異世界に行きたい③
次に目を開けたときには知らない天井が見えた。
(ここって、もしかして…)
心に嬉しさが込み上げてくる。
(私、成功したんだ…!やっぱり、あの噂は本当なのね)
気づいたら私は嬉しさのあまり泣いてしまっていた。
(こんなに、声をあげて泣いたのは久しぶりだ。どうしてだろう、ちょっと感情の制御ができないや。きっと、嬉しすぎるからよね)
少し心に引っかかったが、転移に成功したことへの喜びの方が強く、すぐにその違和感は忘れてしまっていた。
成功したならば、早くレオナルド様に会いに行かなければならない。それにはまず、どうにかして学園に入学しないと、というか、今年は何年だろう。もう、ストーリーが進んでいて、ヒロインと恋に落ちてしまってると非常にまずい。この世界でチートを持っているのはヒロインであって、転移者の私にチート能力なんて、あるわけがないのだ。
(なんとしてでも、ヒロインと会うまでに、私と恋に落ちてもらわないと!)
時は金なりという言葉があるように、もう多くの時間は残ってはいないかもしれないから、急がないといけない。そう思いながら体を起こそうとした。
(あれ、動かない…?)
どんなにお腹に力を込めて起きあがろうとしてみても、起き上がることは叶わなかった。
もがいているうちにふと、自分の手が目に入った。そこにあったのは紅葉の葉っぱよりも小さい幼児の手だった。
(え、なんで、手が小さいの)
よく、考えたら、先ほどから声も出ない。声を出そうとすると、「ふぇ」と言うくらいが限界なことに気づいた。
なんで、と困惑していると、先ほどの泣き声で慌ててやってきたのだろう、メイドさんみたいな服を着た女性がもたつきながら部屋に入ってきた。
「お嬢様。起きなさったのですね。あぁ、よかった。このまま目を覚まされなかったらどうしようかと思いましたよ」
そういって、私を抱き上げた。
(お嬢様?私が?というか、このメイドさんは誰、何がどうなってるの。私は転移したはずなんじゃ)
そう考えていると、続けて、体の大きな男の人が入ってきた。
すると、メイドさんはその人に私を手渡した。
「セルシア、よかった。本当によかった」
そう言いながら男の人は目を潤ませていた。
(セルシア?私はセルシアっていうの?あなたは私にとって何なの?)
そう聞きたいのに声が出せない。こんなにコミュニケーションが取れないことに不便を感じたのは初めてだった。




