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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-797 オートジャイロが使えるんじゃないか


 リッツさんが越境ゾンビ作戦の概要を話し終えると、指揮所が急に静かになった。

 壁に設けたパネルに組み込まれた電子機器の冷却ファンの音がブーンと小さな音を立てているのが聞こえてくる。

 マリアンさんは相変わらず笑みを浮かべて俺達を見ているという事は、この作戦が気に入らないという事になるのだろ

 やはり陸上艦隊の戦力を全て使うのはねぇ……。貴重な戦力はアメリカ国内で使いたいという事なのかな。

 

「良くできた案に思えますが、オイルストライクの戦力はバミューダ半島からゾンビを駆逐するためにも必要でしょう。陸上艦隊の戦力を半分にすることはさすがに無理でしょうけれど、少なくとも三分の一を半島の西に展開する必要があると考えます」


 レーヴァさんの言葉に、マリアンさんが笑みを深めて頷いた。隣のリッツさんは天を仰いでいるんだよなぁ。

 リッツさんも理解しているという事だろう。だがその方法が思いつかなかったという事かな?

 ここは越境ゾンビ対策の手段をある程度明確にして、それに応じた部隊は何かを考えるべきだろう。それによってあまり出番のない部隊を削減できるに違いない。


「作戦概要は理解しました。東から順に西へと移動しながら越境ゾンビ対策を行うという事ですね。となれば、その手段とそれに必要な戦力をもう少し考えましょう。戦力が多ければそれに越したことはありませんが、東の作戦もありますからね。戦力を集中して短期間で作戦を終了するより、確実な対策を西に伸ばすべきかと思います」


「越境ゾンビだけなら、リッツの作戦で十分だわ。だけどレーヴァのいう通り東にもかなりの戦力を回さないといけないでしょう。それにサミー君のいう通り、2千kmの国境線に取り着くゾンビを倒して行くとなれば、簡単に終わるとも思えないわね。昨夜、統合作戦本部に改めて核の使用を打診してみたんだけど……、『少し待て!』と言われたの」


 地図を眺めながら聞いていたマリアンさんの言葉に含まれた単語を聞いて思わずマリアンさんに顔を向けてしまった。

 士官らしくないという事なのだろう。シグさんが厳しい目で睨んでいるからね。

 本部に確認した結果が、少し待てという事なら……。場合によっては、使える可能性が出てきたという事になる。

 本部長としては賛成だけど、核の使用権限は大統領だからね。本部長の説得次第という事になるのかな? だけど使いたくないと言っていたからなぁ。


「可能性が出てきた……。という事ですか。とはいえ、使えるのはメキシコ以南の土地でしょうね」


「さすがに運河は作れないでしょうけど、監視は容易になるでしょうね。それに使えばそれなりに数は減るわ」


 その結果、どんな進化が起こるか予想できないんだよなぁ。それを考えると核の使用には慎重にならざるを得ないんだが、今まで使った核は全て戦術核だからなぁ。都市丸々破壊できる戦略核なら新たな進化種を作らせずに一気に葬ることが出来そうに思える。


「使う核は限定されたくないですね」

 

 俺の言葉に、マリアンさんがこらえきれずに笑い出した。隣のリッツさんは絶望したような表情で俺を見ているんだよなぁ。


「アハハハ……。そうね。それは曖昧にして欲しいわ。数は気にしないで済みそうね」


「とはいえ、それはあくまで大統領の許可があればこそですし、我々の次の作戦を補完する形での使用になるでしょう。基本は陸上艦隊を国境に沿って進ませることになるはずです」


 リッツさんが会話の方向を修正してくれた。

 そうなんだよなぁ。一言でいえば国境沿いに西に向かったゾンビを狩れば良いことになる。


「申し訳ありません。話を元に戻すと、越境ゾンビ対策としてはいくつかの作戦を並行して進めることになると思います……」


 先ずは偵察だ。2つ目は越境したゾンビの駆逐で、3つ目は越境されないように物理的障壁作り、4つめは国境近くに集まったゾンビの集団の数を減らすことだろう。


「そうね。さらに南の都市爆撃は我々の任務とも言えないわね。偵察はレーヴァ部隊と航空部隊。越境したゾンビを叩く陸戦部隊に自走砲部隊。柵や堀を構築する工兵部隊という事になるわね。ここまではリッツの作戦概要にも沿っているけど、問題はその編成になるという事ね」


 強いて言えば軍属の小母さん達のいる兵站部隊が必要になるんだけど、これは現状の部隊を半減することになるだろう。自衛武器だけでなく、たまにライフルを担いで来て射撃訓練にも参加しているけれど、戦うことにはならないだろうからなぁ。


「先ずは偵察部隊を考えましょう。レーヴァの方から何かあるかしら?」


 偵察部隊はレーヴァさんが指揮しているからね。

 マリアンさんの指名を受けて、副官が差し出したタブレットに目を向ける。現状の部隊編成を見ているのかな?

 小さく副官に頷くとレーヴァさんがマリアンさんに顔を向けた。


「半減しても良さそうです。私の部隊とサミー大尉の部隊で十分かと……。ドローンが使えますからね。とはいえ、広域偵察は無理ですよ」


「広域偵察ドローンは引き続き本部で運用するわ。それ以外には?」


「出来れば低速飛行で広い範囲を偵察出来る機体が欲しいですね。広域偵察ドローンを補完しつつ、ある程度の攻撃が可能な機体が欲しいです。コイン機やブラックホークもありますが燃料食いですからね。頻繁に使えるものではありません」


「人が操縦するドローンみたいな機体という事かしら? そんな機体があるの?」


「オートジャイロが使えそうです。エンジンは小型ですから燃料はあまり使わないと思います。欠点は搭載能力があまり無いという事ですが、2人は乗れるでしょう」


 リッツさんがノートパソコンを使ってオートジャイロを検索しているようだ。直ぐにスクリーンにオートジャイロの映像が映し出された。


「これって、ヘリじゃないの?」


「ヘリではありません。歴史は第二次世界大戦まで遡れますし、その当時でも軍用機として使われていたようです。後部に設けたプロペラの推進力で飛行します。上部に設けたローターは機体の上昇下降に用い、進路の変更は後部にあるラダーを用います……」


「面白そうな機体ね。ヘリに見えるけど……」


「エンジンでローターを回すのではなく、後部のプロペラによる前進力による風圧がローターを回すことで上昇しますから、垂直離着陸は出来兼ねると思います。とはいえコイン機よりもかなり短い滑走距離で十分でしょう。場合によってはコンテナ上部がフラットであるなら、トレーラーがある程度速度を上げることで離陸出来るかもしれません」


「でも小さいから、兵員輸送や攻撃には向いてなさそうね」


「市販されていた機体は最大でも2人までのようですね。最大搭載能力は200㎏程ですから、迫撃砲弾を幾つか吊り下げることは可能でしょう。時速100km以上の速度で2時間以上飛べるなら、偵察には最適でしょうね」


 人間相手の戦争では使えそうもないけど、ゾンビ達の対空能力は殆どないからなぁ。座席の下に5mm程のアルミ板を張れば、低空飛行したとしても危険性はあまりないように思える。


「サミー君の事だから、偵察だけということはなさそうね?」


「群れへの先制攻撃が出来そうです。迫撃砲弾のような爆弾に染料をたっぷりと詰め込んでおけば、ステルスゾンビを見付けるのも容易でしょう」


 俺の言葉に、マリアンさんがにんまりとしている。

 隣のリッツさんは、タブレットの画像に何やら書き込んでいるようだ。

 専用の爆弾を作ろうと考えているのかな? でもその前にオートジャイロを何機か見付けないといけないんだけどね。


「自走砲に付いても少し考えるべきかもしれん。ペンデルトンやテキサスシティの航空戦力も使えるなら、都市への攻撃は任せられると思う。その後に砲撃を行うなら105mm自走砲を2個小隊、155mmを1個小隊で十分に思えるな」


「遠距離攻撃能力が半減するけど?」


「ここに水上機基地を設ければ初期の援護には十分に思える」


 レーヴァさんがスクリーンの地図にレーザ―ポインターの輝点を示したのだが……、その位置はメキシコ領内なんだよなぁ。

 ちょっと目を見開いてレーヴァさんに目を向ける。

 マリアンさんも、笑みを深めてレーヴァさんを見ているんだよなぁ。


「それは事前に統合作戦本部に確認した方が……」


「あら? 別に問題は無いと思うけど。上手い具合に島もあるのよねぇ……。ゾディアックボートを運べば補給も容易になるわ。4機を待機させておけば、確かに援護には最適ね」


「それと、もう1つ。陸戦部隊の車両には全て短距離ロケットランチャーを付けるべきかと。案外役立ちますよ。サミーはラッシュを越える為と考えたようですが、一斉射撃をすれば集団を纏めて倒せます」


「俺からも良いですか? ストライカーに搭載したMk19グレネードランチャーを2丁に増やせませんか? 2丁あればラッシュが生じた際に後退しながら数を減らせると思います」


 俺の提案にリッツさんが少し首を捻っていたけど、直ぐに納得したようだな。小さく頷きながらメモに書き込んでいる。


「使い方次第という事かしら? リッツ、2つの提案を生かせるかしら?」


「それほど大規模な改修とはならんでしょう。Mk19を2つ並べるには,ターレットを新たに設けることになりますから少し時間は掛かると推察します」


 出来るということだな。うんうんとマリアンさんが頷いている。

 

「陸上艦隊と共に行動するヘリは削減しても良いわね。その分オートジャイロの数を増やしましょう。燃料消費が少ないなら、搭載爆弾の数が減ってもあまり問題にはならないわね。先ずは状況を見極め、ゾンビの集団を水上機で叩く、ある程度叩いたところで砲兵に引き継げばいいわ。瓦礫の山を築いたところで、陸戦部隊を投入しましょう……。さて、リッツの方で作戦を修正してくれないかしら? 部隊の戦力は最初から半減させて、必要な戦力を補充兵で補って欲しいわ」


 かなり厳しい部隊編成になりそうだ。相変わらずリッツさんの表情が曇ったままだからね。


「リッツは、越境ゾンビ対応部隊の編成を終えたら、次はフロリダ半島への遊撃部隊の編成をお願いするわね。半島の南からゾンビを駆逐する部隊は統合作戦本部の方で編成をしているわ。リッツの編成する部隊はフロリダから西に移動するゾンビを阻止するとともにフロリダ半島を北進する部隊の掩護が目的になるわよ」


「結構大変そうに思えますね。ゾンビを駆逐するのではなく阻止するという事ですか……。了解しました。補充兵については2つの部隊編成を終えたところでまとめることにします」


「要求する戦力は多くても2個中隊には届かないでしょうね。どこの作戦部隊も戦力を欲しがっているみたい。場合によっては、ある程度訓練がなされた民兵になるかもしれないわ」


 騎兵隊のような部隊ってことかな?

 それでも拠点防衛や拠点周辺の索敵は行って貰えそうだ。案外大砲を撃てるまでに訓練された民兵かもしれないな。


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