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何でも屋の誓約  作者: 紫月 凛
一章〜何でも屋と元若頭様の世話係〜
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8

 セナは姿見の前で自分の姿を確認している。髪は金髪に染め、サングラスをして紫色の瞳(異能者の証)を隠す。白いへそ出しTシャツにデニムのショートパンツ、腕や耳にはシルバーのアクセサリーをつけている。


(違和感はない…それもそうね。この容姿なら何でも合うか。)


 セナは自分の容姿を客観的に見ている。かなり目立つ容姿だと理解している。だから使う。セナは使えるモノは何でも使う。それは道具でも人でも関係ない。使えるならば躊躇なく自分自身も道具にする。()()()()()()()しか彼女は知らない。それしか()()()()()()から。それ以外の生き方(選択肢)を知らないから。


(準備完了っと…じゃ、始めるとしますか。)


 セナは自分の格好の確認を終えると地上に出た。


 港の周辺を歩き始めて三十分程すると、セナに二人の男が近づいてきた。


「ねぇねぇ、君、何してるの?てか一人?」


 男の一人が馴れ馴れしくセナに話しかけてきた。男からは漂ってくる()()()()()匂いが漂っってくる。セナはそれを少し吸い込んだ。そして、口角が上がるのを必死に抑える。


(釣れた…こんなに早く食い付くなんてね。)


 今の所はセナの計画通りだ。愉しんでいることが表情に出ないよう気をつけながら、セナは演技を始めた。


「やだな〜。()()()()()はどうせ気づいてるんでしょ?」


「おっ、やっぱ家出?俺らのとこに来る?」


 セナは意図的に二人組の男の()()と話す。最初、セナに話しかけてきた方だ。軽そうな女の子を演じる。自分勝手でどうでもいい、くだらない理由で簡単に家を出る(幸せを捨てる)少女を演じる。すると、()はセナの狙い通り、彼女を拠点に連れて行く。


「そういや、君の名前は?」


「あたしはサキ。オニーサンは?高校生くらいに見えるケド。」


 セナはどうでもいい話をしながら話していない方の男を観察する。見た目は普通だ。どこにでもいる男だ。


「俺はサトル。んで、こっちはケン。それと、俺等は高校卒業してるぜ。サキちゃんは何歳なの?」


「あたし?あたしは十四歳でー親が煩いから放って出できたの!」


 サキは目をキラキラと輝かせる。セナは知っている。衣食住が保障されている生活が当たり前ではないことを。だからとても自然に演技ができる。何度も何度も繰り返し幸せな世界を想像してきた。セナは幸せが分からない。知らない。だから()()()()()()かを想像した。そして、結論を出した。


(私は自由に楽しく最期まで生きられたら――)


「それでね――」


 セナは相手の油断を誘うためにバカな少女を演じる。そして、確信する。黒幕はかなり面倒な()()だと。大きな力を持った勢力だと。サトルはバカだ。バカ(サトル)が警察に見つからずに麻薬の販売なんて無理だ。こんなバカを上手く手駒として利用()()()()()のだ。相当頭が回って()()がある程度ないと不可能だ。

 セナは彼女にとってはどうでもいい、話の薄い会話をしながらサトルに着いていった。ケンはいつの間にか()()()()()()いた。そのことにサトルは全く気づかない。そして、セナはケンの正体を悟った。自分の推測が当たっていると。

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