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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
780/808

H-780 テキサスシティへの到着時間はかなり遅れそうだ


 コンローからテキサスシティへ向かうなら、州間高速45号線を100km程走れば到達することが出来る。1時間程度で十分なんだが、今はそうもいかないんだよなぁ。

レーヴァさんの出発の合図で走り出した俺達の車列は、コンロー市街地の真ん中にあるジャンクションで3方向に分かれた。

 集音装置と同軸に取り付けたカメラが離れていく車両の屋根から手を振る兵士達を写している。この屋根に乗ったエディ達も、同じように互いの無事を祈って手を振っているに違いない。

 シグさんはジッとブラッドレーのカメラが捉えた前方の様子を見つめている。

 今からそんなに神経を尖らせていたら、直ぐに参ってしまいそうに思えるんだけどなぁ。

 俺も丸めたハンモックに背中を預けながらモニターを眺めてはいるけど、コーヒーを飲みながらだからねぇ。もう少し緊張していないと後でシグさんに叱られそうだ。


「2km先に放置車両……。道の真ん中に2台だよ。たぶん事故車かも」


 ジュリーさんの言葉に、反対側のキャビンの壁に取り付けたモニターに目を向ける。

 ドローンが2台の事故車を映し出している。

追突したのかな? 骨組みだけだから衝突した後に炎上したのだろう。乗っていた人達はどうなったんだろう? 上手く逃げ出せたなら良いんだけどねぇ。


「あれならブラッドレーで容易に弾ける。速度を落とすこともあるまい」


 現在の速度は時速40kmほどらしい。進行を邪魔する放置車両をぶつけて脇に退かすから、あまり速度を上げないみたいだな。

 モニターの映像を見ていると、放置車両の姿がどんどん大きくなっていく。

 衝突した時には画像が大揺れになるかと思っていたんだが、苦も無く2台纏めて弾き飛ばしてしまった。

 やはり履帯駆動の戦車だけの事はあるなぁ。

映画で戦車がビルの壁を破壊しながら出てくる場面を見たことがある。

さすがにフェイクだと思っていたんだが、今の光景を見る限り、エイブラムのような大型戦車なら実際に出来るに違いない。


「音が無いから、ちょっと拍子抜けよねぇ」


 ジュリーさんが、そんな呟きを漏らしている。


「まぁ、あれぐらいなら速度を落とす事も無いということだな。次はもう少し先になりそうだ」


 いつの間にかシグさんがノートパソコンを開いて、広域偵察ドローンの映像で45号線を確認していた。

 ジュリーさんも無線機の前のテーブルにタブレットを立てているから、シグさんと同じようにドローンの監視画像の先を確認しているのだろう。

 突然インターホンからニックの声が聞こえてきた。

 どうやらゾンビを見付けたらしい。

 ジュリーさんからシグさんが電話の受話器のようなインターホンを受け取って、数と方向それに距離を確認している。


「了解だ。2体でしかも500mほど距離が離れているなら問題はないだろう。しっかりと監視を頼んだぞ!」


 どうやら遠くで彷徨うゾンビを見付けただけらしい。こちらに顔を向ける事も無いということだから狙撃して倒す事もないだろう。


 コンローを抜けると、周囲に荒地が広がる。そんな中に大きな森や並木道が見えるんだよなぁ。

 住宅の庭木も大きくなっているようだし、枯れた木はあまりないようだ。そんな立木も道路近くはかなり焼けている。焼けて倒れた物や、枝が殆ど無くなったものまであるな。

 コイン機で何度も焼夷弾を落としたのだろう。おかげで屋根の柱に付けたカメラの見通しはかなり良い。

 

「この先で3台の放置車両がある。事故車だろうな。その内2台がトラックでは、弾くことも出来んか……」


 ドローンが上空から捉えた放置車両は、確かに問題だな。

 直ぐにジュリーさんがブラッドレーのアレフさんに状況を伝えてくれた。


「ワイヤーで路肩に移動するみたい。一旦車列を停めるから、エリックさんにも連絡しとくね」


「頼んだぞ。オルバンにも伝えてくれ!」


 最初の一時停止ということかな。

 シグさんが屋根の2人にインターホンで知らせている。俺も集音装置を直ぐに使えるようにしておこう。


 直ぐにフクスが止まった。

 集音装置を自動にしてゾンビの声をヘッドホンで聞く。ジュリーさん達は前方偵察を行っていたドローンを車列の上空に移動してゆっくりと周回させながらゾンビの姿を探し始めたようだ。

 撤去作業の様子は周回しているドローンで状況が良く分かる。どうやらエリックさん達は、ストライカー内で待機のようだな。ブラッドレーから降りた工兵達が手際よく作業を遂行している。


「さすがに履帯を持つだけの事はある。あの大きなトラックを動かせるんだからなぁ」


「タイヤがあれではねぇ……。パンクしているようです。でもあの履帯、少し形が変わっているんですが……」


「鉄の履帯では道路を壊してしまいかねない。あれは硬化ゴムパットを履帯に付けているのだ。タイヤ並みとは言えないが、震動はかなり少なくなると聞いたぞ」


 なるほどねぇ……。でも履帯が切れたら面倒そうだな。最後まで持ってくれれば良いのだが。

 しばらく掛かりそうだから、その間にコーヒーをポットから注いで一休み。ついでにタバコを取り出してハンモックを背に一服を始める。

 でもしっかりとヘッドホンを着けて、周囲のゾンビの声を聴いているからね。サボっているわけではないんだから、そんな目で見ないで欲しいとシグさんに言いたいんだよなぁ。


 一服を終えたのを待っていたかのように、作業終了の連絡が入った。

 再び45号線を南に向かって移動を始める。


「アレフさんの話では、普通車が数台程度ならブラッドレーで弾けるみたい。さすがに大きなトラックは無理だと言ってた」


「ブラッドレーでは仕方ないだろうな。分類上では戦車ではなく歩兵戦闘車だからなぁ」



 その違いは何だろうと考えてしまうんだよなぁ。大砲を持たないからかな? でも、戦車を相手にすることが出来るように、対戦車ミサイルを搭載していたはずだ。

 山小屋に帰ったら、ライルお爺さんに聞いてみよう。詳しくその違いを教えてくれるに違いない。


 再び、数台の放置車両の撤去が始まる。

 今度はトレーラーに10台ほどの車が衝突していた。

 さすがに、ブラッドレーの工兵だけでは手が足りないようで、エリックさん達も加勢に入る。これ以上となると、俺達も出張らないといけないだろう。百台以上がみっちりと詰まっている個所がこれから先に2か所あるんだよなぁ。

 それを思うと、さらにもう1個分隊の支援が欲しくなる。


 工兵達が手際よく動いて車両を路肩に移動するのを、屋根の監視カメラで眺める。

 しっかりと周辺のゾンビの声も聴いているから近付けば直ぐに分かるだろう。


「やはり近くにはいないという事か?」


「道路上ではゾンビの食料源もいないでしょうし、ダラスからの襲撃に備えて配置された偵察ゾンビもいませんね。かつてはいたのでしょうが、ヒューストンのゾンビの一部が南に移動しましたし、残ったゾンビもだいぶ叩いたのが原因かと思います。でも、それなりに数はいるようですよ。ヒューストン方向からは潮騒のようなざわめきが聞こえてきます」


「街にいるだけなら問題はない、集団を作り道路に上がってくることが無ければ十分だ」


 クロードさん達が、今でも1時間に2発の頻度で砲撃をしているらしい。

 着弾点は45号線から1km以上離れているとのことだから、ある意味俺達の行動に対する陽動と言えるだろう。設置したノイズマシンが破壊されないかと心配だったけど、しっかりと設置位置を教えているからフレンドリーファイヤーを受けることはなさそうだ。


「作業はもう直ぐ片付くみたい。先にドローンを先行させるよ!」


「了解だ。次は2kmほど先に3台だから、跳ね飛ばせるだろう」


 ジュリーさんから知らせを受け数分後に、再び車列が動き出す。

 ブラッドレーから次の放置車両が見えるのだろう。あまり速度を上げないようだ。

 夕暮れ前には到着できると思っていたんだが、こんな調子では深夜どころか明日になりそうだ。

 シグさんに他の部隊の状況を聞いてみると、荒地を順調に進んでいるとの事だ。


「とは言っても、先頭を進むのがブラッドレーだからな。時速40kmで進んでいるらしい」


「45号線と比べると道幅が狭いですからねぇ。それだけ放置車両が邪魔になるかもしれません」


「あっちは先が長いからなぁ。案外一番距離の長い西回りが一番先にテキサスシティに到着するかもしれん。レーヴァ大尉の部隊の最大の難所はタブス湾に掛かったフレッドハートマンブリッジだ。全長3kmの大きな橋なんだが、かなりの放置車両が詰まっている。上手く橋から落とすことが出来れば良いのだが……」


 広域偵察ドローンが捉えた画像を見てみると、思わず首を横に振ってしまったのは仕方のないことだろう。

 よりによって一番面倒な吊り橋部分に車両が密集している。

 これだと1台ずつ詰まった車両を後方に引き出すことになりそうだ。面倒なんて言葉では済まないほど時間が掛かりそうだな。


「まぁ、そこまで進めばヒューストンの連中も協力してくれるに違いない。車両の移動はヘリも使えそうだからな。だが吊り橋部分はヘリを使う事も出来ん」


 俺なら最初から諦めるんだけどねぇ。でも兵站を担う動線を1つでも多く確保することが出来れば、後のゾンビの掃討作戦がそれだけ有利に進められるからなぁ。

 そんな事を考えるマリアンさんはやはり有能な指揮官ということになるのだろう……、待てよ。マリアンさんの事だから狙いはそれだけではないんじゃないか?


シグさんに顔を向けると、俺が素朴な疑問を持ったことに満足するように微笑んで小さく頷いている。


「気付いたか? マリアン殿が東回りの道をレーヴァ大尉に任せたのは、ヒューストンの部隊との連携を見る為に違いない」


「レーヴァ大尉の能力を試すためだと?」


「たぶんそうだと思うぞ。デンバーからメキシコシティへの動線を確保するために最前線で活躍し、最大の難所であるラッシュに遭遇して橋の上に放置された車両の撤去を、オイルロード作戦の残存部隊と協力して行ったということになれば十分に昇進することはかのだろう。部隊を率いる佐官が足りないらしいからな」


「ずっと一緒に戦えると思っていましたが……。でも、そうなると、レディさんが俺達から離れて行くことになるんでしょうか?」


「サミー達が心配で、この部隊を離れることは出来んだろう。まったく困った姉さんだ」


 それ程困らせるような事をしたんだろうか?

 何度考えても、思い浮かばないんだけどなぁ……。


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