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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-769 エディを狙撃手に


 新たな分隊狙撃手の育成をオルバンさんに依頼すると、シグさんが俺に笑みを浮かべた顔を向けてくれた。

 やはりシグさんも気にしていたようだ。


「バレットを使って千mでの狙撃が出来る人物を育てるという事ですか」


 オルバンさんがちょっと思案顔で確認してきた。


「ショットガンゾンビに自走砲型のゾンビまで出てきたからね。最低でも300m離れてヘッドショットが出来れば申し分ないんだけど」


「それでは狙撃手とは言えんだろうな。500mでヘッドショット、千mなら50cmターゲットに命中させる腕が欲しい」


 それぐらいの腕なら3発も撃てば1発は頭部に当たるに違いない。それに対象となるゾンビの頭部や胴体は人体よりは大きいからね。


「サミーも100m以内ならバレットでヘッドショットが可能だが、それ以上離れるとなぁ……。それに指揮官がバレットを担いで前線を動き回るのも考えてしまうところだ」


 シグさんの言葉にオルバンさんが苦笑いを浮かべているんだよなぁ。ペンデルトン基地での射撃訓練で俺だけバッチを貰えなかったからね。至近距離なら百発百中なんだけど、中距離ましてや遠距離では銃弾をバラまくだけだからなぁ。


「了解しました。そうなると、ペンデルトンで成績の良かったエディ軍曹を鍛え上げた方が早期に任に当たることが出来るでしょう。あの体格ですからバレットで連続射撃も可能に思えます」


 オルバンさんの言葉にシグさんや通信機の前に座って俺達の話を聞いていたジュリーさんまで頷いている。

 バレットの反動をしっかりと受け止められるだけの体格が必要という事なんだろう。俺やジュリーさんは3発がやっとだからねぇ。あれはライフル銃と言うより小さな大砲に思えるんだよなぁ。銃弾だって中に火薬を仕込むことが出来るんだから。


「まだ入手出来ていないが、ドローンにも50口径の銃弾が使える銃を搭載したユニットが作られている。だが銃弾の数は少ないだろう。集団を前にした時に遠距離狙撃が可能な狙撃手は是非とも必要だ」


「了解しました。ですが直ぐに育成が終わるわけではありません。現在の迎撃任務中にじっくりと鍛えることにします」


 シグさんと顔を見合わせて小さく頷く。

 オルバンさんの事だ。しっかりとエディを狙撃手に鍛えてくれるだろう。


「話を変えるが、次の集団の砲爆撃は可能なのだな?」


 昨夜はタップリと砲爆撃を行ったからなぁ。シグさんとしては砲弾のストックがかなり減っていると推測したのだろう。


「昨夜と同等の砲爆撃は補給を受けずとも可能です。サミー大尉達がドーバーに向かった際にたっぷりと本隊より受け取っています。迫撃砲弾も81mm用ですから群れに落とすには十分です」

 

 60mmと81mmでは威力が倍以上異なるからね。81mmなら1発で統率型を葬れるだろう。

 だが装甲を纏った戦士型や自爆ゾンビとなると、直撃させないといけない。早めにバレットを搭載したドローンユニットを手に入れたいところだな。


「ですが……。次の群れがやってくるでしょうか?」


「来るだろう。たぶんサン・アントニオ市の最後の集団になるとサミーは考えているようだ。となると、最低でも昨夜の2倍の規模になるだろう。それでサン・アントニオ市のゾンビはメキシコから越境してきたゾンビの集団にとって換わるだろう。しばらくは動かないだろうが、動き出すと面倒なことになるだろうな」


 サン・アントニオ市のゾンビと争ってどれだけ数を減らしたか……。ペンデルトンがペガサス型ドローンを投入してくれるとのことだから、一緒に運んでくるジャックを使って概要を早めに確認しておこう。


 翌日。朝食を終えて指揮所でサン・アントニオ市の映像を眺めていると、ドローンの離発着場のある台船から鋭い銃声が聞こえて来た。

 結構大きい音だなぁ。50口径だから銃弾の直径が12.5mmもあるし、なんていったって銃弾の全長が薬莢を含めて20cm近くあるからね。

 あれ以上の口径となると、ラティという事になるんだろうが、放つ銃弾が20mmもある化け物だからね。さすがにエディも連続射撃は出来ないだろうし、そんな化け物ゾンビが出現したなら銃撃で倒そうなんて考えずに他の方法を考えるべきだろう。

 旨いことに、50口径の銃弾は戦車や武装ヘリの重機関銃用弾丸としてかなりのストックがあるとのことだ。

 各作戦区域の前線で活躍している部隊に、早めにバレットを支給させた方が良いだろうな。現在は7.62mm弾を使う狙撃銃を使っているようだけど、装甲を纏ったゾンビ

が今後増えそうだからね。


「早速始めたようだな。体格的には問題は無いだろうが、スナイパーは素質も重要なのだ。それに観測者も同時に育成しておかねばならん」


「スナイパーの隣で双眼鏡を構えている兵士ってことですか? 本来ならもう1人付けると聞いたのですが」


「スナイパーは狙撃に集中する。観測者は狙撃対象周辺の状況監視で、もう1人は狙撃位置周辺の状況監視になる。スナイパーの初期は単独行動だったのだが、遠距離狙撃や敵陣近くに進出しての狙撃が多くなることで人数が増えたようだな」


 至近距離で味方部隊に近い場所での狙撃なら1人で良いってことかな?

 とはいえ、やはり2人は必要だろう。初期のゾンビの動きは俺達よりも緩慢だったけど、戦士型は俺達を越えるからね。エディのバディはニックになるだろうから、エディに近付くゾンビがいたなら7.62mmのライフルで銃弾をばらまくに違いない。


「それで変わったゾンビは見つけられたのか?」


 そう言いながら、ポットからシェラカップにコーヒーを注いで俺の前に置いてくれた。

 ありがたく受け取って、角砂糖を2個入れたところでカップを揺らして溶かす。

 皆が飲むコーヒーだからなぁ。俺には少し濃すぎるんだよねぇ。

 タバコを取り出して火を点ける。一服が終わるころには飲み頃になるはずだ。


「まだ見つかりません。装甲型自爆ゾンビやショットガンゾンビを生んだ都市ですから、デンバーやカリフォルニアのゾンビであるなら容易に退けたはずです。それが都市を放棄して逃げ出したんですからね。かなり強力なゾンビがいると思うのですが……」


 俺の言葉に、シグさんが何度も頷きながら聞いている。

 シグさんも、俺と同じ思いなんだろう。だが、上空からの映像に映し出されたゾンビは従来型ゾンビばかりだ。たまに戦士型が映っているんだが、戦士型は北米大陸と同じような昆虫型だが、若干の相違はある。脚が少し太く見えるし、脚の数は2対の攻撃用の脚を含めて10対近くある。装甲のキチン質がカブトムシのように太陽に反射して輝いていた。


「戦士型の装甲は確認してみないと分かりませんね。結構強度があるかもしれません」


「移動速度も速そうだな。それに力もありそうだが、それだけで都市を放棄するほどに戦いが一方的だったとは思えんな」


 少数の精鋭では大軍に飲み込まれてしまうという事だろう。

 シグさんに顔を向けて小さく頷くと、少し冷めたコーヒーを飲みながら、まだ見ぬゾンビの姿を考える。

 やはり自爆型という事なんだろうか? 装甲を纏った自爆ゾンビまで進化したのは、そんな相手との交戦結果によるものだろう。

 越境してきたゾンビと戦ったサン・アントニオ市の方がダラス市の自爆ゾンビよりも進化しているのはそれが原因に違いない。

 となると、サン・アントニオ市から北上してきたゾンビの中に、まだ見ぬゾンビに似た姿に進化した種がいるかもしれないな。

 サン・アントニオ市にペガサス型ドローンを投入しても、すぐに見つかるとは思えないから北上してきたゾンビをもう1度調べて見るか……。


「ペガサス型ドローンの設置は何時頃になるんでしょか?」


「3日以内と聞いている。設置したなら直ぐに連絡が入るはずだ」


 ジャックを何個か設置してくれると言っていたから、楽しみに待っていよう。

 

「やはり上空からでは分らんな。次は?」


「サンディの仕事ぶりを確認してみます。ゾンビの分類をずっと行っていますから、北上してくる集団についても行っているでしょう。ゾンビは敵対する相手に合わせて進化していますからね。越境ゾンビの集団の中に驚異的なゾンビがいたなら、それを越えるゾンビを生み出そうとしているはずです。その成果物が案外いるかもしれません」


 俺の言葉に、にやりと笑みを浮かべる。

 思わずゾッとしてしまった。美人のニヤリは心臓に良くないんだよね。レディさんもそんなところがあったけど、シグさんのニヤリは肉食獣を目の前にした感じがするんだよなぁ。


 生物学研究所の上級研究員の肩書がいつの間にか付いていたのは、オリーさんが動いてくれたのかな?

 俺にはあまりそぐわない気がするんだけど、その地位を持っていることで生物学研究所の研究成果に何時でもアクセスできるという特権が付いてきた。

 ノートパソコンで本隊指揮所にあるサーバー内の研究所のファイルを開き、ゾンビの種別をモニターに表示する。

 左に3面図、右に箇条書きでゾンビの特徴を記載しているが、その書き込みに沢山の『?』マークが短い文の先頭に付いていた。

再確認が必要という事なのだろうが、『その恐れもある』ということ文を終えても良さそうに思えるな。


「だいぶあるな。やはりゾンビの進化は一様ではないという事なのだろう」


 通常型に戦士型、それ以外という分類だが、通常型の中にあるゾンビの種別だけでも20種を超えているようだ。右に掛かれた特長書きに、確認した年月日が記録されている。それを見ると、全て今回の作戦で確認された種類のようだ。


「これほど進化の速度が速いとは思いませんでした。来年同じ町を訪れたなら、このファイルにまた新たな種が追加されるでしょう。サンディもそれは理解していると思いますけど、かなり詳しく分類しているようです」


 一見同じに見えても目の数や触手の有無などの外的変化で区分してある。

 体の大きさも、人間の体格を基準にして、同格それ以上、それ以下と3種に区分されていた。


「ずっと同じに見えた通常種でも、大型化しているということか」


「大型化もしているし、小型化もしているようです。たぶんゾンビの作業分担でこのように変化したのでしょう。初期であれば我々と同じ体格でしたが、今後は大きくなるか小さくなるかの2種に分かれていくのかもしれません」


 戦士型は俺達の動きを上回るが、通常型はかつての人間の姿をまだ保っているし、その動きは緩慢だ。ちょっとした段差を乗り越えるにも苦労しているし、屈んだり立ったりする時の動きは見ていて思わず手助けしたくなるからなぁ。

 食料源の確保は通常型の仕事らしいから、獲物の大きさによって体が進化しているのだろう。

 とはいえ、このまま動きが緩慢であるとは思えないから、早めに駆逐していきたいところだ。


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