2巻発売記念SS①
仕事終わりにシグルドと待ち合わせをしていた。
「待たせたな」というと、「おう。腹ペコだ。さっそく行こうぜ」と笑う。
今日は仕事終わりに、シグルドと酒を飲む約束をしていた。どうやら、隠れ家的なバーを見つけたらしい。いつもは居酒屋で豪快に飲むのが好きなシグルドだが、ウィスキーにハマったことで、バーにもいくようになったらしい。
「こんなむさくるしい冒険者がバーとか緊張するぜ」
そう自虐的に言われて、つられて笑う。
「ひとりでは心細かったから、私を誘ったのだろう」
初めて行った時は、冒険者仲間数人と行ったようだ。二回目の来訪でもまだ緊張するらしい。シグルドらしいと言えばらしいが。
食堂街から少し外れたところに目的のバーはあった。
数人の常連客が談笑しているが見える。カジュアルな雰囲気だな。カウンターに座って、とりあえず軽い食事を頼むことにした。
「この自家製ハムトーストがうまかったな。これにはピクルスもついてくる。ハムがすごいでかいんだ」
仕事終わりで、お互いに空腹だったので、まずはそれを頼む。食中酒ということで、ウィスキーのソーダ割りを頼むことにした。
私が注文を済ませると、シグルドは不思議そうな顔をした。
「どうして、ウィスキーの銘柄を言わないんだ?」
こちらの注文法に疑問があるようだ。
「銘柄を言わずに、ソーダ割りを頼めば、この店のハウスボトルで作ってくれるからな」
「ハウスボトル?」
「ああ、この店のお決まりのウィスキーのことだよ。店主のお気に入りだったり、店の歴史の象徴的な銘柄が選ばれる。こういう食事にも力を入れている場所なら、食べ合わせも考えてくれる。どんな酒を飲めるのか。そして、その酒にはどんな意図が込められているか。それを考えながら、ゆっくり飲むのも楽しいものさ」
そんなことを話していると、炭酸の心地よい音とバニラような香りを感じる。
楽しい夜になりそうだなと、二人で笑った。




