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朝比奈の言葉、そして血がひたたり落ちる両足を庇いながら駆けつけてきたその姿を瞬時に事態を把握できた人間はいなかった。
「ど、どういう意味だ、朝比奈? そ、その足の怪我といい一体何があった?」
オレはすぐさま朝比奈に何がったのかという状況説明を求める。
同時に負傷した両足を簡単にでも治療しようとするのを朝比奈が制止した。
「ま、待って! 私の治療は後で自分の力で何とかするからそれよりも早く玲奈ちゃんを助けないと!」
「朝比奈さん、まずは誰に襲われて誰が美神さんをさらったのか教えてくれる?」
何としてでも美神さんを助けなければいけないと急ぐ朝比奈を落ち着かせるようにベルティアは冷静に話す。
ベルティアの言葉で少し落ち着きを取り戻した朝比奈はいつもよりも少し覇気のない声で語りだした。
「あれはベルティアさんに怪しい人間が通らないか見張っていた時のことだよ」
今から十分ほど前のこと。
オレ達がちょうど村上と最初の協力者交渉していたタイミングだ。
朝比奈と美神は言われた通りに辺りを警戒しつつ、空いていた教室に隠れながら近くに誰かが通らないかを見張っていた。
その最中、朝比奈は一度トイレに行きたいといって一緒に近くにあった女子トイレに言った直後のこと。
「きゃー!」
女性のあげる悲鳴にしては声のボリュームが小さかったがそれでもはっきりと美神の悲鳴だとわかる声だったという。
急いでトイレを済ませ、女子トイレから出ようとしたその瞬間、左側から銃弾とほとんど変わらない勢いで一直線に投げてきたような凄まじい勢いで剣が飛んできたそうだ。
朝比奈は間一髪のタイミングで敵の奇襲と思われる攻撃を完璧な身のこなしで回避したが剣の方は一直線に一番奥の壁に直撃し、ものすごい音と共に壁は跡形もなく崩れた。
朝比奈はすぐに剣が飛んできた方へと視線を移動するがそこには誰もいない。
それどころか女子トイレの近くで待っていたはずの美神の姿もない。
辺りを何度見渡しても敵も美神の姿もどこにもいなかった。
「仕方ない。ここは私の力を使って何とかするしか」
朝比奈が自分の持つ能力を発動しようとしたその瞬間。
死角になっていた階段付近から白いローブと謎の一つ目の仮面を被った女性が美神の首に鋭いナイフをちらつかせながら姿を見せた。
「の、希ちゃん!」
脅されているという状況をわかっていながらも必死に声を出す美神。
その声を聴いた朝比奈に迷いはなかった。
「待っててね玲奈ちゃん! 私がそいつをぶっ殺して今助けるから!」
朝比奈はいつも以上に真剣な表情で自分の愛刀を自らの片手に取る。
朝比奈がさっきは発動できなかった自らの能力を発動しようとするよりも先に白いローブの女が自分の周りにさっき奇襲を仕掛けた剣を次々と出現させ、今度はさっきよりも数倍早いスピードで次々と剣を飛ばしてきた。
朝比奈は自分の愛刀でこれに応戦し、飛んでくる剣を次々と撃ち落としていく。
しかし、美神が人質に取られている状況でうかつに攻勢に回ることができず、防戦一方の状態が5分ほど続いた。
これほどの戦いがオレたちの耳に入ってこなかったのはこの学園の全ての扉が完全防音で出来ており、よほどとんでもない爆発音でもない限りはあらゆる音は基本的に遮断されて聞こえないようになっているからだ。
話を戻し、防戦一方の朝比奈は何とか打開策を見出すべく、普通の学校よりも広い学園の廊下を利用し、抜群の運動神経で動き回りながら相手の隙を伺っていた。
しかし、相手が長期戦をしたくないという思惑があったのか今まで出し続け来た剣とは別に今度は小型ナイフをローブから取り出すと、回避し続けてきた朝比奈の両膝上辺りにナイフを直撃させた。
「うっ…………!」
流石の朝比奈も突き刺さった鋭利なナイフが両足から全身へと激痛を走らせ思わず膝をついてしまった。
「このままでは立て続けに攻められたらやられるかもしれない」
と朝比奈は直感的に感じたそうだ。
しかし、白いローブの女は朝比奈に追撃を加えることもせず、そのまま美神を抱えたまま足早に階段下へと姿を消していった。




