの人物の正体は少なくとも女性であることは確定した。
ベルティアはさらに質問の内容を詰めていく。
「他にはないの? 例えば髪の色は何色だったとか」
ベルティアが足を怪我している朝比奈にドンドンと近づいていくと、朝比奈が少し嫌がった雰囲気で視線を逸らしながら必死にその当時の記憶を思い出していく。
「え、え~と~……。た、確か戦っている最中に一瞬しか見えなかったから確証はないけど、髪の色は確か~、紫色? だったような…………」
朝比奈はさっきの出来事から必死になって記憶を呼び起こして出した答えは、紫色。
その答えを聞いたベルティアの中の一つの推測がついに確信へと変わった。
「なるほどね。朝比奈さん、ありがとうね。これでわかったわ。先週の私たちに対する奇襲とさっきの朝比奈さんたちを襲った襲撃犯の犯人が」
この言葉に一同が一斉に身を乗り出すように驚く最中、オレの方も一連の事件の実行犯が誰なのかという回答がわかった。
「今の情報だけでわかっただと? 誰なんだよ? 今のそいつの話を聞いている限りだけでは紫色の髪色かつ女性なんてこの学園内にはそこそこいるぞ」
対照的に協力者になったばかりの村上の方は分かっていない様子だが。
まぁ途中から事件の経緯をそこまで詳しく知っているわけではない以上は仕方ないか。
少し時間が空いた後、朝比奈の方も犯人として可能性のある人物に一人の女性が浮上した。
「ま、まさか犯人って…………!」
「今回の一連の事件の犯人は…………」
オレ達がようやく事件の犯人を突き止めた一方、連れ去られた美神は暗い地下倉庫部屋へと連れてこられ、両手と両足を小型ナイフによって強引に痛々しく磔にされていた。
「こ、ここ、は? ど、どこ?」
軽く意識を失っていたせいか目を覚ました直後の記憶が抜けかけていたが、突き刺さっていたナイフによる激痛が美神を襲う。
それでも、強烈な激痛をこらえながらも声を絞り出しながら肉食動物が睨みつけるような目で前を向いた。
「あ、あなた、だったんですね。今回の一連の事件の実行犯で、そして私を狂わせたあの惨殺事件を起こした犯人……! リネイク・エード・ラライナさん!」
怒りと憎しみの入り混じった自らを削り取って取り出した声に反応するように紫色のツインテールに両手に血で染まったナイフを持って、リネイクが姿を見せた。




