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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-796 越境しようと集まっているなら戦略爆撃が一番だろう


 テキサスシティに到着した翌朝。7時丁度に目覚まし時計のベルに起こされた。

 結構大きい音なんだけど、同室の2人は全く動じる様子が無いんだよなぁ。

 改めて8時に設定し直したところで、衣服を整え部屋を出る。

 8時にエディ達が起きなければ、20分もしたらジュリーさんに叩き起こされるに違いない。

 俺達が朝に弱いのは昔からだけど、これだけは軍隊生活をしていても改善しないんだから将来設計にはそれを盛り込んでおく必要があるだろうな。

 案外夜間活動をする家畜を飼育するなら俺達にぴったりに思えるけど、そんな家畜がいるんだろうか? 山小屋に戻ったらライルお爺さんに聞いてみよう。


 書類バッグを担いで食堂に下りると、ガヤガヤとした列に並び朝食を受け取る。空いているテーブルに座って分厚いトーストを食べていると、テーブル越しの席にトレイを置いてシグさんが座った。

 

「集合は0900時だが、マリアン殿は既に腹案を持っているに違いない。どの時点でそれを明らかにするか分らんが、サミーにも腹案はあるのだろう?」


 野菜スープを飲もうとしたスプーンを皿に戻して、シグさんに顔を向ける。

 俺達が向かうのは越境ゾンビ対策だからなぁ。大きな爆弾を昨夜落としているんだけど、それが叶わぬとなれば次の手という事になる。

 その中で一番容易に思えるのは戦略爆撃だ。都市爆撃を繰り返すことでアメリカ国境の柵から南10km程先までを平坦にすれば監視や要撃が容易になるだろう。それによって少ない戦力でゾンビの越境を防止できるに違いない。

 だが、それは受動的ではあるんだよなぁ。出来れば越境する意思を挫くことも必要だろう。あの夏の終わりから既に7年が過ぎている。ゾンビの進化は驚くばかりだ。全てのゾンビに意思があるのか分からないけど、少なくとも統率型や士官型のような種には俺達のように意思を持っている可能性がありそうだ。

 それならば、ゾンビの拠点となるような都市への爆撃を継続すればゾンビ達も北上を諦め、南下する可能性がありそうに思える。


「核を使わずにですか? ……となると、アメリカの武器生産能力が大きな課題になりそうです」


「考えることは戦略爆撃か……。長らく使ってはいないがB-52を十数機かどうさせることは可能だろう。継続爆撃となると1度に数機を飛ばせるだろうな。Mk82爆弾なら1度に45個を落とすことが可能だ。サミーの事だから半数は焼夷弾になるだろう……。なるほどな。確かに問題だ」


 笑みを浮かべて話していたシグさんの口調が急に変化した。

 どうやら理解してくれたようだな。今のアメリカに大量にしかも継続的に爆撃機から落とせる爆弾を製造するだけの能力がない。

 武器製造ラインはアメリカ国内のゾンビを駆逐するためにフル稼働しているだろうからなぁ。そんな製造ラインの一部を転用するとなれば、作戦終了が大きく遅延しかねない。


「かつてのアメリカンの同盟国の基地から資材を調達しているらしいが、その中には使える爆弾もあるだろう。だが、そんな品では継続的な爆撃は出来んだろうな」


 いつの間にか食事を終えたシグさんが、コーヒーを飲みながら深い溜息を吐いた。

 どうにかスープを飲み終えて、俺もコーヒーカップを手にする。良い感じに温くなっているな。


「継続的な爆撃を行うとなれば、現状では威力偵察に近いものになるでしょう。コイン機ではなく搭載能力2tを超える戦闘機を使う事になるでしょうね」


「作戦半径はF16で数百kmと言うところか……。メキシコ領内ともなれば空母が必要だ。カリフォルニア湾に浮かべれば、メキシコ全域を攻撃で消えうるだろう。私としては、その辺りが落としどころになりそうな気がするな。さすがに陸上部隊に越境させることはないだろう」


 現状で可能なのは、そう言う事だろうな。

 だけど、そうなれば貴重な戦力を長期にわたってメキシコ国境に置くことになる。

 どれほどの戦力を必要とするのだろう?

 何か所か大きな砦を作って、その拠点から即応可能な機動部隊を向かわせることになるのだろうか? 


 コーヒーを飲み終えたところで腕時計を見る。

 時刻は8時30分を過ぎている。そろそろあの大きなトレーラーに向かった方が良さそうだ。遅刻するのは問題だけど、早めに出頭するなら怒られることは無いからね。

 桟橋に隣接した大きな駐車場は貨物の一時置き場としても使われていたのだろう。東の一角にたくさんのコンテナが置かれている。

 大きなエンジン音を響かせて俺達の頭上をヘリが飛んで行った。小さなドラム缶を2つ抱えて行ったから、ヒューストンへの攻撃に向かったのだろう。

 コイン機も良いけど、ヘリも良いなぁ。何といっても低速飛行が出来るし、コイン機よりも手作り爆弾を沢山積めるからね。

 やはりメキシコ国境へ向かう時には、ヘリを沢山持たねばなるまい……。


 待てよ……。確かヘリのような機体があったはずだ。

 ヘリより先に作られたけど、何時の間にか表には出なくなっているが、あれは製作も容易だろうしアメリカには愛好者も多くいたかもしれない。

 出頭して時間が合ったら、少し調べてみるか。

 訓練は必要だろうけど、アメリカには自称パイロットが多いからね。デンバーでも模型飛行機を飛ばすなら自分が乗って空を飛ぶなんて皆が言っていたからなぁ。


「どうした? 急に笑みを浮かべて」


「面白い部隊を思い付いたんです。使えそうに思えますけど、少し調査が必要ですね」


「車両にあの短距離ロケットランチャーを搭載してゾンビに向かわせようなんて考えているのであれば、やめておくべきだ。確かに威力はあるが、次の攻撃が出来ぬぞ」


 シグさんに顔を向けて笑みを浮かべる。

 次の一手があれば十分に使えるという事だからね。それはグレネードランチャーで十分に思える。ストライカーにランチャーを2丁搭載出来たらどうだろう?

 射手が音声映像装置付きバイザーを付けるなら、ステルスゾンビを狩ることも出来るし、ラッシュ時の中で脅威の高いゾンビを優先的に狩ることも可能だろう。

 これはリッツさんに確認しても良さそうだな。時間は十分にあるだろうからストライカーの改造位は容易に行えるだろう。


 元は戦車運搬用のトレーラーだけど、さすがにコンテナを横に2つ並べると横にはみ出しているんだよね。だけど牽引力はかなりのものらしく、走行には全く支障が無いらしい。

 コンテナ後部のタラップを上り、扉を開く。

 コンテナの後ろ半分は休憩室等になっている。狭い回廊の突き当りの扉を開けると、大きなテーブルにはマリアンさんとリッツさんが既に座っていた。

 シグさんと並んで敬礼を済ませると、リッツさんが俺達の席を腕を伸ばして教えてくれた。だけどマリアンさんの目の前だとはねぇ……。あまり座りたくない場所だよなぁ。


「早かったわね。となると、レーヴァももうすぐという事かしら。揃ったらコーヒーを出すわね」


いつものように自宅を訪ねてきた近所の若者という感じに思える言葉なんだよなぁ。

 今日は次の作戦に関わる話という事だから、結構面倒な事案が多いと思うんだけど、マリアンさんはいつも通りだ。隣のリッツさんの方が少し疲れて見えてしまう。


「統合作戦本部長が喜んでいたわよ。これで西岸への燃料輸送が出来るでしょうし、太平洋沿岸の同盟国の基地から集めた資材を東に送ることが出来るわ」


「カナダの大陸間横断鉄道の方が輸送量は多いでしょうけど、燃料輸送となるとテキサスシティからの輸送路が要になるでしょう。とはいえ、中型タンカーでの輸送量には適わないんですよねぇ。かつてのアメリカであれば西岸までパイプラインを通すことも出来たでしょうけど……」


「誰もが考えることだけど、それならパナマ運河を使う方が安上がりでしょうね。結局アメリカの計画にはコスト意識が根底に必ずあるという事かもしれないわ」


 やはりパナマ運河の再開を統合作戦本部は計画しているという事になるのだろう。

 それが可能になるのは、何年後になるのだろう。

 少なくとも元のアメリカを取り戻してからになるだろうから、俺の孫の時代になりそうに思えるんだけどなぁ。


 ノックの音に振り返ると、レーヴァさんが副官と共に指揮所に入ってきた。

 席を立って、レーヴァさんと軽く敬礼を交わす。

 全員が席に着いたところで、リッツさんが指揮所の隅に向かって小さく頷く。

 そういえば、皆が揃ったらコーヒーと言ってたな。


 コーヒーカップを乗せたトレイを持って、俺達にカップを配ってくれたのはマリアンさんの従兵をしっかりと務めているナタリーだった。

 いい娘さんになったからね。それにエンリケさんに似ないで奥さん似だから指揮所に出入りする男性兵士にもてるんじゃないかな。案外早くに結婚するかもしれないけど、そうなるとエンリケさんの洗礼を受けることになるんだよなぁ。

 銃の腕は大丈夫なんだろうか? カスリ傷ぐらいなら笑い話に出来そうだけど、万が一にも深手を負わせるようなことになったら冗談では済まないからなぁ。

 

「さて、コーヒーを飲みながらゆっくりと話しましょう。作戦案はリッツが纏めてくれたけど、それを皆に説明する前に越境ゾンビの阻止作戦に関わる課題とその対策について皆の考えを教えてくれないかしら」


 マリアンさんの言葉に、俺達が顔を見合わせる。

 作戦案に関わる課題の抽出と考えていたんだけど、マリアンさん達が考えた作戦以外の作戦案を俺達から聞きたいという事なのかな?

 

「それなら、私から……」


 レーヴァさんが自らの作戦概要を語り始めた。

 道路を封鎖する放置車両を片付けながら、考えていたという事だろう。

 兵士が用意してくれたスクリーンに投影された地図をレーザーポインターで示しながら部隊の進路と途中で予想されるゾンビの群れとの戦闘について話てくれた。

 それにしても説明が上手いんだよなぁ。そのまま作戦案として記述しても良さそうに思える。

 だけど、だんだん大きな課題があることが分かってきた。

 レーヴァさんの作戦は現状の陸上艦隊そのものを使う事になる。

 昨夜マリアンさんはテキサスシティで3つの部隊を作ると言っていたからね。テキサスシティの防衛部隊を現状維持としたなら、艦隊に同行する陸戦部隊が増員兵だけになってしまう。それを考えると陸上艦隊をどこまで縮小できるかという大きな課題を次の作戦前に解決しておく必要があるのだ。


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― 新着の感想 ―
コイン機よりは高速でしょうけどモスボール保存している攻撃機を使えば2tくらいの爆弾ならなんとかなりませんかね。どうせバサッと落とすんだからファントムを復活させても良いんじゃないかな。かなり煩いけど。爆…
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