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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-787 ラッシュの向かう先には、東回りの部隊がいる


 放置車両の撤去作業は午後に再開することにして、少し早めの昼食をとることになった。

 レーションだけどカロリーバーよりはマシな食事だし、食後はゆっくりとコーヒーを飲める。ちょっとしたことだけど、それで士気が上がるんだからなぁ。

 この辺りは士官として常に心掛けるべきなのかもしれない。


「レーヴァ達も染料入りの砲弾を作業場所周辺に落としたようだ。やはりかなりのステルスゾンビがいたとの報告があったそうだ」


「ステルスゾンビは一応戦士型ですから集音装置と音声映像装置を使えば位置を特定できるんですけどねぇ……」


「機材は持っていても、それを常に使っているという事では無さそうだな。彼らの部隊にも日本人はいるだろうし、スペクトルアナライザーを使うなら我等でも存在の確認は可能なのだが……」


 目で見て確認するというのが、体に染みついているみたいだな。

 それなら集音装置を使って戦士型ゾンビの潜む位置にその姿が見えないなら、染料を周辺に撒けば十分に思える。

 だけど同じ戦士型から進化した種なのだろう。声が殆ど同じなんだよねぇ……。

 瓦礫に潜むステルス型でない戦士型ゾンビと、瓦礫を背にするステルス戦士型ゾンビの違いは俺にも分からないからなぁ。


「今後は染料の需要が高まりそうですね」


「そうなるだろうな。だが、蛍光ピンクでなければ案外染料はありそうに思える。正直な話、ペンキを砲弾内に詰めて撃ち込んでも良さそうだ」


 ペンキなら長時間色が付きそうだけど、過ぐに色落ちするペンキもあるってことかな?

 だけどそんなペンキの需要があるとは思えないんだけどなぁ。


 染料を詰めた迫撃砲弾を搭載したドローンが飛び立っていく。

 どうなることかとシグさんとモニターを眺めていたら、爆撃跡に2つのピンク色の雲が突然出現した。

 やはり2発搭載して行ったようだ。少しは広範囲に染料が飛散しただろうから、ステルスゾンビがいたならこれで分かるはず……。


「いたな……。ジュリー! 統率型は確認できたか?」


「瓦礫の下に1体いるよ。これから砲弾を落とすつもり」


「残った砲弾は、ここに落としてくれ。数体集まっているぞ」


 シグさんがモニターにレーザーポインターで位置を教えている。しっかりとジュリーさんが頷いて「了解!」と告げてくれたからこれであの数体は葬れるに違いない。


「それで、ジャンクション付近のゾンビの方は?」


「爆撃音で動きが活発化したみたい。でも数はそれほどではないよ」


 ジュリーさんの言葉にシグさんが俺に顔を向ける。作業の再開ってことだな。シグさんにしっかりと顔を向けて頷くと、すぐにシグさんがジュリーさんの作業再開の指示を出すよう伝えてくれた。


「これで夕暮れまでには、我々だけなら何とか通れるようになるだろう。本隊の通行伴なれば、明日も作業を続けねばなるまい」


「夜間の作業は、さすがに危険すぎます。日暮れ前に作業を中断して明日は早朝から始めるべきでしょうね。次のジャンクションがマリアンさん達の先行攻撃で少しは放置車両が減っているでしょうから、このジャンクションの車両撤去が今回の山場という事にしたいですね」


「あまり期待は出来んが、やれば少しはマシになるだろうな。少しでも道路から爆風で車両が退かせるなら、何度も実行してくれるに違いない」


 次のジャンクションは、このジャンクションから南に数km先だ。爆撃音はここまで聞こえてくるだろうな。それでゾンビが活性化したなら、あらかじめ仕掛けておいたノイズマシンで誘導すれば良いだろう。集まったゾンビは爆撃でどうにでもなるはずだ。

 待てよ……。再爆撃を行うなら、その時に染料をたっぷり詰め込んだ爆弾を落としても良さそうだな。迫撃砲弾よりも炸薬量の大きな爆弾ならたっぷりと染料を詰め込めるに違いない。

 シグさんに話すと、すぐに本隊へ爆弾に染料を混ぜるよう連絡してくれた。

 どんな色が付くか分からないけど、見えないよりは良いからね。

 俺達に近付くことがあっても、目視可能ならエディ達が長距離射撃で倒してくれるだろう。


 再び始まった撤去作業は、休憩時間で疲れを癒せたためだろう。かなりのピッチで車両の撤去が行われている。

 そんな俺達のところに、ヘリがドラム缶を数本運んでくる。一緒に木箱も運んできたから、オルバンさん達が中身を確認して報告してくれた。

 どうやら軽油と水、それに果物だったらしい。

 果物はプラムのようだけど、夕食に2個ずつ配布できるようだ。


「ブラッドレーとストライカーの燃料という事だろう。だいぶ動かしているからなあ。燃料は半減しているに違いない」


 2両のタンクを満タンにして残った燃料は俺達のフクスに入れるようだな。フクスは止まっている時の方が多いんだが、アイドリング状態でも燃料は消費するからねぇ。


 作業を開始して2時間程経った頃合いで、俺達も45号線に繋がる道路に放置された車両の確認を始める。

「また始めるぞ!」という言葉に、エディ達が笑みを浮かべて屋根から降りてくる。

 道路から全ての車両が撤去されたわけではないが、2つの車線の車は完全になくなっている。これなら幅の広い車両が並行して通過できそうだな。


「かなり撤去されているね。まだ向こうで作業しているみたいだけど、俺達はあの降り口から始めよう」


 俺の言葉にエディ達が小さく頷くと数m先行して歩き始めた。シグさんは俺の後方に位置して、たまに後方を振り返って確認しているようだな。俺の位置なら左右の確認という事になるだろうから、左右に目をひからせながら集音装置から聞こえてくるゾンビの声をヘッドホンで聞くことにした。


「エディ! 2台先の車にいるぞ!!」


 俺の言葉にエディが片手を上げて少し車の列から離れながら足を進めて行く。その後ろにニックがライフルを構え、いつでもエディの援護が出来る位置を保っている。

 すっかり軍人らしくなった2人感心して見ていた時だった。

 突然鋭いセミの声が聞こえてくる。

 慌てて2人をその場に停めて、音の発生源の確認を始めた。


「戦士型が隠れていました。……エディ、さっき教えた車の1つ前だ。戦士型が1体潜んでいる。声だけでは種類が分からないから、グレネード弾を使ってくれ」


「1つ前と言うと……あれだな。確かに何か動いているな。窓が割れているから何とかなりそうだ。ニックと2人で撃ちこむぞ!」


「飛び出してくるかもしれんな。私もバックアップに向かうぞ。サミーは手前の車に注意してくれ。音に反応して出て来ないとも限らん」


 シグさんがマーリンに初弾を装填してエディ達のところに向かった。俺もマーリンの薬室に初弾を装填したところで、シグさんの後方に位置する。


 エディ達がライフルに取り付けたM203グレネードランチャーを20m程の距離を取って問題の車の窓向けて発射する。

 車のガラス窓は既になくなっていたから、2発とも車内で炸裂したようだ。

 炸裂後には、それまで聞こえていた戦士型ゾンビの声がなくなったから間違いなく倒したに違いない。2人が俺に振り返るから、笑みを浮かべて左腕を伸ばし親指を立てた。2人が俺に同じ仕草で親指を立てると、1つ手前の車を指差した。

 次は通常型だな。ニックがライフルを背負ってベレッタを取り出している。マグナム弾を使う銃も手に入れたようだけど、マガジンの装弾数が半減すると言っていたからなぁ。よほどのことでないと使わないつもりのようだ。

 

 直ぐに小さな銃声が聞こえてきた。サプレッサーを付けてはいるけど、やはり音はするんだよね。


「終わったぞ! 次のゾンビを見付けてくれ」


「了解。少し休んでくれ。西の方がだいぶ賑やかなんだ」


 俺の言葉を聴いて直ぐにシグさんが走ってきた。真剣な過去をしているんだけど、西の爆撃後の騒ぎが未だ収まっていないだけに思えるんだけどなぁ。


「ラッシュの前触れか?」


「そうではありません。ラッシュ時には統率型ゾンビが特徴的な音を出しますから直ぐに分かります。まだ爆撃の余韻が残っているという事でしょう。でも、ワッチは継続しますよ」


「それなら良いのだが……」


 心配して損したという表情をしているんだよね。シグさんはマーシャルアーツのインストラクターなんだけどなぁ。感情をコントロールするまでには至っていないようだ。俺の御祖父さんは俺に武技を教える際は何時も無表情だった。道を究めると喜怒哀楽を脳裏から消し去ることが出来るとも言っていたなぁ。俺もまだその境地には達していないけど、無理に達しようとも思わない。

 でも、一旦敵と認定した相手と対峙した時には、平常心を心掛けてはいるんだけどね。


「……こちらシグだ。隣にサミーもいるぞ。どうした?」


 突然シグさんが話しを始めたのは、ジュリーさんから連絡を受けたのだろう。俺に顔を向けて話を聞いていると、突然「なんだって!」と言って、俺の手を引きフクスに走り出した。

 直ぐに振り返ると、エディ達に『フクスの屋根で小右辺監視をしてくれ!』と言って返事も待たずにフクスに向って行く。

 何かあったのだろうけど、ここで聞くよりもキャビンに戻ってからの方が詳しく聞けるだろう。

 脚を早めて、ジュリーさんが開けてくれた後部ハッチに飛び込むように乗車した。

 中に入ると、ベンチに腰を下ろした俺達にジュリーさんがコーヒーカップを渡してくれた。ちょっと温めだけど、俺にはこれぐらいが一番だな。

 走ってきたから、先ずは一口飲んで俺達を見ているジュリーさんに顔を向けた。


「落ち着いたかな? 東回りの部隊が緊急避難を始めたの。共通回線から聞こえてきた話では、ラッシュが始まりかねないらしいよ」


「これを見て!」と、ジュリーさんが右手のモニターに本隊から経由された広域偵察ドローンの撮影した画像を見せてくれた。

 そこに映っていたのは、州間高速10号線を東進するゾンビの群れだった。


「レーヴァ達は99号線を使ったルートの開拓だったな。モント・ヴェルブーの南東のジャンクションで10号線と交わるぞ」


「距離は数kmというところだから早ければ1時間半でレーヴァ大尉の部隊に接触しかねない。ジャックを99号線より西を走る146号線に仕掛けたみたいだけど、さすがにそれで十分とは思えない」


 群れの長さは5kmには満たないが、どんどん群れに合流するゾンビがいるようだな。ジャンクションに到着する時には3万体近くにまで達するに違いない。


「それでレーヴァさん達は?」


「急遽撤退するみたい。でも作業途中だったらしく、まだ車両は動いていないよ」


 レーヴァさん達の事だから、のんびり作業の後片付けをしているわけではないだろう。それにゾンビが放置車両の撤去を行っているジャンクションへ到達するまでには時間が十分にあるから被害を受けることはなさそうだな。


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