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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-755 新たな群れがやってきた


 ゾンビの大集団がダラスに向かって北上していく。

 台船に搭載したM102榴弾砲4門の射程から遠ざかって行ったから、俺達の役目は一応終了した。

 シグさんはあまりゾンビの数を削減できなかったことを残念がっているけど、4門ではねぇ……。俺には十分すぎる削減数だと思うんだけどなぁ。

 翌日の昼過ぎにダラスの南を監視する偵察ゾンビが接近する大群を発見したようで、ダラス市街地の南部にゾンビが終結を始めたようだ。

 このままマリアンさん達は傍観するのかと思っていたら、やはりヒューストンから飛んできたA-10攻撃機とコイン機が北上するゾンビの群れにナパーム弾を投下し、銃撃を加えて去って行った。

 爆弾より遥かにナパーム弾の方がゾンビを倒せるからなぁ。市街地では建物を破壊しないと効果があまりないんだが、州間高速道路の上だからね。十数発のナパーム弾が群れの中心部に着弾したから、統率型ゾンビもかなり被害を受けたに違いない。

 広域偵察ドローンがゾンビの群れの状況を俺達に見せてくれているんだが、1時間も経たない内に再び集団が形成されたようだ。

 そんな集団の直上をドローンが速度を落としてゾンビの姿を俺達に見せてくれる。

 突入寸前のゾンビの群れは3段に構成されていた。

 やはり戦闘集団を作るのは通常型が主体だな。2つ目が戦士型と自爆型、最後が混成集団のようだ。


「統率型は後方という事かな。あのドラム缶ゾンビが先頭集団の中央にいるようだ。自爆型も同じ数がいるように見える。自爆型ゾンビの位置がドラム缶ゾンビの後方という事は、サミーの推測が当たっているかもしれんな」


「両者の争いがダラスの南部ですからねぇ。もう少し市街地に入ってくれるなら本隊の大型ドローンで詳細を見ることが出来るんでしょうけど……」


 広域偵察ドローンは飛行機型だからなぁ。あまり低速で飛ぶと失速してしまうんだよね。

 戦場の直上を旋回しながら状況を見せてくれるのだろう。


「リッツ中佐にサミーの見解を伝えてあるし、スナイパードローンを改造して例の短距離ロケット弾を取り付けたそうだ。戦闘が始まる前に試すと思うのだが……」


 シグさんもやはり戦場が遠いと感じているのだろう。

 こればっかりはどうしようもないんだよねぇ。

 モニターを見ながら、コーヒーを飲んでいると、ジュリーさんが通信機の着信に気付いてしばらく交信していた。

 交信を終えると、俺達に顔を向ける。


「あのロケット弾を使ってドラム缶ゾンビを攻撃するみたい。距離が遠いからヘリに操縦者を乗せてドローンはキャビンから発進させると言ってた。回収はドローン上部に設けたリングをヘリのホイスト先端のフックで引っ掛けると言ってたんだけど……」


 その話を聞いて、思わずシグさんと顔を見合わせてしまった。

 シグさんが首を傾げているぐらいだから、回収は難しいのかもしれないな。でもヘリで接近するなら、スナイパードローンの改造型でドラム缶ゾンビに短距離ロケット弾を撃ち込めるに違いない。リッツさんにしては思い切った行動に出るなぁ。マリアンさんに感化されたかな?


「我等で試したかったが、本隊が行うならその方が良いだろう。一応短距離ロケットは受領しているから、次の大きな群れが来たなら我等も使えるぞ」


「自爆型にも使えますからね。とはいえ弾数が3発ですから……」


「それは贅沢な望みかもしれんぞ。繰り返し何度も放てば良いだけだ」


 まぁ、そうなんだけどねぇ。でも5発ぐらいは欲しいよなぁ。 


 再び俺達の所に通信が入ってきた。

 どうやらドラム缶ゾンビを短距離ロケットで倒す準備が完了したらしい。

 既にヘリは飛び立ったとのことだから、直ぐに指定された通信チャンネルに合わせて、モニターに映像を写し出す。


「スナイパーユニットを改造しているとのことだから、映像は殆ど変わらんな」


「あのターゲットマークが赤になれば発射でしたよね。まだ緑ですから、もうしばらく待つことになりそうです」


 既にドローンはヘリを離れて、ドラム缶ゾンビを探している最中のようだ。

 ゆっくりとゾンビの群れの上を飛行しながら、ドラム缶ゾンビを探している。どうやら先行部隊ではなく、後方の部隊にいるドラム缶ゾンビを探しているようだな。

 群れの上空を飛行していたドローンが停止した。

 画像がズームされると、その先にいたのはドラム缶ゾンビだ。

 前方から攻撃するのではなく胴体部分を狙うようだな。ゆっくりとドローンがドラム缶ゾンビの側面に回り込みながら近づいて行く。


 ドラム缶の真ん中にターゲットマークが示されたが、まだ緑色だ。

 更にゆっくりと近付いて行くと、ターゲットマークが突然赤に変わった。

 その瞬間を待っていたかのようにロケット弾の噴煙がドラム缶ゾンビに伸びて行き、画面いっぱいに炸裂炎が広がる。


「誘爆したようだな……」


「そのようです。あれほどロケット弾の炸裂炎は広がりませんからね」


 狙ったのはドラム缶の真ん中だ。そうなるとあのドラム缶の半分は粗悪なTNTが詰まっているということになりそうだな。


「本隊のリッツさんが、サミーの推測を欲しがってるよ!」


「それなら、あのドラム缶の半分に炸薬があるようだと伝えてくれないかな。俺達の要望として、引き続きドラム缶ゾンビに短距離ロケット弾を放つなら、先端から3分の1程の場所と先端部にある凹み部分を狙って欲しいと伝えてくれ」


「了解!」と返事をしたジュリーさんが直ぐにヘッドセットで本隊と通信を始めた。

 タバコに火を点けようとした俺に、シグさんが顔を向ける。


「炸薬の量か。それとあの凹み部分の後部に炸薬が無いことをさらに確認するつもりだな?」


「そうです。ゾンビ同士の戦いを見れば直ぐに分かるんでしょうけど、威力の推測には炸薬量の推測が必要でしょう」


 その辺りに抜かりは無いと思うけど、一応要望しておこう。

 後はリッツさん達に任せれば十分だ。

 シグさんとジュリーさん達の統率狩りや、エミーさん達の砲撃の成果を眺めながら、オリーさん達へのメールを作る。

 だいぶ状況が見えてきたからなぁ。この辺りで北米大陸のゾンビの動向を広い範囲で確認することは、オペレーション・ノーススターを効率的に進める上でも必要に思える。

 オリーさん達生物学研究所でその辺りを取りまとめて漏れるなら、統合作戦本部も助かるんじゃないかな。


 夕食後は、久しぶりに釣竿を握る。

 釣りをするとシグさんに伝えたら渋い表情をされたけど、最後には頷いてくれたからね。

 エディ達と一緒に、ドローン離着陸場のある台船からルアーを使って釣りを始めた。


「夜はナマズが多いんだ。だが、昼よりも大物が出るぞ」


「3人で差を出すのも久しぶりだね。今年の夏は休暇があるのかな?」


「マリアンさん達が考えてくれてはいると思うんだけどなぁ。さすがに冬まで休暇が無いとは思えないよ」


 久しぶりに3人だけだから、釣りをするより雑談が多いんだよね。

 どうにか30cm程のブラックバスを各自が1匹ずつ釣り上げたところで、キャンピング用のテーブルセットに腰を下ろして、ワインを飲み始めた。

 組み立て式のテーブルとベンチはデンバーのキャンピング用品店から貰って来たのかな?

 あちこちの店を皆が物色しているからなぁ。既に店主はこの世にはいないんだろうけどね。


「海兵隊時代と違って、この頃は肉が出るようになったね。牧場が沢山出来たのかもしれないよ」


「俺達の牧場は、どうなっているんだ?」


 ニックの言葉にエディが俺に向かって問いかけてくる。


「俺も早く場所位は教えて欲しいんだけどなぁ。でもまだ連絡が来ないんだ。さすがに大統領の内示だから、無かったことにすることは無いと思うんだけど……」


「それなら安心できるな。だが、全く話が無いというのも考えてしまう。かといって俺達で牧場を探すとなると難しいんだよなぁ」


 エディはそろそろ軍を抜けようなんて考えているのかもしれないけど、マリアンさん達がそれを許すとは思えない。

 少なくともノーススター作戦が終了するまでは無理だろう。少なくとも数年先になるだろうから、アメリカ軍の再編も終了しているに違いない。

 さすがに『後はよろしく!』と軍を去ることも出来ないだろうけど、民兵団に加わることでレディさん達が納得してくれるかもしれない。

 次の休暇で、その辺りを遠回し聞いてみようかな。

 さもないと50歳近くまで軍に所属することになりそうだ。

 そういえば、ウイル小父さんが40歳前に海兵隊から除隊している。高齢者が前線にいつまでもいられるとは思えないからなぁ。これはウイル小父さんにも聞いてみよう。


「だけど、いまだに牧場なのか農場なのか決まってないんだよね。七海さん達の意見はまだまとまっていないのかい?」


「今頃は山小屋で、その話をしているんじゃないかな。ライルお爺さん達がいるから、相談相手もいるからね」


「俺達で決めたかったけど、そうすると怒り出すからなぁ。父さんが『嫁さんには逆らわずに、その範囲で自分の好きなことをするんだな』なんて言ってたんだよなぁ。


 ウイル小父さん達も夫婦仲が良いからね。その秘訣は今のニックの言葉に違いない。

 となると、七海さん達の出した結果を聞いて俺達の好きなことをすれば良いという事になる。牧場なら何を育てるかを俺達で考えれば良いだろう。

 この頃牛肉は多くなってきたけど、鶏肉は案外少ないんだよなぁ。七面鳥を飼育するような牧場は少ないに違いない。狙いは家禽牧場かもしれないな。


 突然指揮所の方から足音が近づいて来た。大声で俺を呼んでいるのはシグさんだな。

 片手を上げて、ここにいることを知らせると、足早に近づいてくる。


「サミー、次の群れがやってくるぞ! 規模は前回より増えているそうだ」


「なんですって!」


 シグさんの言葉に大声を上げてベンチから腰を上げる。

 そのまま指揮所に向かって走り出した。

 たぶんシグさんがエディ達に簡単な状況説明をしているだろうけど、先ずはどんな群れかを確認せねばなるまい。

 それにしても、いくら何でも早すぎる。

 前回の群れの規模が10万体だ。それよりも規模が大きいとなると、全軍でやってきている可能性だってあるんじゃないか。



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