竹馬の友こそ信ずるなかれ
投稿が遅れてしまい、大変申し訳ございません。
「二人とも随分と仲良くなったみたいね?」
セイはその言葉を聞くと、ニヤリと笑い、凪の肩に腕を回す。
「俺らは収容所にいたころからの大親友だからなぁ。」
凪はバシッと肩に置かれたセイの手を払い落とした。
(うわっ、痛そうね。)
実際、普通の人間であれば暫くその手は使い物にならなくなっていただろう。
「いってぇなぁ。凪ちゃーん、それはないだろぉ?」
「異能者がこんなことで怪我をするわけないだろ。」
セイは不貞腐れた子供のような顔でソファに沈み込んだ。襟足の髪を弄りながらそっぽを向く。
「あの頃の優しい凪ちゃんはどこ行っちまったんだよぉ?」
「貴方ねぇ……」
(凪を仏頂面男にした元凶が何を言ってるんだか。)
そう思いながらも、セナはセイではなく、凪を観察していた。
(凪は私の過去を勘づき始めている……セイと組まれたら面倒ね。)
「黙れ。時間がないんだろう? さっさと情報の共有を始めるぞ。」
「それもそうね。」
部屋の隅にあるインスタントコーヒーを淹れてからソファに腰かける。
「そういえば夏弦はどこ? 何かヘマでもやらかしたの?」
「あ? 教えてやろう。夏弦はなぁ、気になる相手を口説きに行ったぜぇ。多分な。」
「そう。お相手は裏の人間なの?」
セナはセイの返答を冗談だと察してはいる。だが、その冗談に乗ることにしたらしく、コップを傾けながら続きを促す。
「そうだ。お前がよぉく知ってる奴らだぜぇ。」
(あぁ、そういうことね。)
コトリ、とテーブルにコップを置いてからセナは本題に入った。
「私が籠絡する予定だった男は特に真新しい情報は持ってなかったわ。だから白愛さんに預けて戻ってきたの。」
「あー、やっぱそうだったか。」
「知っていたのか?」
凪の冷たい指摘は的を射ていた。
「少し前に心を読んだんだよ。異能者じゃなかった分、抵抗されなくて楽だったな。お前らも見習えよぉ?」
セイの異能、読心は普通の人間相手であれば深層心理も比較的簡単に読み取れる。一切読まれずに抵抗する術を持つのは異能者だけである。
(少し前、か。天竺桂財閥のご令嬢は随分と大切にされているのね。)
「それなら早く言え。セナの外出が完全に無駄足になったんだぞ。」
「万が一もあるからなぁ。俺の異能をもってしても読めない人間もいるんだよ。ま、あの男は物理的に骨抜きにされちまったみたいだがな。」
そう、本来セナが籠絡する予定だった男は白愛によって拷問をされた。
現在も続いているはずのそれは絶対に死ねないように調整されたものである。肉を潰されようが、骨を砕かれようが、男は自らその責め苦を終わらせることはできない。
(あの男は異能を覚醒できるほど精神が強くないものね。持って二日といったとこかしら?)
「白愛さんの拷問は収容所よりは優しいがよぉ、普通は耐えらんねぇからなぁ。どんな風に骨抜きにされたのかねぇ。」
セイの話が一段落する直前、セナは彼に目配せをした。セイは了承とでも言うように肩をすくめた。
「いつまで無駄話をする気だ?」
「な・ぎ・ちゃ・ん、俺に目を合わせろ。」
凪は本能的に危険を察知し、顔をそらそうとしたが、それよりも早く動きを読んでいたセイが顎をつかんだ。
「よし。ほら、さっさとしろ。」
セナの方に振り向いたセイの瞳は古代紫色だ。
対する凪は空色の瞳のまま動かない。
すかさず、セナの瞳が妖しく光る。
「凪、管理番号S-17に関する記憶に蓋をしなさい。」
「容赦ないねぇ。」
セイの冷やかしを無視し、異能の制御に全神経を向ける。制御を少しでも誤れば、凪だけではなく、セナ自身も魂にダメージを受けるからだ。
「貴方の記憶も書き換えてあげましょうか?」
「今の状態でできんなら好きにしていいぜぇ?」
小馬鹿にするようなその言葉は、セイが俯いているせいでくぐもって聞こえた。
セナは霊鬼を使ったことにより、消耗している。セイの記憶を書き換えるだけの気力は残っていない。
「記憶に干渉する異能について教えてくれる気はねぇんだよなぁ?」
(正確には、霊鬼で干渉するのは魂だけれど……勘違いしてくれているなら好都合ね。)
「で、貴方達は尻尾を掴めたの?」
セナが違う話題を振った。これ以上、詮索する気はなかったのか、セイもその話題に乗っかった。
「結果から言うとなぁ、バッチシ掴めたぜぇ。尻尾の付け根をなぁ。」
そこまで言ってから、セイは顔を上げた。その瞳は鶸茶色ではなく、古代紫色に輝いていた。
セナが急いで瞳を光らせたが、手遅れだ。
(ちっ……やられた!)




