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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-771 出発前の一騒動


 出撃前の点検整備は俺達の任務の成果を左右しかねないという事で、オルバンさん達が整備部隊へフクスを持って行ってしまった。

 さすがにキャンピングカーゴは俺達で点検出来るとのことだけど、室内は女性兵士達の城だからなぁ。さすがに乗り込むことが出来ないから、屋根に取り付けてあるタープを引き出して、その下にキャンピングテーブルセットを置いてくれた。

 テーブルに地図を広げ、ノートパソコンに広域偵察ドローンが撮影した35号線とウエーゴ近辺の道路を表示させながら明後日からの任務の内容を確認する。

 遠くからエディ達の射撃訓練の銃声が聞こえてくるから、結構気が散るんだよなぁ。俺も後で撃たせて貰おうかな……。


 突然、俺の前にカップが置かれた。

 いつものシェラカップではなく、使い捨てのプラカップだ。大きな氷が入った中身は酒なんだろうけど……。

 見上げると、俺を見下ろしながら笑みを浮かべているレーヴァさんがいた。


「ありがとうございます。どうぞ座ってください」


「レディからの通信にはいつもサミーへの心配が最後に入っているぞ。生まれるのはまだ先だが、皆大きなお腹をしてキャシー小母さん達の言いつけを守っているようだな」


「あまり連絡をしてないんですよねぇ……。ありがとうございます。少し安心しました」


「たまに連絡したほうが良いぞ。こっちも大事ではあるんだが、やはり一番に家族を大事にすることだな……。それでサミー達だが、今度は何をするんだ?」


 地図を使って、俺達の次の任務を説明すると、だんだんとレーヴァさんの顔が残念そうな表情に変わっている。


「私の方に話はきていないから、サミー達の短毒任務ということなんだろうな。待てよ。私達はダラスの市街地東部を砲撃する部隊の護衛という事は……」


「陽動でしょうね。場合によっては殿を任せられかねませんよ」


 本隊の車列は結構長いからなぁ。コンボイを組んでダラスの西を南下することになるだろうから、車列の横腹を突かれないように陸戦部隊が付くことになるだろう。それに個々の車両はそれなりの速度で走れるだろうが、コンボイを組むともなれば速度をあまり上げられないだろう。さすがにゾンビの移動速度よりは遥かに早いけど後方警戒は必要だろうし、ゾンビの集団は何時までも追いかけてくるからなぁ。


「場合によっては短距離ロケットランチャーを後方に向けておく必要もありそうだな」


「グレネード弾と、爆弾もたっぷりと用意したほうが良いかもしれません。特に爆弾の導火線はなるべく長くした方が良いですよ」


 俺の忠告に笑みを浮かべて頷いてくれた。

 ゾンビの群れを誘導する際に、短い導火線はあまり役立たないことを実感しているからだろう。

 

「サミーが出発するのは明後日という事だな。そうなると早ければその日の夕刻に本隊の移動準備の指示が出るだろう。少なくとももう2回ほどはダラスの東部を叩くことになりそうだ」


「次の駐屯地はこの辺りになるようです。周辺部の偵察を行うとともに、45号線を少し南下してみようと思っています」


「この2つの町だな……。さほど大きくは無いが、無視すること出来んだろう。ジャックを仕掛けて、ジャックに集まるゾンビの数によってはコイン機での爆撃を要請することになりそうだ」


 レーヴァさんも、45号線沿いの町の先行偵察は必要と感じているようだ。待てよ……、南だけで良いのかな?45号線の北にも注意が必要だろう。何といっても数十km北はダラスだからなぁ。


「今回は同行できないが、頑張ってくれよ!」


 そう言って、去って行った。

 俺達の様子を見るようにレディさんから言いつけられたのかな? 本人も俺達が無茶をすると思っている感じに思えるんだけど、至って慎重に行動していると思うんだけどねぇ。


明日は出発という午後の事だった。

 オルバンさん達が整備部隊からフクスを受け取って戻って来たんだが、車両が1台増えているんだよねぇ。

 オルバンさんの話では、放置されていたピックアップトラックを整備部隊が改造したとのことだった。


「使うなら持って行っても構わないという事でしたから、頂いてきました。GMのピックアップトラックですから、大きなエンジンを搭載していますよ。ケロシン燃料ですからフクスと互換が取れます。後部座席付きですから荷台は大きくありませんが、ジャックを8個は搭載できますし、キャンピングトレーラーも牽引できます」


「それならこの指揮車にカーゴを搭載せずに済みそうだな」


 シグさんが笑みを浮かべているけど、このフクスで単独行動を取るよりは頂いてきたピックアップトラックを使った方が良さそうだな。

 

 ピックアップトラックの運転を誰にするかはオルバンさんの任せることにして、明日の予定を簡単に確認する。


「先ずはウエーゴだ。町の北5kmほどに車両を停めて、ジャックを使って町のゾンビの状況を確認する。南から3度もゾンビの集団が移動したからなぁ。残存するゾンビはいないと思うが、一応念の為だ。その後は、35号線を降りて、南に向かうこの道路を東に進む。その途中にある、この鉱山跡地周辺の状況を探るまでが明日の行動になる」


 少し急ぎ過ぎるように思えるけど、ゾンビの数が少なければ夕暮れ前にバッファロー市にジャックを仕掛けることぐらいは出来そうだ。

 バッファローで45号線に乗ったなら、南岳でなく北にも注意が必要だからなぁ。少なくとも北10km先まではドローンで状況確認が必要だろう。

 

「2日目は45号線の上で野営することになる。周辺に住宅はそれほど無いが、ヒューストンが少しずつ近づくからゾンビの小さな集団に注意が必要だろう」


「小さな町が幾つかありますね。今までの経験を元にすれば5千体以上のゾンビがいないとも限りません。その対処は?」


「ジャックを使う事にする。場合によってはヒューストンからコイン機での爆撃も可能だろう。とはいえ我等に接近してくる可能性もありそうだ。後退しながらの迎撃が何時でも可能な状況を維持して欲しい」


 シグさんの言葉に、オルバンさんだけでなく俺達の話を聞いていた兵士達も一緒になって頷いてくれた。

 あの短距離ロケットランチャーが試せると思っているのだろう。出来ればそんな機会が来ないで欲しいところなんだけどなぁ。

俺達の部隊では部隊内での上下関係があまり無い。皆が一緒になって色々と考えてくれるし行動してくれる。目に余るようならオルバンさんが止めてくれるから名目指揮官の俺にとってはありがたいんだよね。

だけど、俺達の後ろで兵士達の話では、明日までにもう1つ炉毛tt御ランチャーを搭載しようなんて声まで聞こえてくるんだよなぁ。フクスの屋根はソーラーパネルを取り付けてあるから、そんなものを搭載する余裕はないと思うんだけどねぇ……。


 本隊の食堂テントで夕食を頂き、早めにℌさんモックに入る。やはりフクスの中が一番だな。台船では少し大きなベンチで横になっていたからなぁ。


 外の騒がしい声で、目が覚めた。

 慎重にハンモックから降りたところで身支度を整え外に出る。

 先ずはフクスの屋根を見上げたのは、昨日の話が合ったからだ。

 異常が無いということは、搭載を諦めたのかな?

 朝日に向かって軽く頭を下げていると、シグさんがコーヒーカップを両手に持って近づいてくる。

 1つ手渡してくれたので挨拶しながら礼を言うと、今朝の騒ぎの原因を教えてくれた。

 どうやらいつの間にか猫がキャンピングカーゴに住み着いていたらしい。

 朝方に女性兵士のシュラフに潜り込もうとしたのが大騒ぎの原因とのことだった。


「しばらく猫や犬を見掛けなかったのだが、さすがに身近な野生動物と言われるだけのことはある。しっかりと生き延びていたようだ」


「1匹だけですか? それで、これからどうするんでしょう?」


 俺の問いに、小さな溜息を漏らすんだよね。

 しばらく考えていたが、ゆっくりと俺に顔を向けてきた。


「飼うことになりそうだ。まだ子猫なのだが、付近を探し回っても親猫の姿が見当たらん。このままここに置いておいても良さそうに思えるが、あの娘達だからなぁ……」


 何となく分かる気がしてきた。

 ここは女性兵士達に任せることにしよう。しばらくは俺達の食事を分けてあげれば良いだろうし、コンビニにはキャットフード位はおいてあるに違いない。

 俺が反対しないことを確認したシグさんが、まだ大騒ぎをしているキャンピングカーゴに入って行った。

 小さな焚火に集まっているのはエディ達だった。

 近づくとシェラカップを掲げてコーヒーがあることを教えてくれる。手に持ったカップにまだ残っているから、首を振って断るとタバコを取り出して火を点ける。

 空いている木箱に腰を下ろすと、今朝の大騒ぎの話をニックがしてくれた。

 とりあえずシグさんに飼っても良いと伝えると、皆がウンウンと頷いている。


「あんなに大騒ぎしていたからねぇ。捨ててこいなんて言ったなら、後ろから撃たれるんじゃないか」


「撃たれないとしても、サミーのコーヒーに塩を入れるぐらいはするだろうな。サミーの判断は正しいと思うよ」


「猫よりも犬の方が役立ちそうですけどねぇ。案外その内に子犬もやってくるかもしれませんよ。その時には私が責任を持って対応しますからね」


 オルバンさんの言葉は、追い出すという事ではなく自分が飼うという事なんだろうな。

 俺は猫派だから、もし犬を飼うことになったら少し離れて様子を見ていよう。


「エディ!」とジュリーさんが呼ぶ声が聞こえると、直ぐにエディが駆け出して行った。

 直ぐにニックが後を追うけど、いったいなんだろうな。まだ朝食には早い時刻なんだけどね。

 新たに手に入れたピックアップトラックに乗り込んで2人が走り去って行く。どこに向かうんだろうな。後部座席に女性兵士も乗っているんだよね。


 朝食を終えてもまだ帰ってこないんだよなぁ。

 出発は9時を予定していたんだが、残り20分も無いんだよね。エディ達の朝食はジュリーさんが小母さんに頼んで用意して貰っていたから車の中で食べるんだろうけど、エディ達は運転手でもあるんだよね。

 安全運転をしてくれれば良いんだけど……。


 出発10分前に、エディ達が戻ってきた。

 直ぐにオルバンさんがピックアップトラックにキャンピングカーゴを取り付けている。慌ただしい出発になりそうだけど、どうにか時間通りに出発できそうだ。

 通信機の前に座ったジュリーさんが、「何時でも行けるよ!」と言ってくれたのは、出発予定時刻1分を切っているんだよね。

 

「では出発だ。目的地はウエーゴ手前5km。到着次第ウエーゴにジャックを仕掛ける!」


 シグさんの言葉に、運転席の兵士が「出発します!」と復唱する。

 ゆっくりとフクスが動き出し、35号線に向って速度を上げ始めた。


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