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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-799 オリーさんの部屋を使わせて貰おう


 ドーバーへホンダジェットで3時間程の旅をする。

 全く良い小型機を作ったものだと感心してしまう。乗り心地は最高だからね。部隊の移動ともなると輸送機だけど、数人の移動なら小型のビジネス機が使われている。

 移動はサンディー達も一緒だった。両親はドーバー市に住んでいるとのことだから、しばらくは両親とともに過ごすのだろう。でも年頃だからねぇ。ボーイフレンドがずっと帰りを待っているのかもしれないな。

 とはいえ男性が俺とリッツさんだけなんだよなぁ。しばらくは禁煙という事になってしまう。


「何かあればシグに連絡するわね。とはいえ明日の夜までは連絡はしないつもりよ」


「次の作戦を本部長に説明するだけですよね? 俺の出番はあまりなさそうに思えるんですが」


「そうは言っても、ニューヨークがあるでしょう? 本部長は南よりもすぐ隣の方が気になると思うわよ」


 作戦実行を早めようなんて考えていないだろうな。

 俺達が長期休暇だと知ったなら、すぐに手伝えなんて言われそうだ。


「そう心配しないでも良いわよ。明日は統合作戦本部に顔を出そうなんて考えていないから。先ずは海軍内でフリーダム作戦の状況を確認するつもり。フロリダの方に艦船を派遣して貰いたいのよね」


 作戦開始時にはセントローレンス川と大西洋に艦隊を停泊させて、半島の北と南から援護していたからなぁ。戦線がニューヨークに近付いたからにはセントローレンス川に停泊していた艦船からの援護はあまり必要なくなっているに違いない。余剰艦船をフロリダに向ければ大西洋岸から航空支援それに艦砲射撃が出来るという事だろう。クロードさんの艦隊が2倍近くになるなら陸戦部隊もさぞかし心強いだろう。


「海軍内で調整したうえで本部長と談判という事ですか。ちょっと本部長が気の毒に思えますが、本部長としてもアッパー湾内に空母を欲しがると思いますよ」


「そっちは揚陸艦で十分だと思うんだけど? 戦闘機やコイン機ならドーバー空港が使えるでしょう。湾内に置くならヘリ空母で十分だわ」


 海兵隊の強襲揚陸艦なら1度に数機のヘリを離発着出来るだろうからなぁ。言われてみれば確かにその通りではあるんだけど……。


「ヨーロッパでの資材調達を図るには強襲揚陸艦が最適だと思います。余剰の強襲揚陸艦があるなら、そちらに派遣する方が継戦能力を向上することになるのでは?」


「その時にはリバティ島を使えと言うわ。直ぐ近くにあるし、駐屯している砲兵部隊の邪魔になることもないでしょう」


 自由の女神をバックにヘリ部隊が飛び立つのか……。良い写真が撮れそうだな。

 砲兵部隊が使用を拒否したなら、南のスタテン島を提案するに違いない。少なくとも1隻は強襲揚陸艦を手に入れるだろうな。


「サミー君は、ニューヨークへの攻撃をあまり賛成していないと聞いたけど?」


「アメリカ最大の都市ですからね。摩天楼が乱立していますし、地下空間は地下鉄以外にも多くあるはずです。さらには第二次世界大戦時代の遺物まであるようですから、今までの都市攻撃と同じように作戦を進めるのはかなり危険ですよ。戦略核を数発落として更地にしたとしても地下に潜むゾンビは数十万体はいるでしょう。都市全体を高い塀で囲み、兵に近付くゾンビを倒すことで兵から外に出ることが無いようにしたいと今でも思っています」


「なるほどねぇ……。ゾンビの総数が多いほど進化の速度が早まるという事ね。どんなゾンビがどこに潜んでいるかも分からない。単純な爆撃を繰り返すだけでは進化を加速させかねないという事かしら。とは言っても高い塀を作るのは難しそうね。ニューヨークはいくつかの島の集合体でもあるの。今のところゾンビは水を嫌っているけど、将来的にはどんな姿になるか想像も出来ない。私個人としては早めに駆逐したいところなんだけど……」


 早めの駆逐は誰もが望むところだろう。だが焦りは禁物だ。下手に取りこぼしを作ろうものなら、再びアメリカがゾンビで溢れかねないからなぁ。


「ヒューストンをクロードさん達が1年近く砲撃していましたけど、結果はあの通りです。数が減ったことは間違いありませんが、半減させるのは難しかったという事でしょう」


「同じことがニューヨークにも言えるという事ね。ニューヨークはヒューストンよりも地下が発達しているでしょうから、なおさらという事かしら。となると効果的な事前攻撃手段についても考える必要がありそうね」


 地下を含めて一気にゾンビを倒すなら戦略核という事になるんだけどなぁ……。大統領も使うのを躊躇っているから、それ以外の方法を考えないといけない。


「そういえば、アメリカはバンカーバスターをどれほど持っているんでしょうか? まだたくさん残っているなら躊躇わずに使うべきだと思うんですけど」


 俺の言葉に、マリアンさんがリッツさんに顔を向ける。

 リッツさんの即答は「分からない」というものだった。あれの管轄は空軍とのことだから問い合わせて確認するしかないようだ。


「バンカーバスターの大量使用ですか……。ニューヨークの再建は不可能になりかねませんよ」


「立派な記念碑を建てれば十分に思えるわ。数と性能を向こうに着いたら調べてくれないかしら」


 どうやらバンカーバスターという言葉が先行して、軍内部でもその性能が明確ではないらしい。俺としては地下20mほどまで貫通して炸裂し、シャワー直径50mほどのクレーターが出来れば十分に思えるんだけどなぁ。

                 ・

                 ・

                 ・

 ドーバー空港に到着すると、サンディー達と伴に生物学研究所へと向かう。

 戦闘服にマーリンを担いだ姿で研究所に入ると、皆が一斉に俺を見るんだよなぁ。

 あまり軍人は出入りしないだろうし、ましてや今にもゾンビとの戦闘を始めるような姿の兵士を見る機会など無いだろうからね。

 サンディー達は俺がエントランス前に下りたところで、そのまま走り去った。両親の待つ自宅に戻るのかな? まだまだ甘えたい年頃なのかもしれない。

 カウンターのお姉さんに名前を告げて客室が開いているかを訊ねると、オリーさんの部屋は俺の部屋でもあるらしい。カギを受け取ったけど、あまり部屋を散らかさないようにしよう。だけどあの部屋なら俺の私服もいくつかあるからね。いつまでも戦闘服のままでいるとここでは浮いてしまうからなぁ。

 夕食の予約をしたところで部屋に向かう。

 かつて知ったる部屋だから迷うこともない。リビングに入ったところで直ぐに私服に着替える。戦闘服を選択したいところだけど、ここでクリーニングを頼んでも大丈夫かな?

 Tシャツにジーンズ、靴はスニーカーだ。武器を何も持たないと心元ないんだよなぁ。ワルサーを腰の後ろになるようベルトに取り着けて、その上に薄手のパーカーを羽織る。前のジッパーは閉じていないけど、少し丈が長いからホルスターを付けていることが分らないだろう。

 ポケットにタバコとジッポーそれに携帯灰皿を入れれば終了だ。ドレッサーの鑑で、仕上げを確認して小さく頷く。

 時計を見ると、まだ15時にもなっていない。

 さすがにこの部屋でタバコを吸うわけにもいかないから、この部屋に置いてある俺専用のバッグを持ってエントランスに下りることにした。

受付のお姉さんからマグカップを受け取り、窓際のソファーに腰を下ろして最初の1本に火を点ける。


 せっかく来たんだから、所長に会ってみたいな。

 状況の整理は、俺よりも研究所の方が得意だからね。

 タバコをテーブルの灰皿に押し付けて消していると、突然声を掛けられた。


「サミー君じゃないか! しばらくだねぇ。元気そうで何よりだ」


 そう言うと、カウンターに歩いて行ったのはヤンセン博士だった。

 コーヒーカップを受け取り、テーブル越しの席に座ると直ぐに口を開いた。


「デンバーからヒューストンへの道を開いたと聞いたよ。サンディーが毎日報告書を送ってくれるから、私達もサミー君達が苦労していると話していたんだ。それにしても自爆ゾンビとはねぇ……。サミー君のことだ。ある程度は予想していたんじゃないのかい」


「ゾンビが投射武器を持ちましたからね。いずれはもっと大型に、さらには体内でニトロ化反応を起こすようになるとは思っていましたが、それはかなり先になるだろうと考えていました。ある意味予想外ですし、俺達にとっては大きな課題になりそうです」


 体内合成はゾンビの新たな能力になるのだろう。最初は金属イオンを有機隊へ取りこむだけだったが、水素と酸素の単独取り出しを行っていたからなぁ。このまま進化したならニトロ系爆薬を凌ぐ化学合成爆薬を作る可能性もありそうだ。


「とはいえ、あの姿態ですからね。遠距離から大口径のライフルや爆弾で処理しています。どちらかと言えば自爆ゾンビよりステルスゾンビの方が厄介ですね」


「あれか……。ステルスゾンビはタコの擬態に近いそうだ。姿が消えるわけではないんだよね。周囲の色に自分の体表面を細かく合わせることが出来るんだ。だけど考えてみればそれも不思議に思えるね。どうやって背面の色を反対側の体表面に再現できるのか私には理解できないな」

 

 小さな目が沢山あるんだろうか? その色を反対側に再現できるんだからどんな神経組織をしているのか想像も出来ないな。


「それで、サミー君が来所した目的は何だい?」


「特にありません。次の作戦に向けての部隊編成を統合作戦本部に上申するマリアンさんのお供です。でもせっかくドーバーに着ましたから、ここで情報交換をしようかとオリーさんの部屋にしばらく厄介になることにしました」


「ついでなんだろうけど、所長は喜ぶんじゃないかな。私から伝えておくよ。サミー君の仕事に支障が出ないようにするからね」


「よろしくお願いします」とヤンセン博士に頭を下げる。

 これでちょっとした会談が出来そうだな。オットーさんにも会いたいけど、あちこちからいろんな開発を請け負っているらしいから時間が取れるか気になるところだ。

 メールアドレスを知っているから、メールを出して都合を確認しておこう。

 せっかくオートジャイロを手に出来るんだからなぁ。専用の武器があっても良さそうだ。ゾンビへの攻撃手段を持つという事で、偵察任務に就くパイロットの士気が上がるかもしれない。


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