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人類を否定し、神に成り代わる  作者: 雨結 廻


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6

強烈な出来事の連続に、一つ一つ正確に状況を把握していく。

「ベルティア、さっきの奇襲って……」

「おそらく、一連の殺人事件の犯人であり、私たちを消したい人間の犯行でしょうね」

ベルティアの言葉に壊れた教室に更なる張り詰めた緊張感が重くのしかかってくる。

窓の外から飛んできた剣の方へと見ると、そこにはもし避けきれていなければ即死不可避だった剣が教室の壁をえぐりながら突き刺さっている。

同時にその剣には見覚えがあった。

「あの剣、石山が殺された時に利用されたものと同じものか?」

「すぐにわかった辺りは流石ね。ただ一点、私を押しのけようとしたふりをして私の胸を掴んでいること以外は」

ベルティアの静かな怒りに込められた言葉と同時に瞬時に自分の手元へと視線を向ける。

そこにはしっかりとベルティアのそこまで大きくない胸をがっちりと掴んでいた。

普通ならばまずありえない行動なのだがおそらく、生命の危機を察知し、本能的に女性の胸に触ってはいけないという男の中に潜むトリガーが一時的に外れてしまったのだろう。

と、一応自分の中で言い訳をしておく。

「すまない。別に意図して触ろうとしたわけじゃ」

「ふん。別にいいわ。触り心地はどうだった? 私の平らな胸の触り心地は」

露骨に怒りを表立って出しているわけではないが、一つ一つの言葉が明らかに発言の内容次第では殺すこともいとわないという強い殺気が見え透いて感じることだけはわかる。

「どうせどういう言い方をしてもお前は文句を言うんだろ? だったらオレは感触に関しては黙秘を貫く」

「そう。なら、私の愛用しているこの銃で二度と青い空を拝めないようにしてあげるわ」

「すみません、柔らかかったです」

こんなに殺伐とした状況なのに一転して全く緊張感のないやり取り。

ベルティアがオレの緊張感を解くためにあえてやったのかどうかはわからないが皮肉にもおかげでそれまで一時的に持ち続けていた自分の本能を抑えることができた。

オレの言葉を聞いたベルティアは仕方がない様子でため息を一つ吐いた後、オレに向けて話を始める。

「素直なのか言い訳なのかわからないけど今回のところは特別にシルフィー一族の生き残りである私の目に免じて許してあげる。その代わり、といってはあれだけどあなたには犯人確保をお願いしたいわ」

「オレに? 別に構わないが理由だけ教えてくれないか?」

ベルティアの真意が読めず、思わず直接的にベルティアに向けて質問ぶつける。

そしてベルティアから帰って来た返答は意外なものだった。

「それがあなたにとって知りたい情報が得られる可能性があるからよ」

「オレにとって? それはどういう意味だ?」

知りたい情報というのが具体的に何を指しているのか。まさかとは思うがオレの父親が追っていた神の種に関するものとオレの家族を奪った犯人と組織を追っていることに関してなのだろうか。

「あなたって基本的には勘や察しはいいほうなのにこういう肝心なところは鈍感なのね。まぁいいわ。正確に言えば私とあなたに関する話よ」

「オレとベルティアに関する話? 申し訳ないが全然話が見えてこないな」

「まぁそういう反応が普通でしょうね。もっとも、具体的に言えば私とあなたのお父さんに関係する話ですもの」

そのまさかが的中した。

ベルティアの口から放たれたオレの父親との関係。

確かにオレの父親は定期的に事件の捜査や特別な出張などで遠くへと出かけることが多く、その関係で家族のオレですら知らない繫がりがいつの間にか生まれていたということも多々あった。

事実、ベルティアの方からオレの父親と接点があったと言われても椅子から転がり落ちるような衝撃は現時点ではなかった。

その後に放たれる言葉を聞くまでは。

「ご存じかどうかはわからないけどあなたのお父さんに私はあの白い炎の事件から助けてもらっているの」

白い炎の事件。

別名:ホワイトエンド事件

この事件は日本で起きたものではない。事件はロシアの首都、モスクワ近郊で起きたもの。

それでもなお、オレが日本国外で起きた事件について知っているのは日本国内でもかなり積極的に報じられていたからだ。

そもそも、オレの父親がこの事件に関与しているのが真意のほどはわからないがおそらく自らの独断でモスクワへと向かっていた事だけは確かだ。

ホワイトエンド事件がテレビで報じられた瞬間、休日だったにも関わらずに真っ先に最低限の用意だけをした状態で慌ただしく外出していったのをよく覚えている。

その当時はまだ幼少期かつ父親が急な外出でいなくなることはよくある話だったので特に違和感などを覚えたりすることはなかったが今にして思えば、父親が急な用事で外出していた時は決まって重大事件が起こった時ばかりだった。

初めてベルティア・シルフィーという名前を聞いた時点で間違いなくホワイトエンド事件で焼殺されたシルフィー一族の生き残りの可能性は高いと思っていたがやはり間違いなかったようだ。わざわざオレの父親のことを息子である自分に話している辺り、嘘をついている可能性も低い。

問題はホワイトエンド事件でシルフィー一族が壊滅されかけたこととオレの家族が殺された犯人とその組織とにどういう関係があるのか。

確かにどちらも形は違えど、オレの父親が関係しているのは事実。

だが、ホワイトエンド事件もオレの家族が殺された事件もいずれも犯人どころかどこの組織が関与したのかすらもわかっていない。

一部からは国家ぐるみの犯行だという声がなかったわけではないが、根拠としては薄く、世界中の警察組織が必死になって探しても未だにまともな手がかりすら見つかっていなかった。

そんな中で飛んできたベルティアの話。

どんな警察組織ですらもたどり着けなかった情報を持っているのだろうか。


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