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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
766/808

H-766 来年には機動艦隊が3つ出来る


 何の連絡もないから、のんびりと1日を過ごした感じだ。

 食堂で夕食を取っていると、トレイを持ったシグさんがテーブル越しの席に着いた。

 シグさんのトレイを見ると、やはり俺より料理の量が多いんだよなぁ。それだけ兵士を鍛えていたのだろう。

 食事が終わりコーヒーを飲んでいると、同じくコーヒーを飲んでいたシグさんが俺に顔を向けて口を開いた。


「明日は1000時に統合作戦本部に向かうぞ。将官達の会議は終わったそうだ。マリアン殿と同席で少し内密な話をしたいらしい」


「となると、越境してきたゾンビの件、もしくは陸上艦隊の再編辺りでしょうか?」


「私は後者だと思う。サミーのアイデアを欲しがるかもしれんぞ。腹案を少し纏めておいた方が良いだろうな」


 越境したゾンビは、アメリカ側のゾンビにしばらく相手をして貰うということかな? 

 サン・アントニオまで進出したゾンビの方は少し問題ありそうだけど、爆撃で数を減らしておけば十分だろうし、ラレド市経由でメキシコからゾンビが次々と流れ込んで来ない限り大きな問題にはならないだろう。

 とはいっても監視は必要だろうな。


「今日、状況を少し纏めたところです。陸上艦隊の編成については補強したいところを纏めておきます」


「マリアン殿ことだからなぁ。たぶん自説を認めさせたに違いない。だが、ヒューストンへの道の確保も大事に思える」


「それは確実に行う必要がありますからね。国境の方はそれが終わってからになると思いますよ。それに戦力の増強が直ぐに行えるとは思えません」


「それが一番の問題だろうな」と言いながらシグさんが溜息をもらす。


 さすがに新兵訓練を終えて直ぐの兵士を最前線に投入するのは考えものだ。第2線部隊の編成を行い、ゾンビ戦の経験を積んだ兵士を各戦区の部隊に分配するのだろう。各作戦を遂行している部隊だって戦力上昇を願い出ているに違いないからなぁ。どれほどの戦力上昇になるのかと考えてしまう。


「あの性格ですからねぇ。でも軍内部に疎んじられるようでは、その内に名誉職を得て後方に回されかねません」


「かつての軍ではそうだろうな。だが、現在はそうではない。マリアン殿の成果は皆が認めるところだ」


『目的の為には手段を択ばない』という話はよくあるけど、マリアンさんの場合は『手段の為に目的を選ぶ』場合もあるからなぁ。現在の陸上艦隊はその典型だろう。

 となると、やはりしばらくは陸上での勤務を続ける事になるのかな?

 本当は海軍の将官なんだけどねぇ……。

 コーヒーを飲みええたところで部屋に戻る。しっかりとコーヒーをキープしたから。部屋でゆっくりと昨日纏めた資料を見直して過ごそう。

                 ・

                 ・

                 ・

 翌日。朝食を終えた俺達はエントランスで迎えの車を待つ。

 一服が終わらない内に、女性兵士がエントランスに現れた。制服は海軍だな。白い夏服はこの宿舎ではかなり浮いた存在だ。

 カウンターの女性兵士に尋ねて、俺達を確認した兵士が歩いてきた。

 綺麗な敬礼をすると、「サミー大尉をお迎えに参りました」と俺達に告げる。

 俺達も立って答礼をすると、「ご苦労!」とシグさんが答えてくれた。

 外に出て、黒のBMWに乗り込むと直ぐに発進する。まだ予定時刻の30分前なんだけどなぁ。早めに会議を始めるのかな?


 統合作戦本部に到着すると、女性兵士が俺達を小会議室へと案内してくれた。

 杓子定規なノックと敬礼……。これは軍隊では仕方のないことなんだろう。

 俺達が会議室に入ると、女性兵士が役目を終えたということで部屋を後にする。

 会議室のテーブルに座っていたのは、マリアンさんと副官のリンダさん。それに本部長と始めて見る将官達だった。制服は陸軍だな。位は少将だ。


「先ずは座ってくれ。どうにか纏まったが、予備兵力が全くなくなってしまう状況だ」


「それは民兵の半分を正規兵とすることで調整出来たでしょう? その内の3割を予備戦力にするなら問題は無いと思うけど?」


「予備兵力となる兵士の訓練がロングビーチのゾンビを駆逐することだからなぁ。さすがに犠牲者をゼロにすることは出来んだろう」


 まったくの新兵なら問題だろうけど、第2線で戦ってきた兵士と、第1戦から抜擢した古参兵士で構成された部隊らしい。

 2個中隊とのことだけど、ドローン部隊だけで2個小隊とはねぇ……。その多くが20歳ほどの兵士らしいけど、ゲームで鍛えた腕があるならドローンを使ってゾンビを狩ることは容易に違いない。そんなドローン部隊に10人以上の日本人がいるとのことだ。

 隠れているゾンビをしっかりと見漬けてくれるんじゃないかな。


「さて、サミー君が来てくれたところで本来の話をしよう。嘆いていても兵士が増えることはないからな」


 本部長の言葉に、本部長の隣にいた中佐殿が大型のモニターに映像を映しながら、説明を始めた。

 何の話かと思って聞き始めたんだけど、やはり陸上艦隊の戦力増強についてだった。

 しかも陸上艦隊が3つということになっている。


「第1艦隊の指揮官はマリアン少将。第1艦隊の目的はアメリカ南部の国境を越境するゾンビの対処です。第2艦隊の指揮官はウイル少佐。ロッキー山脈沿いの兵站を確保すると共にゾンビの駆逐を行って貰います。第3艦隊はリー中佐。アパラチア山脈西域の兵站確保を行うと共に、ゾンビの駆逐を行って貰います。第2、第3艦隊は騎兵隊の兵站を担う事も重要です。艦隊設立と同時に騎兵隊の戦力を増強し、5つの騎兵隊を作ります。第1、第2、第3騎兵隊は大平原に、第4、第5騎兵隊はミシシッピー河東岸に展開する予定です」


 いよいよ本格的に内陸部のゾンビを駆逐していくことになるのか!

 将来的には更に陸上艦隊が増えそうだな。


「サミー君は引き続きマリアン少将の元で活動して欲しい。とはいってもそれほど長くではないぞ。マリアン少将も何時までも陸上で活動して貰うにはいかんだろうからなぁ」


 マリアンさんの人事異動に伴って、俺も移動することになるということかな?

 さすがに艦隊勤務は出来そうもないから、ウイル小父さんに部隊に拾って貰おう。


「これが来年以降の部隊編成になります。その時期はマリアン少将の作戦完了がネックになります」


「ヒューストンへの道を確保することで良いのよね? さすがに鉄道路まで確保することになると来年で終わるかどうか難しいわよ」


「道路だけで十分だ。鉄道路の確保はデンバー部隊に任せよう。ペンデルトンも後押しをしているからな。現在はカリフォルニアからデンバーそしてカンザスまで装甲列車が走れるまでになっている。アメリカの終焉を憂いていた時期が夢のように思えるよ」


 かつては鉄道の国だったけど、自動車王国に変わってしまっていたからなぁ。大規模な物資輸送路として鉄道が温存されていただけでもありがたい話だ。

 ということは、道路網を確保するだけでも十分に部隊運用が出来るということになりそうだ。もっとも大部隊となれば輸送部隊も別途用意しないといけないだろうが、陸上艦隊は多数の車両で構成された部隊だからね。当然輸送トラックの数も半端じゃない。


「マリアン殿の陸上艦隊への増員部隊は1個飛行中隊に2個機動部隊。整備部隊が1個小隊に工兵が1個中隊となります」


「工兵は、銃を撃てる連中だ。さすがに機動部隊を2個中隊出すのは無理がある」


 中佐の言葉に本部長が後を続ける。

 そんな2人をマリアンさんが笑みを浮かべて頷いているんだよなぁ。やはり3個中隊を要求したみたいだな。


「重機の用意に問題は無いんでしょう?」


「何とか用意しよう。重機はそれほど問題無いのだが、運搬手段に難がある。エルパソ空港を手に入れてくれれば問題なく輸送できるぞ」


「使うのは、エルパソから西だからそれで良いわよ。工兵部隊に航空部隊もその時で良いわね。でも機動部隊は私達が西に移動する前に渡して頂戴」


「了解だ。それにしても……。運河を作るつもりか?」


 工兵部隊を1個中隊と言ったなら、200人近い兵士になるんだよなぁ。重機や基地建築に長けた連中ばかりだろうから、重機の数次第では運河を作るぐらいは出来そうだな。

 まさか本当に作るんだろうか? メキシコ国境は降水量が少ない荒地ばかりだからねぇ。運河を作ってもその水源が無いんだよなぁ。


「私は常識的な人間よ。そこまでやるつもりはないけど、それが一番確実よねぇ」


「リオ・グランデ川の水量は、農業用水を途中で汲み上げないからだいぶ増しているようだ。だが西に向かう運河を満たす水量は確保できんだろうな」


 そうかな? 流れる水を考えると無理があるけど、細長い池を作ると考えるなら水量不足を解消できそうに思えるんだけどなぁ。それにリオ・グランデ川の途中にある水門で下流に流れる量を制限できるなら、なおさら西に延びる池の長さを増せるだろう。

 たとえ10km程度でも、池を越えるゾンビがいなければそれだけ監視距離を短く出来る。エルパソから西まで国境の長さは1500kmほどあるけど、エルパソから西、サンディエゴから東に、可能な限り運河を伸ばしていくことはマリアンさんの脳裏では既に決定しているんだろうな。


「それと、国境に面したメキシコ都市への爆撃は大統領の承認後すぐに実施するぞ。少しはゾンビの数を減らせるだろうが、爆撃は各都市ともに1度限りだ」


 メキシコ政府は既に存在していないだろうし、生存者もいないようだ。

 とはいえ、万が一ということもあるだろうということで、爆撃前日に都市への呼びかけをヘリで行うとのことだった。

 自分達とは異なる国だからねぇ。それぐらいの事前措置はして置かないといけないということなんだろうな。


「それで、サミー君からの指摘についてなんだが……」


 やはりあの一団の中から、いくつかの部隊が北に移動して何やら活動を継続しているとのことだった。

 広域偵察ドローンと軍事衛星の監視結果だけだからなぁ。活動内容までは分からないとのことだった。

 移動は自動車を使っているらしいから、それほど大掛かりな事は出来ないようだが、ジャックを仕掛けるぐらいは可能だろう。それにゾンビの移動速度は人間が歩くよりも遅いから車を使っての誘導もやっているんじゃないかな。


「さすがに看過は出来ん。今夜、ゾンビの越境を企てている部隊を全て排除するぞ」


 確認できた部隊に、それぞれトマホークを3発ずつ撃ち込むそうだ。その内の1発はクラスター爆弾とのことだから、少し牛刀過ぎる気もするんだよなぁ。


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