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酔狂〜紫硝の怪物達〜  作者: 紫月 凛
一章〜何でも屋と元若頭様の世話係〜
6/56

5

 セナは()()()()玄関の隅に声を掛ける。


「なんで貴方は()()()()()の?」


 セナの言葉を聞いたユウリとルランは彼女が声を掛けた玄関の隅に警戒するような眼差しを向ける。翔琉は楽しそうに笑みを深めるが、凪は無表情のままだ。


(どうやったら翔琉さんと青羅さんの間にこんな無表情男が生まれるのかしら?莉葵さんは二人に似ていつもニコニコしてるし…やっぱり異能が()()()()()()()()ことと関係あるのかしら?)


 青羅とは翔琉の妻だ。

 翔琉の妻で、月守組の姐さんである青羅はセナのことを大層気に入っている。莉葵は凪の一つ上の姉で、一年程前に凪と同じようにセナに奇襲を仕掛けてきた。姉は両親譲りの性格で、セナに奇襲をしたことを全く、少しも、欠片も悪いとは思っていない。


「なぁ、なんで俺がここにおるってわかったん?」


 セナが声を掛けた玄関の隅から栗色の髪に焦げ茶のたれた瞳をした甘い顔立ちの男が出てきた。

 何もなかった空間から男が出てきたことにユウリとルランは驚愕に目を見開く。


(コイツも学校で見たことあるわね。そして、異能者、と。うわっ、異能者が()()も揃うってどういう偶然よ?)


 セナは凪に覚えた()()()()を栗色の髪の男には微塵も覚えなかった。


「気配に敏感なだけよ。そんなことより、翔琉さん、莉葵さんを私に紹介した時もこんなことをしましたよね?青羅さんも今回は共犯ですか?」


 セナは栗色の髪の男からの質問をさらりと流し、翔琉に今回の奇襲は翔琉一人で計画したのか、それとも青羅達も関わっているのかを問うた。


「よく分かったね。今日は青羅と莉葵は()()で出かけてるんだ。」


 翔琉は自分の妻と娘が計画に関わったことをアッサリと肯定した。前回、莉葵の紹介の時の奇襲は翔琉と莉葵で計画した。しかし、それを後で知った青羅が次は自分もやると翔琉に文句と共に宣言したらしい。仲間外れにされたような気がして悔しかったのだろう。


(莉葵さんの奇襲から三日ぐらい青羅さんに構われ続けたのよね…今回は青羅さんが私の拠点に乗り込んでくるなんてこと、起こらないわね。きっと…多分…)


 セナは青羅が拗ねて自分にずっと構い続ける、というとんでもなく面倒な事件が起こらないことに安堵した。


「まぁ、まずは上がってよ。君に依頼があるんだ。」


 翔琉の言葉でその場にいる面々は屋敷に上がった。月守組組長自らセナ達を部屋に案内し、茶を淹れる。この事態にセナの顔を知らない者達も彼女が只者ではないと察したようだ。廊下ですれ違ったり、彼女がいる部屋の前を通ったりする際は必ず一礼するなどしっかりと()()されたとわかる動きを見せていた。


「で、今回の依頼は凪からですよね?翔琉さんはその顔繋ぎ役ってとこでしょう。」


「うん。正解だよ。そこまでセナちゃんが分かってるなら僕はもうお役御免かな。じゃ、あとは若い人同士でごゆっくり〜!」


 翔琉は自分の分のお茶を飲み干すと部屋を出ていった。お茶菓子もしっかりと食べていく所など、抜け目がない。

 翔琉が出ていくとその場を沈黙が支配した。セナは気まずい空気などどこ吹く風でお茶を飲み、用意された茶菓子を食べる。セナが甘いものはあまり好きではないことを知るユウリとルランが事前に手を回していたのか、甘さがとても控えめなものだった。その二人はセナの隣にそれぞれ正座で気配を薄くして静かに正座している。


「なぁ、自己紹介せぇへん?」


 沈黙に耐えかねたのか、栗色の髪の男が対面に座るセナ達に自己紹介を提案した。


「俺は月海(つきうみ)夏弦(かいと)っちゅうねん。ほら、凪も自己紹介しいや。」


 セナが気にせずお茶を飲んでいると夏弦が自己紹介を始めた。促された凪も対面に座るセナ達に視線を向ける。


「……月守凪だ。」


 それはセナが零華として学校で行った自己紹介以上に短いものだった。

 セナはお茶を飲み終え、最後の一口を飲み込んでからやっと対面の凪と夏弦に視線を合わせた。


「私はセナ。貴方達は知っているでしょうけど、裏の何でも屋よ。」


「僕はセナ様の助手兼弟子のユウリと申します。」


「私も同じく、ルランと申します。」


 セナの自己紹介にユウリとルランの二人も続く。そして、二人は再び気配を薄くした。一応、今は月守組の組長(トップ)に正式に招待された身だ。それに何より、ユウリとルランの二人がセナ()の静観しろ、という命令を無視できるわけがないのだ。

 三人が自己紹介をした所でやっと、本題(依頼)について話す準備が終わった。

なげぇ…改めて読んでみても本題に入るまでがなげぇ…

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