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クスッと笑えるコメディ短編集  作者: 秋月心文


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パスワードのせいで人生が終わりかけた話

「うわあああぁぁぁ!!」


 俺は、今焦っている。

 なぜって、色も機種も同じスマホを持ってる誰かと、

 スマホを取り違えてしまったからだ。


 しかも、パスワードが一緒だ。


 あのスマホには何が入っていた?。


 ネットで拾ったエッチな画像がたくさん。

 電話帳はクラス女子の名前と写真だけ。クラス写真から切り抜いて登録した。

 妄想全開で俺がクラスの女子にもてまくる小説。


 やばいものばっかりじゃないか。

 やばい、やばい、やばすぎる。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 ことの発端は、うちの学校のシステムにある。

 登校時に、私物スマホを学校に預け、下校時に学校から返してもらうのだ。


 その時、スマホを取り違えた。

 同じ機種の同じ色だったからだ。


 だけど、待ち受け画面が違っている。

 知らない人の写真だ。誰だろう。


 職員室に行ったら、同じ機種の主は、もう下校してしまったらしい。


 大丈夫だ。慌てるな。冷静になれ。

 俺のスマホは、パスワードロックがかかっている。


 なんとなくいつものクセで、自分のスマホと同じパスワードを入力する。

 000000


 ロック解除されちゃった。

 俺のパスワードと同じかよ。

 パスワード、ザルすぎだろ。こんなヤツいるのかよ。

 俺もだけど。


 いや、待て。

 ということは、このスマホの主も、俺のスマホをロック解除できるってことだ。


 このスマホには、何が入ってるんだろう。


 良く知らない男性アイドルの写真。

 そいつが登場するBL本。


 加えてクラスの男子が登場しまくるBL本。

 陰キャで目立たないはずの俺まで登場してる。

 大丈夫か? こいつ?


 よくわからないポエム集。


 俺のスマホと同じくらいヤバいじゃないか。 


 いや、でも、誰のスマホかまでは、わからないんじゃないか?

 LI●Eアプリ - ホーム - 川口美佐子

 ん?、これ本名か?。うちのクラスで一番カワイイ女子じゃねえか。

 というか、腐女子だとは知らなかったわ。


 あれ?。まて、俺のスマホは、どうしてた?

 確か……本名だ。


 うわぁ。マジか。

 

 いやまて、クラスの誰かを偽装して、登録してるってことはないか?

 ふつう、ないだろうな。


 テッテケテッテケテッテテッテテッテテー


 うぉ!?。

 デフォルト設定の着信音じゃねぇか。

 着信音も俺と一緒かよ。


 電話に出る。 


「田口丈一郎だな!」


 電話の主は、ものすごーい、ドスの効いた低い声だった。


「あ、はい、田口です」


「おまえ、間違えて持って帰ったな!!」


「あ、はい、すみません」


「中身、見てないだろうな」


「見てません!

 ……男子のBL本なんて。」


 やべぇ、口がすべった。


「明日、何事もなかったように、学校にそのスマホを預けろ。

 明日は、間違えずに、スマホ持ち替えろよ!」


「あ、はい。そうします」


 怖ぇぇ……。

 やっぱり、男子が女子の名前で登録してたんだろうか?


 電話帳に「お母さん」って登録されてる番号があった。


 ここにかけてみたら、正体がわかるんじゃないか?


 電話をかけてみる。


 トゥルルル……  トゥルルル……


「はい、川口です」


「すみません、間違えました」


 ガチャ


 やっぱり、本人じゃねぇか。


 かわいい顔して、あんなにドスの効いた低い声出せるのかよ。

 女子って怖ぇぇ……。


 ・ ・ ・ 翌日 ・ ・ ・


 俺は、何事もないように、スマホを学校に預けた。


 下校時、今度は間違えないように、スマホを持ち帰った。

 ……はずだった。


 あれ?。待ち受け画面が違う。

 昨日の川口のとも違う。


 なんとなくいつものクセで、自分のスマホと同じパスワードを入力する。

 000000


 ロック解除されちゃった。

 俺のパスワードと同じかよ。

 パスワード、ザルすぎだろ。こんなヤツ、他にもいたのかよ。

 俺もだけど。


 今度は、誰のだ?


 田中隆かよ。


 うちのクラスで、一番怖いヤツだ。


 このスマホには、何が入ってるんだろう。


 良く知らない女性アイドルの写真。

 そいつが登場する百合本。


 加えてクラスの女子が登場しまくる百合本。

 大丈夫か? こいつ?


 自宅のネコと思われる写真が多数。

 予想より、かわいいヤツだな。


 でも、俺のスマホと同じくらいヤバいじゃないか。 

 しかし、同じ機種で、同じ色のスマホを、俺と川口以外も使ってるとはね。

 

 ・ ・ ・ 翌日 ・ ・ ・


 俺は、何事もないように、スマホを学校に預けた。

 下校時、今度は間違えないように……。


 って、クラスみんな同じ機種かよ!!。探しにくいわ。

 でも、スマホをケースに入れずに使ってたのは、俺たち3人だけだった。


 俺は、慎重に自分のスマホを探した。

 今日は大丈夫だ。待ち受け画面見て確認したからな。


 こうして、自分のスマホを持ち帰った。

 ……はずだった。


 あれ?。ロック解除したら、ホ―ム画面の待ち受け画面が違う。

 川口の写真に変わっていた。あかんべーした顔だ。


「ぷふっ……」

 あいつも、かわいいところあるじゃないか。


 スマホをロック解除したら、エッチな画像が、別なフォルダに入っていた。


 フォルダ名【今すぐ捨てなさい】

 余計なお世話だ。


 まさか、妄想小説も読まれたんじゃないだろうな。


「……」

 

 改ざんされとる。

 俺がクラスの女子にモテモテになるはずの小説が、

 俺がクラスの男子にモテモテになる小説に……。


 なんてこった。俺の苦労を返せ。

 そして、最終話にひとこと加えられてあった。


「お母さんに電話したバツです」


 はぁ。なんというか、川口の別な一面を見た気がした。

 妄想だけで、10万字の俺の超大作だぞ……。

 それが、それが……。


 あいつ……

 10万字全部書き換えやがった!!


 あいつ、人間じゃねぇ!! 執念すごすぎ。


「うわああああああ!! 俺の妄想を返せ!」


 ・ ・ ・ 翌日 ・ ・ ・


 俺は、何事もないように、スマホを学校に預けた。


 下校時、今度は間違えないように……。


 でも、今度は大丈夫だ。ケースにいれたからだ。

 スマホ買ったときについてきたヤツだけど。


 あいつらのスマホ裸だし、大丈夫だろ。


「……」


 同じケースのスマホが10個あるんだが……


「ケース付けた意味ねぇぇぇぇ!!」


 でも、俺は学習した。

 待ち受け画面を見ればいい。

 完璧だ。


 ……残ったスマホは二台。

 ケースは同じ。

 待ち受けもデフォルト設定。


 「……」


 000000

 ……解除できた。


 ホーム画面まで見れば確実だろうけど……

 まあ、そこまでしなくても大丈夫だろ。


 俺は、何気ない顔で家に帰った……のだが。


「うわああああああ!! 

 今度は山口洋子先生のスマホじゃねぇか!!」


 ……なんで、先生まで000000なんだよ。 

 お読みいただき、ありがとうございます!


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