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酔狂〜紫硝の怪物達〜  作者: 紫月 凛
一章〜何でも屋と元若頭様の世話係〜
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セナ視点に戻ってます。

「凪のことが嫌いなら大丈夫だと思うけれど、一応言っておくわね。凪の表の顔は私の同級生、月浦(つきうら)静空(しずく)よ。」


「「は?」」


「彼の姉である月守(つきもり)莉葵(りつき)も三年生の月浦(つきうら)楓佳(ふうか)として光明学園高等部に通ってるわ。勿論、夏弦(かいと)も同級生として通ってるから。」


 セナは二人にとっての爆弾を投下した。二人はポカンと口を空けて固まる。セナはそれを非常に楽しそうにクスクスと笑って、ソファに頬杖をついて見ている。


「どういうことですか?!詳しく説明してください!」


「最近、こういうことがないので油断していました。大事なことはもっと早く伝えてください、といつも申し上げてますよね?」


 ほぼ同時に復活した二人はセナに苦言を呈する。

 セナは面白がってワザと軽く、優しくボールを投げるように伝えることがある。その度にユウリとルランは「もっと早くお伝えください」と言っているが、セナがそれで大人しく伝えるはずがない。

 そのため、投手(セナ)投げた(伝えた)ボール(情報)捕手(ユウリとルラン)がキャッチしようとしたら予想以上の豪速球(重大な情報)だった、という現象が普通に起きる。しかも、セナはユウリとルランの新鮮なリアクションを見るために期間をランダムに空けて行っている。そのため、二人はいつもセナに振り回され、彼女の手のひらの上で転がされているのだ。


「じゃ、私は少し出掛けるから。明後日の集合、遅刻しないようにね。」


 セナは自分に猛抗議するユウリとルランを見てひとしきり楽しんでから、拠点をあとにした。


「セナ様?!もう少し説明を…」


「ユウリ、今回も諦めましょう。セナ様は楽しんでるだけだから…」


 拠点の中にはセナに振り回される助手達の声が響いていたが、拠点の外のセナの耳には届かなかった。拠点は完全防音だ。いくらセナ(化物)でもきこえない。懸命な助手二人はすぐに今回の抗議を諦めた。


(あれくらい曖昧に情報を伝えれば二人は必ず月守組のことを徹底的に調べるでしょうね。そのために、今日を含めた三日のうち、一度は学校に行くはず。)


 セナは何も、ただ楽しむためだけに先ほどのタイミングで凪達に関する情報を伝えたわけではない。勿論、九割以上はそれが目的だが、残りの約一割は二人を学校に行かせるためだ。ユウリとルランには普通の高校生活を楽しんでほしいと願っている。ただ純粋に、自分の大切な助手であり、弟子であるユウリとルランには主として、師匠として、汚れた世界をこれ以上見せたくない、という気持ちもあるのだ。しかし、普通の子供として幸せになってほしい、という願いとは裏腹にセナは裏の仕事を二人に手伝わせている。


(あーあ…情が移ってしまったのかしら?ダメなのに。これじゃあ、()()()()()ことができなくなってしまうわ…)


「ふふっ、二人は明後日、私にどんな情報を教えてくれるのかしら?」


 セナはユウリとルランに対して何処か矛盾した気持ちを抱えながらある男の元へ向かう。海からは朝日がセナを照らしていた。セナはそれから逃げるように近くの路地裏に入った。


(あの二人はまだ大丈夫。施設の子達(私達)みたく壊れてないから。)


その姿は一見すると誰よりも自由を謳歌している少女に見えた。

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