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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-788 増援部隊がやって来た


 ラッシュが始まるという事で、急遽レーヴァさんの部隊は後退を余儀なくされたらしい。

 まだ時間的余裕はあるし、マリアンさん達がヒューストンの航空部隊に援護を依頼しているだろうから撤退時の危険性はあまりなさそうだ。

 とは言ってもなぁ……。


「東周りのルートはしばらく使えそうにないな。残ったのは、我等の中央突破ルートに西回りのルートか」


「西回りはかなり遠回りになるんですよねぇ。俺達が上手くルートを作れれば、しばらくはこのルートを使うことになるでしょう。でもフロリダ方面の攻略を考えると、レーヴァさん達が築くはずだった東周りのルートを早い内に開通しておかねば後が困ったことになりかねません」


「クロード大佐達の次の任務という事だな。フロリダ半島の南からゾンビを北に向かって駆逐する。上手い具合にフロリダの北にはメイポート基地がある。さらに西側から部隊を進めればゾンビを包囲殲滅出来るという事か……」


 先の長い話ではあるんだけどねぇ。でも小さな陸上艦隊を作って西に布陣するなら可能に思えるんだよなぁ。

 さすがにウイル小父さん達が進める艦隊を使う事にはならないはずだ。

 この後に行うメキシコから越境してくるゾンビの対処に目途が着いたなら、現在の陸上艦隊を縮小してフロリダに向かうのが一番に思える。

 まぁ、その辺りは統合作戦本部が考えてくれるだろう。俺達の部隊はウイル小父さんの部隊とマリアンさんの部隊を交互に行き来するようになるとのことだからね。


「もうすぐ、士官達がやってくるよ。だいぶ日が傾いてきているから今夜の野営地への移動も指示しておかないと」


「了解だ。移動は指揮官がいなくても問題ないだろう。作業の方も先が見えてきたようだ」


 ジュリーさんに返事を返したシグさんが、ついでにコーヒーを沸かすよう指示している。

 皆が揃ったら、コーヒー片手に状況を伝えるのだろう。


 数分も経たずに3人がキャビンに入ってきた。

 席に座ったところで、ジュリーさんがコーヒーカップを運んでくれた。

 皆にコーヒーが行きわたったところでシグさんが状況を伝えると、3人が目を丸くして驚いている。


「すると東周りは今回放棄することになるという事ですか?」


「まだ分らんが、その公算は高そうだ。クロード大佐の1年がかりの砲撃でヒューストンのゾンビが中央より周辺に移動したためだろうとサミーが言っている。私も同じ考えだ。となると、西回りも支障が出ないとも限らない。一番危険性が高いと評価された我等のルートが、案外一番到達性が高いかもしれん。とはいえ、まだ市の中心部に近付いたばかりだ。予断は出来ん」


「明日の昼前には、作業が完了します。次のジャンクションは今回の作業を考慮すれば3日は確実に掛かると推測します」


 本来なら、まだ10万体を越えるゾンビが生息する都市の中心部で放置車両の撤去を3日も続けるなんて自殺行為に等しいのだが、ここなら成功する可能性は高いんだよなぁ。

 都市中心部への砲撃を継続しているし、45号線沿いの建物は全て瓦礫の山だ。

 とは言っても瓦礫に潜むゾンビの数はそれなりにいるだろうし、作業の騒音を聞きつけて何時ラッシュが起こらないとも限らない。

 中心部での作業だから、ラッシュ時に撤退するルートに別のゾンビの集団が現れる可能性だってあるからね。


「他の都市ではまず無理な作戦だ。だがヒューストンなら可能性がある。次のジャンクションの放置車両を一挙に撤去する方法をサミーが考えてくれた。今夜にでも実行されるだろうから、当初より我等が撤去する車両は少ないだろう……」


 その方法をシグさんが説明すると、呆れたような感心したような微妙な表情を見せてくれる。

 やはり爆弾で一気に吹き飛ばすというのは無理なのかもしれないな。


「地上爆発でなければ、道路をそれほど傷めることは無いでしょう。でも、それでどれほど放置車両が撤去できるかは微妙なところがありますね」


 オルバンさんは懐疑的だな。まぁ、上手く行かない時には当初の計画通りに進めれば良いことだ。

 そんな話をしていると、ジュリーさんがメモをシグさんに手渡している。本隊から新たな指示が来たようだ。

 メモを見たシグさんが、すぐに俺にメモを渡してくれた。

 中身は……、西回りの部隊への戦力増加だな。レーヴァさん達が本隊で補給を整え、西に向かうようだ。もう1つは……、俺達への戦力増加だ。


「マリアンさんも、どうやら事態を重く見たようです。西回りの部隊と俺達の部隊に戦力の補充を行うそうです。もうすぐ俺達へ2個分隊が増員されますよ。やってくるのはストライカー2両ですが、60mm迫撃砲を4門運んできます」


「ラッシュ対策という事ですか。2個分隊が増員されれば車両の撤去は2日も掛からんでしょう。それに爆撃が上手く行ったなら1日で終えるかもしれません」


 アレフさんは案外楽天家だな。だけど戦場ではそんな人物が皆の緊張をほぐしてくれる。さすがに指揮官全員が楽天家だったなら、その傘下にいる兵士は苦労するに違いない。


「新たな部隊を率いてきた指揮官が現れたら再度集まることにする。既にフクスも動き出したようだ。今夜は昨夜と同じ位置で野営をするぞ。夜間の当直は昨夜と同じで良いだろう。サミーが寝入っていても、集音装置に接続したスペクトルアナライザーに変化が生じたらサミーを叩き起こしてくれ」


 うんうんと皆が頷いているけど、俺は警報装置ではないんだけどなぁ。まぁ、ハンモックで横になる前に一度周辺のゾンビの声を聞いておけば、叩き起こされることは無いだろう。


 会議を終えてフクスを出ると、兵士達が野営の準備を進めていた。

 10分も走っていないからね。キャンピング用の焚火台に火が付けられ大きな鍋が乗せられている。あれでレーションを温めるのだろう。

 2両のフクスの間にタープが屋根代わりに設けられ、その下にテーブルとベンチが置かれていた。ここが指揮所という事になるのだろう。

 まだ夕暮れ前だけど、テーブルの上にはランタンまで用意されてあった。

 さて、周辺を探ってみるか。

 集音装置のスイッチを入れ、ヘッドホンでゾンビの声を聞きながらスペクトルアナライザーをたまに見る。ゾンビの声が種類ごとに音声の帯域が変わっているからなぁ。耳だけでは判断できなくなってきているのは、それだけゾンビが進化したという事になるのだろう。

 

 増援部隊が到着したのは、20時を過ぎてからだった。

 高速道路に邪魔な車両を撤去しておいたから、予想より早く到着してくれた。俺達のテーブルに顔を出したのは、アネッタ少尉とその副官のノートン軍曹だった。

 女性士官だけど、ワッペンを見るとグリーンベレー所属のようだ。レーヴァさんの後輩ということかな。


「増援するよう指示を受けてやってまいりました。所属は陸戦隊ですが、迫撃砲での支援も可能です」


「ご苦労。我等はドローンを使って迫撃砲弾を落としているが、連続した砲撃が出来んからなぁ。確か60mm迫撃砲だと聞いているが、砲弾はどれほど持参したのだ?」


「各門とも60発です。予備弾は5ケースで60発になります」


 砲弾が多いということで弾薬運搬用にカーゴをストライカーで曳いて来たらしい。

 でも迫撃砲弾は、結構沢山砲弾を使うんだよね。1門辺り60発ということは覚えておかないといけないだろうな。多用したなら直ぐになくなってしまいそうだ。


「東回りの部隊がラッシュに遭遇しかねないことから撤退している。継続しているのは我等の部隊と西回りになるのだが、放置車両の数が多すぎるのが問題だ。明日の放置車両の撤去は手伝って欲しい」


 状況を説明していると、オルバンさん達がやって来た。

 各部隊の指揮官が揃ったところで、簡単な状況説明と作業分担の確認を行う。


「要するに撤去作業に1個分隊が増援されて、周辺監視にも1個分隊が増員されるという事ですか」


 オルバンさんが簡単に纏めてくれた。

 今まではエディ達とドローンによる周辺監視だったけど、今度は作業場所周辺にも監視とその場でゾンビを駆逐できることになる。今まではブラッドレーの砲塔ハッチからアレフさんが目を光らせ、ゾンビを見つけたなら直ぐに作業を中断して対処していたらしい。ライフルを担いでの作業となると、その重さだって馬鹿にはならないからなぁ。

 車両のキャビンにライフルを置いて、護身用に拳銃だけ持つだけでも良さそうだ。


「ライフルとマガジンだけで数kgになりますからね。作業中外せるなら兵士も喜びます」


「とはいえ、ある意味敵地でもある。直ぐにライフルを持ち出せる状態で作業をして欲しい。こちらでドローンによる周辺の監視は行うが、ノイズマシンに集まったゾンビの中にステルス型がいたようだ。染料を詰めた迫撃砲弾を落としたから少しは目に見えるようになっているだろうが油断は出来ん。各部隊の指揮官は常にトランシーバーの電源を入れておいて欲しい」


 周辺監視はハンターユニットを付けたドローンで行えば、ステルスゾンビの存在に気付き次第染料を詰めた迫撃砲弾を落とせるだろう。

 爆撃よりも皆の目に見える形にした方が対処しやすいはずだ。

 

 会議を終えて俺達の当直時間までベンチでエディ達と談笑していると、南から断続した爆弾の炸裂音が低いドロドロとした音で聞こえて来た。

 いつもの爆弾の炸裂音と異なるのは、ニックの言っていたサーモバリック弾を使ったという事かな。

 爆撃が終わってしばらく経つと、再び爆弾の炸裂音が聞こえてくる。

 今度は遠くで花火が炸裂するような聞きなれた音だから通常爆弾という事になるのだろう。


「2回目だね。やはり1回では、あまり効果が無かったのかな?」


「もう1回ぐらいやるかもしれないぞ。最初とさっきの音が違っているからね。爆弾の種類を替えて降下を確認しているのかもしれない」


 そんな話をしていると、再び炸裂音が聞こえて来た。

 あまり落としたならジャンクションが無くなってしまいそうだけど、その辺りはしっかりと事前確認をしているのだろうが、ここで聞いていると心配だけが強まってしまうんだよなぁ。


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