其之参 襲来
桃太坊から鬼のレベルを聞いて、お爺さんとお婆さんは戦慄した。
「桁外れの強さじゃないか! そいつは本当に鬼じゃったのか!?」
「城から3キロくらい離れてましたので姿は確認してませんけど、水晶には鬼嫁と表示されてましたからね」
「鬼嫁!? 鬼嫁とは、婆さんみたいなのを指して呼ぶ言葉なんじゃがな」
「私は鬼嫁じゃないわ!」
「ああ、そうじゃったな。婆さんは鬼嫁じゃなくて鬼ババアじゃったわい」
笑いながらそう言うお爺さんに、
「シバくぞ、ジジイ!」
とお婆さんは一喝した。
桃太坊はそんな2人のやり取りを見て半笑いを浮かべたが、またすぐ深刻な表情に戻った。
「確かに名前に鬼が付いてるからって、鬼とは限らないですよね?」
「そうじゃよ。儂が倒した鬼とは別次元の強さじゃしな。だが、鬼にしてもそうじゃないにしても、今の儂らのレベルではどうしようもない事だけは確かじゃからな…」
桃太坊は暫く沈黙してから切り出した。
「今度は聖光剣のレベルを測らせて下さい」
「こいつが討伐の鍵を握ってる訳じゃもんな」
お爺さんは外から聖光剣を持って来て、畳の上に置いた。
「聖光剣のレベルを教えておくれ」
と桃太坊が呼び掛けると、レベルが表示された。
『聖光剣 Lv.10』
桃太坊一同は水晶に表示されたレベルを見て、期待とは裏腹の数値に唖然とした。
「まさか、伝説の剣がレベル10だなんて…」
「いや、鞘に収めた状態だったからかも知れん。今度は儂が手に取った状態で測っとくれ」
「分かりました」
お爺さんが鞘から取り出して聖光剣を手にすると、銀色の刃がほのかに黄色く光った。
「これは凄い剣ですね!」
「ああ。その名の通り、聖なる光の剣じゃからな」
『聖光剣 Lv.45』
「レベル45になりました!」
「一気に膨れ上がったな! やっぱり、鞘から取り出した状態で測って正解じゃったな! じゃが、それでもレベルが及ばんとは…」
「爺さんはもう全盛期の力がないから、この剣の潜在能力を引き出せんのじゃないか?」
「聖光剣は言い伝えでは、清い心と健全な精神と肉体を持った者が使えば、この世に敵うものはないと言われてる無敵の剣じゃからな」
「清い心か。今や爺さんは汚れ切ったクソジジイだから、全盛期の力を引き出せんと言う訳か」
「それでも、婆さんよりは清らかじゃと思うけどな」
「私も昔は清らかだったんだけどね」
「見た目だけはな」
「爺さんも、昔はカッコ良かったんだけどね。お互い、見た目に騙されたな」
「そうじゃな。今度は桃太坊君が持ってみるといい。若くて強くて清らかな桃太坊君が持ったら、もっとレベルが上がると思うからな」
「はい。ホントだ、意外と軽いですね」
桃太坊が剣を握ったら眩い光を発して、家の中が黄色い光に包まれた。
「何と言う閃光じゃ! 眩しくて直視出来ん!」
「爺さんの比じゃないね!」
「一体、レベルはいくつまで上がったんじゃ!?」
お爺さん達は水晶に表示されたレベルを見て驚いた。
『聖光剣 Lv.80』
「80じゃと!? こいつはぶったまげたわい! 儂らのレベルは疎か、儂らの年齢よりも上がるとは!」
「鬼のレベルも超えたしな! 流石は太桃王国の王子様だわ!」
因みに、お爺さんの年齢は75歳で、お婆さんは72歳である。
桃太坊はとんでもないレベルアップに信じられない様子でいたが、すぐに興奮状態になった。
「まさか、お爺さんよりも上がるなんて!」
「爺さんと違って、純粋そのものだしね」
「儂が鬼を倒した時も、ここまでは光らんかったからな」
「正に宝の持ち腐れ、豚に真珠だった訳か」
「それでも、鬼を倒せたからな」
桃太坊達が興奮状態に陥ってる中、ドーンと大きな音が外から響いて来た。
「何じゃ、今のデカい音は!?」
お爺さん達が驚いて外に飛び出すと、山頂の木が一面斬り倒されていた。
「山頂の木が! 一体誰がこんな酷い事を!?」
何者かが山頂から、雪崩のような勢いで木を斬り倒しながら駆け降りて来て、大きく放物線を描いて目の前に飛び降りて来た。
「やっと見付けたぞ、我が一族の仇!」
右手に禍々しい黒いオーラを纏った剣を持った、アザミ柄の着物を着た見目麗しい若い女性が、桃太坊達の前に声高に叫んで立ちはだかった。




