英語のテストで満点を取る方法を教わったら、503点だった。
有田敦夫は、アメリカ生まれだった。
英会話の発音はネイティブ。
リスニングも完璧。
体格も良く、体育の授業では女子の視線を集める人気者だった。
――だが、そんな有田にも弱点があった。
なぜか英語の長文読解だけが壊滅的だった。
幼い頃、英語の本を読まされて苦い思いをしたせいか、長文を見るだけで頭が真っ白になるらしい。
英語担当の武田先生は、そんな有田を面白がっていた。
毎日のように、特殊な小テストを行った。
英語の質問に対し、英語で答える形式だ。
Could you tell me what flowers bloom in April and what they are like?
(4月にどんな花が咲くのか、
そしてそれらがどんな花なのか教えていただけますか?)
こんな問題が平然と出る。
英文が苦手な有田にとっては地獄だった。
武田先生は、毎回困る有田を見て満足そうにしていた。
ところが、ある日を境に、有田は毎回満点を取るようになった。
苦手だった長文もスラスラ読める。
「これで俺に弱点はない!」
イニシャルがAAだからという理由だけで、
自らを「AAランク」と名乗り調子に乗り始めた。
一方、クラスにはもう一人、英語が苦手な男子がいた。
渡辺渉。
イニシャルがWWなので、友人たちからは「草」と呼ばれている。
女子に黄色い声を浴びる有田を見ては、少しだけうらやましく思っていた。
ある日、渡辺は有田に聞いた。
「どうやって小テストを攻略したんだ?」
「メガネだよ」
有田は太い黒ぶちメガネを指さした。
翌日。
渡辺は伊達メガネをかけてテストに挑んだ。
もちろん、何も変わらない。
それを見た有田は腹を抱えて笑っていた。
そのとき渡辺は気づいた。
有田のメガネには、何かの「画面」が映っていたことを。
翌日、有田は風邪で欠席。
机の中には、例のメガネが置かれたままだった。
持ち帰るのを忘れたらしい。
チャンスだ!!
渡辺はこっそり拝借し、小テストに臨んだ。
レンズには英文が表示されている。
なるほど。
これを書き写せばいいんだな。
渡辺は、一字一句漏らさず答案用紙へ写した。
――やけに長い英文だな。
そう思いながら。
翌日。
答案を返す前に、武田先生は黒板へ渡辺の解答を書き始めた。
そこには、こう書かれていた。
unexpected status 503
Service Unavailable: Service Unavailable,
url: https://chatgpt.com/backend-api/codex/responses,
cf-ray: a20a2f5fae8180e3-NRT,
auth error: 503,
auth error code: biscuit_baker_service_me_circuit_open
教室が静まり返る。
武田先生はため息をついた。
「これは、ChatGPTに接続しようとして失敗したときのエラーメッセージだ」
「渡辺、カンニングはダメだからな」
教室は大爆笑だった。
――え?
あの長い英文、エラーメッセージだったの?
渡辺は静かに肩を落とした。
そして、この日を境に、彼のあだ名は「チャッピー」になった。
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