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セナは姿見の前で自分の姿を確認している。髪は金髪に染め、サングラスをして紫色の瞳を隠す。白いへそ出しTシャツにデニムのショートパンツ、腕や耳にはシルバーのアクセサリーをつけている。
(違和感はない…それもそうね。この容姿なら何でも合うか。)
セナは自分の容姿を客観的に見ている。かなり目立つ容姿だと理解している。だから使う。セナは使えるモノは何でも使う。それは道具でも人でも関係ない。使えるならば躊躇なく自分自身も道具にする。そういう生き方しか彼女は知らない。それしか選べなかったから。それ以外の生き方を知らないから。
(準備完了っと…じゃ、始めるとしますか。)
セナは自分の格好の確認を終えると地上に出た。
港の周辺を歩き始めて三十分程すると、セナに二人の男が近づいてきた。
「ねぇねぇ、君、何してるの?てか一人?」
男の一人が馴れ馴れしくセナに話しかけてきた。男からは漂ってくる甘ったるい匂いが漂っってくる。セナはそれを少し吸い込んだ。そして、口角が上がるのを必死に抑える。
(釣れた…こんなに早く食い付くなんてね。)
今の所はセナの計画通りだ。愉しんでいることが表情に出ないよう気をつけながら、セナは演技を始めた。
「やだな〜。オニーサンはどうせ気づいてるんでしょ?」
「おっ、やっぱ家出?俺らのとこに来る?」
セナは意図的に二人組の男の片方と話す。最初、セナに話しかけてきた方だ。軽そうな女の子を演じる。自分勝手でどうでもいい、くだらない理由で簡単に家を出る少女を演じる。すると、彼はセナの狙い通り、彼女を拠点に連れて行く。
「そういや、君の名前は?」
「あたしはサキ。オニーサンは?高校生くらいに見えるケド。」
セナはどうでもいい話をしながら話していない方の男を観察する。見た目は普通だ。どこにでもいる男だ。
「俺はサトル。んで、こっちはケン。それと、俺等は高校卒業してるぜ。サキちゃんは何歳なの?」
「あたし?あたしは十四歳でー親が煩いから放って出できたの!」
サキは目をキラキラと輝かせる。セナは知っている。衣食住が保障されている生活が当たり前ではないことを。だからとても自然に演技ができる。何度も何度も繰り返し幸せな世界を想像してきた。セナは幸せが分からない。知らない。だからどういうモノかを想像した。そして、結論を出した。
(私は自由に楽しく最期まで生きられたら――)
「それでね――」
セナは相手の油断を誘うためにバカな少女を演じる。そして、確信する。黒幕はかなり面倒な奴らだと。大きな力を持った勢力だと。サトルはバカだ。バカが警察に見つからずに麻薬の販売なんて無理だ。こんなバカを上手く手駒として利用できているのだ。相当頭が回って権力がある程度ないと不可能だ。
セナは彼女にとってはどうでもいい、話の薄い会話をしながらサトルに着いていった。ケンはいつの間にかいなくなっていた。そのことにサトルは全く気づかない。そして、セナはケンの正体を悟った。自分の推測が当たっていると。




