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「ロライは最近できた集団で、主に麻薬の取引をしている。実態はただの寄せ集めの集団に過ぎない。だが、短期間で規模が大きくなりすぎている。背後に何か巨大な勢力がついていないとあり得ない成長速度だ。」
(ふ〜ん…気づいてたのね。なら、これは受けるか。)
セナは凪が盤面を読める人間であると判断し、依頼を受けることにした。裏では些細な判断ミスで命を落とす。そのため、無能との取引など死を招くだけの行為だ。
「だから貴方は私に依頼したいのね。もし、大きな力を持つ勢力がロライのバックについていた場合、月守組が直接動くと角が立つ…。けれど、私に依頼をしてしまえば色々な意味で安全だものね。」
「あぁ。受けるのか?」
「ええ。」
セナは依頼が成立するとすぐに立ち上がる。この場にこれ以上の用はない。
(面白くなりそうだしね。…それと、自衛のためにもこの件に関する情報は集めようとしていたから丁度いいわ。)
セナは部屋を出る時、凪に向かって一枚の黒いカードを放った。そこには地図と住所が印刷されている。
「三日後、そこの住所の建物に来て。前金もその時に貰うわ。」
一方的そう告げると、セナは迷うことなく部屋を後にした。
「了解した。」
「気ぃつけて帰ってな。」
凪と夏弦の言葉は聞こえていなかったのか、無視したのか、セナは振り返ることなく屋敷を出た。
月守組の屋敷を出て、セナたち三人が向かったのは、海外との貿易も盛んな都内湾岸エリアにある拠点だ。入り口は古びた廃ビルに偽装されており、拠点は地下にある。入り方はセナ達だけが知っている。
「ロライと取引をしている子供達が使っている倉庫に向かわれるんですよね?明日の学校はお休みということでよろしいでしょうか?」
「ええ。光明学園は出席日数が一桁でも実技、筆記の試験結果がよくて、生活態度に問題がなければ留年しないもの。この条件なら授業を受けなくても余裕で進級できるわ。」
セナ達が通っている光明学園は小中高一貫の超名門私立だ。
特筆すべきは学園の徹底した実力主義による「出席停止免除」の規定だ。
このメリットを享受するために毎年、全国各地の訳ありの天才達が小中高それぞれの門を叩いている。
結果として、学園で成績トップ十に君臨する者たちは、試験当日以外は校舎に姿を現さないのが暗黙の常識となっていた。
「セナ様、着替えの準備は整っております。」
「ありがとう。じゃ、二人は麻薬の出所を洗っておいて。学校は好きにしなさい。」
ルランはセナが変装に使う道具の準備をしていた。セナは普段、髪色も瞳の色も隠している。彼女が銀髪に紫色の瞳を晒したまま活動するのは血と硝煙が漂う裏社会だけなのだ。
「ユウリ、ルラン、貴方達はこれでいいのね?これ以上関わったらもう、戻れないわよ。」
セナはいつもの飄々とした仮面を剥ぎ取り、真剣な眼差しを二人に向けた。ユウリとルランは即座にセナの意図を察し、自分達よりも少し背の高いセナを真っ直ぐに見上げる。
「はい。僕の命はセナ様に救っていただいたものですので。セナ様が僕を不要と判断するその時までお傍にいさせてください。」
セナの問いにまずはユウリが淀みなく答えた。
「私もです。この命はセナ様に救っていただいたものです。その恩に報いるためにも貴方様のお傍にいさせてください。」
ルランもユウリと同じようにハッキリと答えた。二人の琥珀色の瞳には揺るぎない信念が宿っている。命が尽きるまで、命が尽きようとセナの傍に居続ける、という信念が。裏で一生を過ごす、という覚悟はセナに拾われたあの日、とうに決めていたのだ。
(ユウリとルランは私が気まぐれに拾った…だから、最期まで責任を持つ義務が私にはある。)
裏で死ぬ覚悟はあるか、という問いにユウリとルランは迷いなく答えた。セナの傍に居続けることを選んだ。セナにはそれを断る権利も止める権利もなかった。
(大丈夫、私は貴方達を拾ったことに責任を持つから。)
「そう。なら、好きにして。」
セナはいつの間にか真剣な雰囲気を消し、いつもの飄々とした雰囲気に戻っていた。顔には人間が警戒できない微笑みを貼り付けている。
「「はい!」」
ユウリとルランはセナの言葉に嬉しそうに返事をした。そして、セナから頼まれた仕事を遂行するために足早に拠点を出ていった。
麻薬に手を出すのは絶対にやめてください。
今後の人生をそれで楽しめるのならまぁ…うん。
(絶対にやめろよ!シャレになんねぇからな!)




