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人類を否定し、神に成り代わる  作者: 雨結 廻


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8

ベルティアの意味深な言葉が中々離れないまま刻一刻と時が過ぎていった。

あの後、オレは特にベルティアに何か言葉を投げかけることなくそのまま教室を後にした。

本来であれば、あそこで何かオレの方から何かしらの言葉を言うなり、何かしら行動をしてあげるべきだったのかもしれない。

だが、今のオレにはベルティアにかけてあげるべき言葉も行動も思いつかなかった。

単純に本能が何もしないという判断を下したのか、それともあの瞬間に最適な案が浮かんでこなかっただけなのか。

どちらにせよ、この先の未来でこの言葉の意味の真意を知ることになるだろう。


そして、時は過ぎ一週間後の朝。

朝一番に開くカーテンはもはやオレの中のこの学園での朝一のルーティーンになりつつある。

朝食の準備をしながら、パジャマを脱ぎ、身支度を済ませていく。

いよいよ今日からベルティアが言っていた1―F組の村上を協力者にするべく、本格的に動いていくことになる。

この一週間の間にベルティアは村上を協力者にするための準備に取りかかり、オレの方はと言うと村上を協力者に仕立て上げる際にF組の誰かにバレないようにベルティアから事前に許可を取った上で、同じクラスの朝比奈と美神に協力をしてもらい、一人は現場近くの監視役をもう一人は万が一見つかりそうになった時の陽動役として動いてもらう予定だ。

ただ、これはあくまで万が一の保険という意味合いが強く、実際は入学以後積極的に仲良くなった朝比奈と美神を本格的な仲間として迎えてあげたいという意向が強い。

それにしても、入学してから各々が主に単独行動を中心になりつつある中、積極的に声をかけてくれた朝比奈には本当に感謝しかない。

最初は嫌がっていた美神も今ではオレに対してこそ完全に敬語がなくなっていないが朝比奈相手にはため口で話すことも少しずつ多くなってきた。


そんな風に考えていると時は放課後を迎える。

終礼を終え、生徒が次々と自分の宿へと戻って行く最中、オレとベルティア、そして朝比奈、美神の四人は自分たち以外のクラスメイト全員が教室から出ていくのを確認した後、またあの時のように教室の内側から鍵をかけ、作戦に向けた最終チェックへと入る。

「いい? 今回の目的はあくまで村上を協力者にするために接触することが目的。F組の怒りに触れるような事はしないでね。特に朝比奈さん。あなたに言ってるのよ」

開口一番のベルティアの朝比奈の名指しは相変わらず。

というか初めて朝比奈に直接声をかけられた時からどんだけ朝比奈のことが好きじゃないんだよ。

「わ、わかってるって。というか私たちは誰かが入ってきたり、盗み聞きされないように見張っておくだけでいいんでしょ? 心配ないって!」

朝比奈がしっかり者でなおかつ、とても優秀な生徒であるってことは重々承知のつもりなのだが朝比奈の返事は時々ちょっとだけ心配になる。

まぁ入学式での垣見内を一瞬で黙らせた実力を見れば何も心配はいらないと思うが。

「F組に関する情報は事前に教えたと思うけど、学園生活が始まって既にサルクレーン家によるクラス内の傀儡化が始まっているわ。実権を握っているのはサルクレーン・ヴィサラ。サルクレーン一族の次期跡取り最有力候補ね。一応担任の先生もいるけど実態は形だけで信用は出来ないでしょうね」

「で、その中でも村上を協力者候補に選んだのは誰もサルクレーン家に逆らえないような状況になりつつある中で唯一といっていい反対派でなおかつ無能力者だからだろ?」

ここまではこの一週間でベルティアから送られてきた新しい情報。

わざわざ一週間という期間を開けたのは村上が本当に協力者に最適な人間なのかどうかを見極めると同時に現段階のF組内部の状況を正確に把握するためだった。

その確認に美神を連れて行ったことが何よりの証拠だ。

「そう。でも私の目だけじゃ絶対にそうだと言い切れなかったから美神さんの力を借りたけど本当に助かったわ。彼女、戦いにおいては最弱かもしれないけどこういう偵察においては本当に優秀ね」

「そ、そ、そ、それほどでもないですよ~」

珍しくベルティアの口から直接褒められたことに思わず照れを隠せない美神。

オレも知ったのはつい最近のことなのだが、美神は神の種の力を手に入れた能力覚醒者で、その能力は触れた仲間を他人の視線から見えていない状態にするというもの。

透明になったり消えたりするわけではなく、触れた人間が他人の視線から一時的に消去されるということらしく、俗にいういるはずなのに見えていなかった状態に近い。

「とはいえ、村上との接触はこううまくはいかないでしょうね。一応、見晴らしのいい屋上に来てほしいという匿名の手紙を偵察している時に彼の机に入れておいたけど来るかどうかは村上次第ですから」

唯一の懸念があるとすれば、そもそも村上が目的地に来るかどうかということ。

万が一、ヴィサラ率いるサルクレーン家の関係者にその手紙の内容がバレたりでもすれば作戦は失敗。

村上もただでは済まない上、ヴィサラ側も外部からの介入を警戒して犯人探しや防御を強化する可能性だって十二分にある。

それでもなお、村上を協力者という名のスパイにする可能性に賭けたのはベルティアにとってはそれだけF組のサルクレーン家一族が死神の目との繋がりを手に入れる上で最重要カードとなりえると判断したからだ。

「さて。あんまり教室に居続けるのもかえって怪しまれるだけだし、そろそろ目的地に向かいましょうか」

「はーい」

「りょ、了解です」

「そうだな。いくか」

ベルティアの合図とともに内側からかかった鍵をこじ開け、今度は普通の鍵で教室を占める。時刻は既に夕方に差し掛かっていた。

そしてその足で職員室へと鍵を返すことはなく、一目散に目的地である校舎の屋上へとオレたちは歩を進めていった。


目的地へと向かっていた最中、F組の生徒達とは意外にもすれ違ったりすることもなく、あっさりと屋上に着いた。

「ここから先は私と鶴川君でやるから、朝比奈さんと美神さんは一度ここから離れて村上が来るまでばれないように隠れておいてくれる? 村上の顔写真は予め見せておいたから大丈夫だと思うけど」

ベルティアの確認に朝比奈と美神は互いに顔を合わせ、その後息を合わせたかのように

「はい。問題ありません!」

と元気な声で答えた。

その様子を見たベルティアはフフッと小さな笑みを浮かべる。

「その様子なら心配なさそうね。それじゃあ、行きましょうか」

朝比奈たちが屋上へと続く階段から降りていくのを確認した後、オレとベルティアは屋上の扉を開けた。

扉を開けた直後、オレたちの視線に真っ先に飛び込んできたのは両腕を腕組みしたまま、瞑想状態で待っていた村上慶悟の姿だった。




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