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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-768 分隊狙撃手をもう1人


 越境したゾンビについては、年内は爆撃で対応し来年早々に陸上部隊を派遣するとのことで統合作戦本部での会合は合意出来たらしい。

 爆撃は空軍が行うとのことだから、当座は俺達が関わることもないだろう。

 しばらく出番が無かった空軍だから、越境してきたゾンビと国境近くに集まったゾンビをたっぷりと叩いてくれるだろう。それにゾンビを誘導している連中も、ついでに倒してくれそうだ。


「とりあえず、対応が遅れたという事にはならないはずよ。ダラスから直接国境へと行きたいけど、車両の整備と補給は必要でしょうね。年内にヒューストンへ到着しても、国境の向かうのは早くて3月になりそうだわ」


 2か月ほどの休暇が貰えそうだな。

 山小屋に帰って子供達と遊べそうだ。それに生まれてから半年近くになるであろう2人目の子供を見たいからね。


「やはりマリアンさんは運河を作るつもりなのでしょうか?」


 俺の言葉に、飲んでいたコーヒーカップをテーブルに戻して、リンダさんにテーブルに地図を広げて貰っている。


「出来ればリオグランデ川から荒地に国境線が変わるエルパソと、太平洋のサンディエゴまで運河を繋げたいところね。途中の都市や農地から川の水を汲み上げることが無くなったから、前よりも川の水量は増していると思うわ。でも例え運河の横幅が5m程度であっても、総延長が馬鹿にならないのよねぇ。標高差もあるだろうし、途中にいくつか堰を作って流量を制御すれば深さ2mほどなら何とかなりそうに思えるの。帰ったなら工兵部隊の指揮官に尋ねてみるつもりよ」


 乾燥地帯を横切る形だからなぁ。途中の蒸発量だって馬鹿にはならないだろう。だけど、サンディエゴ近くは海水で運河を満たしても問題ないだろうし、流れなくとも水深を保ってくれるならゾンビを止めることは出来るはずだ。

 やはり戦力不足を補うには運河を作ることになりそうだな。


 そんな話をしながらドーバー空港からヒューストンに向かう。

 ヒューストンでブラックホークに乗り換え、ダラス北部の陸上艦隊本部に向かい。マリアンさん達がヘリを降りたいところで俺とシグさんはテンプル市の西にある湖上の台船へと移動した。

 ほとんど1日移動に費やした感じだ。出発したのが10時前だったけど、台船に到着した時には夕焼け空だったからね。

 直ぐに夕食になったので、食後に士官達に集まって貰う事にした。

 越境ゾンビの対策の方法を伝えなくてはならないし、サン・アントニオ市から北上して来たゾンビの集団の顛末も確認したいからね。

 少なめにして貰った夕食を頂いて、指揮所に戻る。

 やはりここが一番安心できるな。軍人らしくない俺には堅苦しい場所は苦手なんだよなぁ。


「……以上が、メキシコから越境してきたゾンビに対する対応になる。我等は今年中にヒューストンへの道を確保し、来年の春にはメキシコ国境のゾンビ対応をすることになる」


 集まってきた士官達に、シグさんが統合作戦本部で決めた今後の対応について説明してくれた。

 直ぐに色々と質問が飛んで来たけど、ヒューストンに到着したなら、車両の整備で長期の休暇が取れると聞いて皆が笑みを浮かべている。

 

「それにしても陸上艦隊を5つ作るとは思い切りましたね。メキシコ国境の目途が付き次第、今度はフロリダですか!」


「生憎と我らの部隊は、第2陸上艦隊との間で半年毎に移動となる。ウイル大尉達もそれまでにはデンバーを手に入れられるだろうからな」


 後3年で何とかなるような都市ではないように思えるけど、建築物を徹底的に破壊するなら可能なのかもしれない。

 あの大都市を全て破壊するのはもったいないように思えるけど、俺達の安全が最優先だからなぁ。


「それで、あの先端が丸く凹んだドラム缶は?」


 シグさんの言葉に、キョトンとしていた士官達だが、やがてその意味を理解したのだろう。ジュリーさんがポン! と手を打って教えてくれた。


 やはり推測通りショットガンだったらしい。ゾンビ自身も爆散したとのことだが、前方のゾンビをかなりなぎ倒したとのことだ。


「榴散弾のように、30度程の範囲にいたゾンビを倒していたよ。射程は50m以上100m未満に見えた」


 ショットガンゾンビ数体が爆散してゾンビの集団に穴を開けたところに、ジバクゾンビが突入したとのことだ。

 数体が突入したなら、かなりの損害を与えたに違いない。


「結局はダラス側のゾンビに葬られました。勝者はダラス側ですが20万体を越える被害は確実でしょう。一気にダラスのゾンビが半減したと思われます」


 オルバンさんの言葉は本隊と同じ推測に違いない。今頃はマリアンさんがサンディ達にその真偽の確認をしているだろう。


「そうなると、ここに長くいることはなさそうだ。さすがにサン・アントニオ市から次の集団が来るとは思えないんだが」


「そうでもないんです。35号線の南80kmに次のゾンビの集団が北上中です。早ければ明日の夜にはやってくるでしょう。数は10万体とのことです」


 前回の集団でほぼサン・アントニオ市のゾンビが半減以下になっていると思うんだよなぁ。その状態で10万体が北上ってことか!


「さらにもう1回北上してきたなら、サン・アントニオ市にゾンビがいなくなるかもしれんな」


「それほど厄介な連中が北上してきたという事なんでしょう。ペガサス型ドローンが残っているなら至急サン・アントニオに送るべきかもしれません」


「そうだな。敵を知らねば対策も出来ん。私の方で本部に上申しておこう」


 これで本部の戻れると思っていたんだが、もうしばらくはここでゾンビを迎撃することになりそうだ。

 俺達のいない間に町の砲爆撃を行っていたらしいから、35号線沿いの建物はほとんど瓦礫もしくは焼失したらしい。

 町の奥まで破壊するのは、後の部隊が行うのだろう。ウイル小父さん達かもしれないけど、それは陸上艦隊の指揮官達の役割分担を待つしかなさそうだ。


 翌日は指揮所にやって来たジュリーさんに小突かれて目が覚めた。

 寝ぼけ眼で起きた俺に、笑みを浮かべてコーヒーカップを渡してくれたんだけど、一口飲んだら首が横に動くほど苦かった。

 ジト目でジュリーさんを睨んだら、今にも吹き出しそうな顔で女性兵士達に顔を向けて頷いているんだよなぁ。

 ワザとだな。全く俺で遊ばないで欲しいところだ。

 指揮所の外に設えたテラスに出て、とりあえずはだいぶ上った太陽に頭を下げる。

 そのまま食堂に向かうと、誰もいないんだよね。

 カウンター奥にいた小母さん達が、俺に気付いて急いで朝食を盛りつけたトレイを渡してくれた。

 1人だけの朝食を頂き、カウンター越しに小母さんにお礼を言いながらトレイを返す。

 時計を見たら10時過ぎだったからなぁ。既に兵士達は今日の任務を遂行しているに違いない。

 指揮所に戻ると、シグさんがテーブルで一服していた。

 テーブル越しのいつもの席に座ってタバコを取り出し火を点ける。


「全く……。レディ達から聞いてはいたが、起こさないと一日中寝ているというのは本当だったな」


「起きようと思っているんですが……。中々起きられないんですよねぇ。目覚まし時計は用意しているんですけど昨夜はスイッチを入れませんでした」


 朝からお小言が始まるかと思っていたんだが、シグさんの次の言葉は違っていた。

 本部と色々と確認したらしく、その状況を教えてくれた。

 サン・アントニオ市へペガサス型ドローンを設置するのはペンデルトンで行ってくれるとのことだ。観測情報はペンデルトンのサーバーにある俺のファイルボックスに毎日ファイルを追加してくれるらしい。

 北上してくるゾンビについてはこれまで通りの対応で良いとの事だから、砲撃すれば十分だな。

 ショットガンゾンビについては、本隊指揮所から統合作戦本部に画像を添えて報告したとのことだった。


「サミーにはサン・アントニオの状況をしっかりと見て欲しいとマリアン殿の依頼が来ているぞ」


「なぜに都市から逃げ出す事態に至ったのか……。それが知りたいのでしょう。ダラスからヒューストンへの動線を確保しても、場合によっては西から動線を切断されないとも限りませんからね。越境してきたゾンビが極めて強力に進化したのか、それとも全く異なる方向に進化したのか……。先ずはそれを確認しないといけません」


 戦士型ゾンビを簡単に倒せるほどに進化したとは思えないんだよなぁ。越境したとしても数十万体には届かないはずだが、結果的には攻撃を受けた都市から数十万体を越えるゾンビが逃げ出している状況だ。

 ゾンビが急に巨大化するとも思えないから、やはり戦い方がこれまで遭遇したゾンビとは異なるという事になるのかもしれないな。

 ゾンビは体内で化学合成が出来るまでに進化しているからね。毒ガス兵器を作り出した可能性も否定できないんだよなぁ。


「今夜の砲爆撃はオルバンさん達に指揮して貰いましょう。俺達はサン・アントニオに集中することにします」


「了解だ。オルバンなら安心できる。それで、改めて本部に確認することは無いのか?」


「今のところは無いですね。サン・アントニオの衛星画像それと広域偵察ドローンの撮影画像をリアルタイムで見られるようにしておいてくれませんか?」


 俺の言葉に頷くと、タバコを灰皿で消してシグさんが立ちあがった。

 調整に向かうのかな?

 先ずはジュリーさんのところに向かったからね。

 さて、サン・アントニオの画像を眺める前に、先ずはショットガンゾンビの映像を見てみよう。

 ジュリーさんが本隊指揮所で捉えたドローンの映像をファイルに納めておいてくれたからね。

 受け取ったUSBをノートパソコンに差し込んで、40インチモニターで画像を再生する。

 ショットガンゾンビが自爆すると同時に前方のゾンビが倒れている。なるほど射程が50m以上というだけあって、かなりのゾンビを倒しているな。倒れたゾンビを乗り越えて自爆ゾンビが進んでいく。あの脚だからねぇ。かなりの速度で前方に突っ込んで行って自爆した。

 これを俺達に向ってやられたなら、かなりの脅威になるだろう。

 ショットガンゾンビの射程が短いのが救いだけど、前方から銃弾を発射しても7.62mmではあまり効果は無いだろう。50口径のバレット辺りで狙撃するのが一番だろう。

 マリアンさんの事だから、複数の狙撃チームを作るに違いない。俺達の部隊も作っておいた方が良いんだろうが、分隊狙撃手はドローンチームを率いているジュリーさんだからなぁ。もう1人分隊狙撃手をオルバンさんに育てて貰った方が良さそうだ。


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