表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
750/753

H-750 もっと大きな枢要区域があるはずだ


 81mm迫撃砲弾が至近距離で炸裂しても、自爆ゾンビを破壊することは出来なかった。砲弾の炸裂で数mも転がっていたんだけどねぇ……。

 それを見たシグさんが呆れた表情をして溜息を吐いていたんだよなぁ。


「やはりハイドラロケット弾を直撃させるか、それとも50口径の炸裂焼夷弾を撃ち込むしかなさそうですね。頭部狙撃はさすがにドローンでは難しそうです。分隊狙撃手がバレットを使うなら何とかなりそうですけど」


「前線で遭遇したなら、それしかないだろうな。とりあえず今夜の状況を取りまとめてリッツ中佐に報告しておくぞ。我等の任務は別にあるからな。自爆ゾンビにいつまでも構ってはおられん」


 とは言ってもねぇ……。ジュリーさん達が残念そうな顔をして互いに肩を叩いているのを見ると、次に遭遇したなら再び頭部狙撃にチャレンジするんだろうな。


「ジュリーさん。発信機の付いた魚はやはり警察署の中に入ったんでしょうか?」


「間違いなく入ったよ。中に入ってしばらくは信号が確認できたんだけど、今は信号が途絶えてる。考えられるのは発信機が破壊されたか、それとも信号が建物の構造物で減衰してしまったかのどちらかだと思うけど」


 しっかりと俺達に体を向けて応えてくれた。

 シグさんに顔を向けると、俺に頷いてジュリーさんに顔を向ける。


「ハンタードローンで爆撃してくれ。4発同時で構わんぞ。落としたなら建物から脱出するゾンビの確認を頼む。少し高度を落として集音装置も使ってくれ」


「了解。準備は出来ているみたいだから、直ぐに向かわせるね」


 さて、どんなことになるんだろう。

 さすがに慌てて脱出することは無いと思うけど、それでも建物内にいるゾンビの種類は気になるところだ。ドローンの集音装置から得られた情報をスペクトルアナライザーで解析できるようテーブルにノートパソコンを開き、ヘッドホンを付けて準備を整える。

 タバコに火を点けてゆっくりと味わっていると、モニターに警察署が映し出された。

 夜間だからスターライトスコープによるモノトーンの映像だ。

 これは諦めるしかないんだが、迫撃砲弾の炸裂炎で一時的に画面が真っ白になってしまうのは何とかしたいところなんだけどねぇ……。


「準備完了! いつでも落とせるよ」


「ジュリーに任せるぞ。弾種は?」


「2発が炸裂焼夷弾。残り2発が炸裂弾だけど0.5秒の遅延信管付きだよ」


 全て炸裂焼夷弾では無かったんだな。遅延炸裂弾という事は、建物の屋根を突き破った後での炸裂という事になる。それなら建物内部を破壊することも出来るだろう。


 弾種の選定に感心していると、いきなりモニターが真っ白になった。

 さて、結果は……。

 ゆっくりと画面が復旧して行くけど、まだ白い部分がかなりあるんだよなぁ。建物内部で火災が発生したという事なのだろう。

 スターライトスコープの感度を落としたのだろう。破壊された屋根から建物内の一部が見えてきた。めらめらと燃える炎が白く映っている。

 

「夜だからなぁ。あの炎の明りで建物内を通常カメラで捕らえられないか?」


 シグさんの呟きをジュリーさんが聞いたのだろう。直ぐに画面が切り替わった。

 今度はカラーの映像だ。なるほど火災の明りで建物内部の様子が良く分かる。結構な数のゾンビがいるようだが、蠢いているから数は全く分からない。少なくとも100体は超えていそうだ。


「戦士型が多いな。しかも何種類かが確認できるぞ。後でゆっくりと眺めるとしよう。それで集音装置から情報は得られているのか?」


「大騒ぎですね。これではゾンビの種を確認できそうもありません。ほとんどホワイトノイズの世界ですが、低周波を出すゾンビがいるようです。かなり低域にも音源がありますから」


 枢要区域であることは間違いなさそうだ。だが建物自体はそれほど大きなものではない。コクーンがあるかどうかまでは分らないな。


「明日も魚を括り付けたジャックを近くに仕掛けて見ましょう。ここ以外にもありそうに思えます」


「ジュリー、そう言う事だ。明日も頼んだぞ。そうだな……、やはり夜間が良いだろう」


「了解。オルバンと調整しておくね。自爆ゾンビを見つけたら、再度頭部狙撃にチャレンジしても良いよね?」


「それはジュリーさんに任せます。今夜の状況をリッツさんに伝えれば、スナイパーユニット改良品が届くと思いますよ。今度はハイドラロケットランチャー付きです」


 俺の言葉にジュリーさんが笑みを浮かべているんだよなぁ。

 案外戦闘狂的なところがあるんだよね。


 ドローンを回収したところで、今夜の作戦は終了になる。

 俺に手を振って指揮所をシグさん達が出て行くのを見届けて、ポットに残ったコーヒーをカップに注ぐと、タバコに火を点ける。

 だいぶ情報を得ることが出来たけど、やはり自爆ゾンビをどうにかしたいところだな。

 ハイドラを撃ち込めばさすがに倒せるだろうけど、そんなことをしたならハイドラが直ぐに枯渇してしまいそうだ。

 50口径の銃弾を何とか打ち込めるようオットーさんに期待するしかないだろうな。

 

 そろそろ横になろうと、ノートパソコンを片付けようとした時だ。

 メールが届いているのに気が付いた。

 通信機を介して軍のネットワークに接続出来ていたのかな?

 メールを開くと、オットーさんからだった。

 直ぐに対応策を考えてくれているらしい。

 50口径ライフルについては時間が掛るとのことだったが、広範囲を調査する4輪駆動型のドローンは1週間ほどで試作品が出来るとのことだった。外惑星探査用の機体設計が流用できるとのことだ。そもそも人が住まないような土地の探索だからなぁ。確かに似たような用向きではある。

 画像が添付されていたから開いて確認すると、4輪と言うより6輪車に見える。仕様書を見ると、通常は4輪で悪路になると普段は設置していない1対の車輪が追加されるとのことだった。かなりの踏破性を持っているという事なのだろう。

 動力は電動だ。車体はドラム缶ほどの大きさだが上部の装甲版のような蓋が左右に開いて、車体と装甲版に装着された太陽光パネルで充電するとのことだ。かなりの蓄電要領を持っているようで、1度フル充電すれば2日程走る続けることが出来るらしいが、移動速度は時速10kmという殻かなり遅く感じるな。もっとも、調査目的だからね。これで十分という事なのだろう。

 観測装置は、通常のカメラに、スターライトスコープそれに赤外線から市街戦にまで感度を持つカメラが設けられている。通常カメラを使えば観測対象物の寸法まで知ることが出来るようだ。集音装置は帯域フィルターにスペクトルアナライザーが付いている。

 マジックハンドが1対に、マジックハンドのように動かせる電動ノコギリが付いている。

 小さなものだから戦闘には使えないだろうな。戦闘に使えるのは、火炎放射器とフクスに付いている短距離ロケット弾が3発だな。

 ゾンビの群れを相手にすることなど出来そうにないが、単体相手に使うならこれで十分という事なのだろう。

 中枢部は惑星探査用の自律電脳という事だから、長期間の活動には十分に思えるな。


 確認を終えたところで、オットーさんに返信メールを送る。

 完成したならペンデルトン基地に送って貰い、ロッキー山脈の不毛の地で状況観測をお願いすることにした。観測結果はペンデルトンで一括管理して貰えば何かあれば俺に報告してくれるだろう。


 メールを送り終えたところで、ベンチで横になる。

 このベンチは前の指揮所のベンチと異なり、座る板の横幅が少し広いんだよね。背もたれも倒すことが出来るから、完全に横にするとシンブルベッドより広くなる。

 椅子と背もたれのマットは少し硬いけど、寝るにはこれで十分だ。ブランケットを半分に折ってその中に潜りこむ。

 目を閉じると直ぐに睡魔が襲ってくる。 今夜は良く眠れそうだ……。


 突然の殺気に跳び起きた。

 殺気に向かって身構えると、ナイフ持ったシグさんが笑っているんだよなぁ。ドローン操縦席にいるジュリーさん達が俺の姿を見て今にも吹き出しそうな表情をしている。

 プププ……と笑い声が漏れているんだから、無理しないで欲しいところだ。涙目になってるぐらいだからね。


「それは止めて欲しいと思っているんですが……」


「これなら、一発で起きるとレディが言っていたからな。特に急用は無いが、何時までも寝ていてもらっては兵士達に示しが付かん」


 そんなことを言っているんだけど、笑みを浮かべてコーヒーの入ったシェラカップを渡してくれた。

 ありがたく受け取って一口飲んでみると、薄くて甘いコーヒーだ。淹れてくれたのはジュリーさんだろう。ジュリーさんに向かって小さく頭を下げる。


「もうすぐ砲撃を始めるぞ。目標は昨晩確認した警察署になる。ジュリーの方も、砲撃後の観測の準備を始めてくれ。自爆ゾンビが出て来たなら、再度銃撃してみよう」


「了解! すでに準備は出来てるよ。観測ドローンは発進したけど、スナイパードローンは自爆ゾンビを確認次第発進させるね」


 俺がいなくとも、しっかり部隊が動いているんだよなぁ。

 早めに引退しても問題ないかもしれない。

 モニター画面を見ながら、朝食のサンドイッチを食べていると突然砲撃が始まった。

 数発発射したところで砲声が止む。

 さて、当たるかな?

 モニターをジッと眺めていると、視界一杯に砲弾の炸裂炎が包まれた。

 高度は上げていたんだろうが、カメラを望遠にしていたからだろう。通常の視野に戻る先ほどまで見えていた警察署がまだ炸裂炎と埃に包まれている。

 何発か命中したに違いない。残りの砲弾も至近弾だろうからなぁ。警察署の形が残っているかと心配になってきた。

 

 ゆっくりと視界が戻ってくる。

 警察署はどうにか形が残っているけど、3発は命中した感じだな。崩れたがれきからゾンビ達が這い出しているのが見える。


「通常型に戦士型……、自爆ゾンビはいないようですね」


「統率型がいるみたい。ハンターユニットを取り付けたドローンを急行させるね!」


 統率型なら見つけ次第倒しておくに限る。

 ジュリーさんに『お願いします』と大声を上げる。


「さて、これでゾンビの枢要区域の1つを潰したことになる。次のジャックはどこに仕掛けるのだ?」


「それなら、この近くが良いですね。枢要区域にしては建物が小さすぎます。もっと大きな枢要区域がどこかにあるはずです」


 うんうんとシグさんが頷いているから、後はシグさんとジュリーさんに任せておけば良いだろう。

 それよりジャックに吊り下げる魚は準備出来ているんだろうか?

 シグさんに尋ねてみたら、大ナマズをニックが釣り上げたらしい。60cmはあるだろうと言っていたんだよなぁ。やはり夜釣りは大藻が出るという事なのだろう。

後で、どこで釣り上げたのか聞いてみよう。

 次は俺の番に思えるんだよねぇ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
相変わらずの目覚まし不用っぷり。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ