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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-798 長期休暇が少し先になってしまった


 サンドイッチとコーヒーの昼食を頂いた後は、今後の展望について雑談が始まった。

 オペレーション・ノーススターは4つの作戦を統括した名称だし、その統括は統合作戦本部が行っている。初期の作戦以外にも俺達陸上艦隊や騎兵隊が動いているんだが、これらの統括もまた統合作戦本部が行っている。

 

「リッツの作戦骨子がまとまり次第、ドーバーに向かうわ。サミー君達は長期休暇に入れるわよ。ある程度準備が出来た段階で連絡するから、それまではのんびり山小屋で過ごしなさい」


 マリアンさんの言葉に思わず笑みが浮かんでしまったけど、すぐにしぼんでしまった。

 気になることが1つあるんだよね。


「出来ればニューヨーク攻撃について情報を仕入れてきて頂けませんか。ダラスやヒューストンのような大規模都市部に生息するゾンビの進化速度がかなり速いですからね。古い情報でニューヨークに手を出すと面倒なことになることは間違いなさそうです」


「他の作戦区からは、まだ自爆ゾンビの話は聞いて無いわね。画像と一緒に情報を送ったけど、かなり驚いていたみたい。了解と言いたいけど、それなら一緒に行きましょう。ドーバーで私と一緒に行動すると周りの目が煩そうだけど、サミー君は生物学研究所の上級研究員の肩書があるんだから研究所側から統合作戦本部に向けての提言や情報開示を求めることが可能な筈よ」


 なるほど……。肩書を上手く利用すれば良いという事か。ついでに研究所の博士達の意見も聞いておきたいところだし、オットーさんとも会いたいところだ。


「出来れば同行させてください。俺一人……」


「私も一緒だ。さすがに研究所に客人として入ることは出来んだろうから、海兵隊の駐屯地で暮らすことになるだろう。サミーが研究所以外に移動する際は一緒に行動するぞ。レディから絶対に1人で行動させるなと念を押されているからな」


 シグさんの言葉にがっくりと肩を落とした俺を見て,マリアンさんが吹き出しそうな顔をしてるんだよなあ。ハンカチを取り出して口に当てると、下を向いてしまった。肩がピクピク動いているから全体に笑いを押し殺そうとしているに違いない。


「まぁ、レディのいう通りかもしれん。シグを隣に置いておけば厄介毎に巻き込まれることもないだろう。しっかりと情報を仕入れて山小屋に戻れば良いさ」


 レーヴァさんは他人事だな。だけどレーヴァさんは大尉で終わる人材ではないと思うんだよねぇ。一緒に行って上級士官達に顔を売ろうなんて考えないのかな?


「出掛けるのは、リッツが作戦を纏め終えてからだから、5日位は掛かりそうね。明日には陸上艦隊の半数に長期休暇を出すわ。少なくとも2か月を超える休暇になるでしょうね。家族と過ごしたい兵士達の希望は、翌日に纏めて申請して頂戴」


 そうなると俺の山小屋行きは、エディ達より10日以上遅れそうだな。

 まぁ、大尉という肩書がある以上仕方のない事かもしれない。それに本来であれば俺の権限を遥かに越える事案にも思えるんだよなぁ。だけど大きな失敗でも起きようものなら全体への影響が計り知れない。

 ここは自分で納得できるかどうかを確認するスタンスで、ドーバーへと向かえば良いだろう。疑念があれば口頭で伝えるのではなく、本部長本人にメールを送れば十分に思える。


 宿舎に戻ると、オルバンさんを呼んで貰い会議の概要を伝える。

 長期休暇が始まると知って、周りを囲んでいたエディやジュリーさんの顔に笑みが浮んでいる。


「そうですか。でもサミー大尉の方はご苦労様としか言えませんね。それと我等の乗るフクスは改造の対象外ということになります」


「威力偵察が本来の任務だ。ドローンを使って遠距離精密攻撃が可能なのだから、それで十分に思える。とはいえ、次の作戦は西に2千kmほど移動することになる。フクスの居住性を考えると、牽引するトレーラーを出来れば大きくしたいところだな」


 シグさんの言葉にオルバンさんが笑みを浮かべる。

 どうやら調達の目途を付けているようだ。今までと同じようなキャンピングトレーラーなんだろうけど、大きければそれだけ居住性が良くなるだろうからね。


「任せておいてください。それと、可能であればもう1式運搬手段を見付けておきます。本隊から離れてジャックを運用する機会も多いでしょう。その輸送車段を持っておかないといけません」


「オルバンさんにお任せします。そうなると、車両の乗員に付いても見直しておいた方が良いかもしれません。ジャックの運搬車両は踏破性の良い車両を選んでくださいね」


 俺の言葉ににんまりした表情でオルバンさんが頷いてくれた。既に当てがあるということなんだろう。ハンヴィー辺りなのかな? 案外ピックアップトラックかもしれないな。


「我等の部隊は全員デンバー行きで良いだろう。車両の整備については出発までにオルバンの方で整備部隊と調整して欲しい。1カ月後にデンバーから状況を確認してくれ」


「了解です。搭載する資材についても要求しておきますが、作戦行動は10日、使用するジャックは10個を要求しておきます。さらに行動日程が延びるような時には、本隊の兵站部隊から調達できるでしょう」


 銃弾についてオルバンさんは何も言っていないけど、少なくとも3会戦分は搭載するに違いない。その上に予備を考えているだろうからね。作戦が始まってもしばらく銃弾に苦労することはないんじゃないかな。


 ダラス行きの輸送機の準備が整う間、せっかくヒューストンに来たのだからとギャル・ベストン島に渡りビーチで羽を伸ばす。

 今回はレーヴァさん達と一緒にクーザ―に乗って曳釣りを楽しむことにしたのだが、俺が釣った獲物は偶々エンジンを止めて竿を下ろした時に掛かった腕程の太さのウツボだけだったんだよなぁ。

 浜で焼けば白身の美味しい魚なんだけど、見た目がねぇ……。


「相変わらずサミーは本命の魚が釣れないんだよなぁ。今回は大物だったぞ。食堂の小母さんが大喜びしていたからね」


 大物だよ言っても、どうにか2mというところなんだよなぁ。オルバンさんが釣り上げたのは2.5mを越えていたぞ。

 焚火を囲んで釣果の自慢話で俺達の夜が更ける。

 汐音さんやオリーさんが一緒ならもっと楽しいに違いない。子供達も俺達の釣果を見たなら父親の偉大さに大喜びしてくれるんじゃないかな。


「やはり農場の傍に釣り場が欲しいね。山小屋でも楽しめるけど、子供達に釣りを教えてあげたいよ」


「そうだね。さすがに狩りはまだまだ早いだろうからなぁ。それに女の子を連れて行くと言ったら皆にお小言を言われかねないからなぁ」


 エディも少しは考えているようだな。あれから全く農場の話は無いんだけど、大統領に言葉は絶対だろうからね。農場になるのか、それとも牧場なのか楽しみに待っていよう。


 エディ達が一足先に休暇に入ったのは、テキサスシティに到着して4日目の事だった。

 俺とシグさんが見送る中、皆が輸送機に乗り込んでいく。

 とりあえず元気だと伝えてくれるとのことだから、10日程遅れる事を許して貰えるだろう。


 飛行場から帰ろうとした俺達の車に、警備兵の乗る車両が近付いて、パッシングを繰り返す。

 何だろうと、とりあえずシグさんが車を止めるとハンヴィーから降りてきた士官がマリアンさんが呼んでいると伝えてくれた。


「何かあったんでしょうか?」


「それなら、トランシーバーで呼び出すだろう。それほどの休養でも無さそうだが、このまま向かってみよう」


 飛行場から桟橋の大きな駐車場まで10kmほどの距離がある。

 10分ほど車を走らせ、マリアンさんのいる陸上艦の指揮所に向った。

 指揮所の扉を開けると、会議テーブルに座ったマリアンさんが書類を眺めながらリッツさんに質問をしている最中だった。

 テーブルに近付いた俺達が揃って敬礼をすると、直ぐに席を立って答礼をしてくれる。


「お仲間達の見送りをしていたんでしょう? どうやらリッツが作戦を纏めてくれたわ。明日の1000時にドーバーに向いましょう。なるべく早く用件を済ませれば、長い休暇に入れるわよ」


 マリアンさんの話を聞いて、リッツさんに「ご苦労様でした」と頭を下げる。

 俺の言葉に笑みを浮かべているんだけど、顔色は良くないんだよね。かなり無理して作り上げたみたいだな。


「リッツの調査で、10機程オートジャイロを見付けたそうよ。ドーバーの空軍基地で整備してから分解して運んでくれることになったわ。小柄なパイロットということで女性パイロットを要求したんだけど、応募者が殺到したみたい。120mm迫撃砲弾程の爆弾を4個搭載できそうね」


 1個の重量が10㎏程度ということかな? それならかなり役立ちそうに思えるんだけどねぇ。


「問題は新たな増員です。やはり本格的な戦闘訓練を行った兵士は他の作戦部署でも欲しがっていますからね。2個中隊の半数が民兵ということになりそうです。しかも増員戦力の半数以上が女性になりそうですから……。頭の痛い話です」


 良いのかなぁ……。マリアンさんとシグさんがリッツさんを睨んでいるんだよね。

 男女平等で戦うのが軍隊なんだから、セクハラ発言としてリッツさんの評価が落ちると思うんだけどなぁ。


「新たな戦力を直ぐに第1戦で使うことが無ければ問題は無いと思いますよ。俺もろくに訓練は受けていませんからね。軍隊生活を続けることで横並びが取れると思います」


「私も、そこまで悲観することは無いと言っているんだけど……。リッツとしては婦女子の前で戦うのが男としての矜持に思えるんでしょうね。ある意味騎士道精神があるということになるんでしょうけど……」


 かなり美化した表現だな。でもリッツさんに見えないように面白そうな表情をしてるんだよなぁ。


「リッツ中佐。私も女性だが、インストラクターを務めていたぞ。そう悲観することもない。兵士は命令通りに動くなら問題はない筈だ」


 シグさんのキツイ言葉に、リッツさんが姿勢を正して「その通り」と呟いている。

 でも、納得までには至っていないようだ。しばらくは後方勤務を言い付けそうだな。


「オートジャイロについてはドーバー空港でデモをしたみたいなの。他の作戦部署も案外使用に踏み切るかもしれないわ」


「私としては、もう少し搭載能力が欲しいところですね。出来ればMk81爆弾を搭載出来ればと考えているのですが」


 125kg爆弾なら、200mm榴弾砲よりも破壊力があるからなぁ。

 だけどそれは精密爆撃が可能なコイン機の役目にも思える。オートジャイロは広域偵察ドローンと俺達が運用しているドローンの中間距離の監視を強化しつつ、ちょっとした攻撃が可能な機体ということで納得しておけば十分だろう。


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