2巻発売記念SS②
「どうぞ」
店主は穏やかな笑みを浮かべて、我々の前にウィスキーのソーダ割りを並べる。
淡い色の液面が芸術的にすら見える。
すぐにハムトーストも出来上がった。思ったよりもピクルスも多くて、腹を満たせそうだな。シグルドが話した通り、自家製のハムは巨大だった。トーストをはみ出している。
「じゃあ」
シグルドはご馳走を前に少しだけテンションを上げて、グラスをこちらに向ける。私も同じように返した。
「「乾杯」」
気持ちよくグラスをぶつけて、酒を身体に流し込む。バニラや樽の深みを感じる味わい。そして、ビターを抱えながらも甘い。なるほどな。だから、自家製ハムということか。一口飲んで、笑みがこぼれた。
「こりゃあ、いつものウィスキーと全然違うな」
シグルドもわかるようになったなと思う。こちらが続けた。
「いつも飲んでいるウィスキーは大麦を使ったモルトウィスキーだが、これはコーンとライムギを使ったウィスキーだな」
「へぇ、いつものとはどう違うんだ?」
「ああ、コーンは魔王軍との戦争で食料不足になった時に、その対策のために、別大陸から輸入されたんだ。荒地でも育つ食糧で多くの人間を飢えから救った。そのうち、戦争も終わって、その土地の領主だったブルボン伯爵が余ったコーンで酒を作ったらどうだろうと、ウィスキーを作ったらそれが大当たりして、今に至る。モルトよりも甘さが強かったり、荒々しいところもあるが、強烈な個性を持っている。そして……」
ハムとトーストを豪快にかじり飲みこんだ後に、酒を飲む。
「肉を美味しくしてくれる。実際、高級なレストランでは、このウィスキーは肉専用のソースにも使われているくらいだ」
こちらがそううまそうに説明すると、シグルドも私と同じように豪快にハムにかじりついたあとに、ウィスキーを飲みこむ。
「違いねぇな。それで、このウィスキーの名前は?」
そう言って、笑った。
「ああ、戦争の時に飢餓から多くの者を救い、戦後も酒造りで農民たちを豊かにした領主の名前を取って……ただ、ブルボン伯爵領の領民たちの訛りもあってな、バーボンと呼ばれているよ」
2巻は明日発売です!




