其之弍 聖光剣(ホーリーライトソード)
お爺さんと桃太坊は、剣の腕試し勝負をする為に外に出た。
そんな2人の勝負を見物しようと、お婆さんも後に続いた。
格子戸の横に立て掛けてあった古びた鞘に収められてる剣を見て、桃太坊はお爺さんに尋ねた。
「これが聖光剣ですか?」
「いかにも」
「伝説の剣を外に放り出して置くなんて!」
「長年大事に愛用しとるよ」
「爺さんは保管方法は兎も角、昔から気に入った物はずっと使い続けるからね」
「保管方法は兎も角なんですね」
桃太坊は苦笑いを浮かべながらそう呟いた。
お爺さんは、その辺に落ちてる適当な長さの棒状の木の枝を拾って桃太坊に渡した。
「ほれ。こいつで儂と勝負してみよう」
「分かりました。勝負方法はどうしますか?」
「儂から一本取れたら、お前さんの勝ちとしよう」
「分かりました」
「老いぼれても、まだまだ若いもんには負けんからな。婆さん、合図を頼む!」
「よっしゃ!」
2人は3メートルくらいの間合いを取って身構えた。
「始め!」
合図と共に桃太坊は目にも止まらぬ速さで間合いを詰めて、お爺さんの持っていた棒を弾いて右胸の前で寸止めした。
お爺さんもお婆さんも、余りの桃太坊の速さに驚愕して言葉を失った。
そんな2人の感情をよそに、桃太坊は言葉を発した。
「僕の勝ちですね。これで僕の実力が分かってもらえたかと」
「お主、ただの子供ではないな!」
「はい。太桃王族には、代々受け継がれて来た超人的な身体能力がありますからね。なので、武術の師匠の下できちんとトレーニングすれば、戦闘能力も格段に上がる訳です」
「言われてみれば、話には聞いた事がある。それなら、君の家系は相当な手練れだったんじゃ?」
「はい。ですが、突如城を襲撃して来た鬼の力は余りにも強大で、城はあっと言う間に陥落しました。僕は武術の師匠と滝の前でトレーニング中でしたので、王族は僕だけが生き残りました。師匠がここで王族の血を絶やしてはならないと筏に食料を沢山積み込んで、昔伝説の剣士が鬼の群れを全滅させたと言う聖光剣を見付けて、いつか王族の仇を打ってくれと託されて、聖なる力に反応する水晶がこの場所を示したのでここまで来た訳です」
「聖光剣が偉大過ぎて、大分話が飛躍しとるな。鬼は仲間と共に倒した訳じゃから、聖光剣だけの力じゃないしな。武術の師匠は鬼に1人で立ち向かって行ったのか?」
「はい。僕が無事逃げ切るまでの時間稼ぎをすると…」
「そうじゃったのか…。それは辛かったのぅ…」
お爺さんが遣る瀬ない表情でそう呟くと、お婆さんが申し訳なさそうに口を開いた。
「最初に失礼な事言って悪かったよ…。ずっと子供が欲しかったもんだから、遂…」
「いえいえ、気にしないで下さい。お陰で大分気分が楽になったのは確かなので、最初に会った人がお婆さんで本当に良かったです」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。それと、筏を投げ飛ばして悪かったよ」
「お婆さんが投げ飛ばしたんですか!? てっきり、獲物を探してた大きな鳥にでも捕まって、途中で振り落とされたものだとばかり思ってましたけど…」
「まさか、中に人が居るなんて思わなかったからねぇ」
「こう見えても婆さんは武術の達人じゃからな。70を超えた今でも、馬鹿力だけは今も健在なんじゃよ」
「馬鹿力とは何じゃ!」
「そうだったんですね!」
「子供が出来てたら儂らの血を受け継いで最高の戦士になってたじゃろうに、本当に残念じゃよ」
「桃太坊君さえ良ければ、うちでずっと暮らしてもらっても構わないんだからね」
「そうじゃな」
「えっ、そんなご迷惑をお掛けする訳には…」
「いやいや、迷惑どころか大歓迎だからね。お城と比べたら犬小屋みたいな家だから、住み心地は悪いだろうけどさ」
「いえいえ、そんな。剣士と武術の達人にそう言ってもらえるなんてとても光栄です」
「武術の達人と呼ばれてたのは、もう昔の話だよ。ところで、桃太坊君の師匠の名前は何と言うのかね?」
「功夫と言います」
「功夫だって!? 私の一番弟子だった子じゃないか!」
「お婆さんのお弟子さんだったんですね!」
「まさか、桃太坊君の師匠になってたなんて世の中狭いね。功夫も王子様に指導するまでに大きく成長したんだね」
「はい、力だけでなく心も強かったので心底尊敬してましたからね。そんな師匠を指導してた方に出逢えるなんて感極まりないです!」
「昔の話だよ。今じゃ、功夫の方が強いと思うしね」
「参考までに、お2人のレベルを計測しても宜しいでしょうか?」
「レベル?」
「僕が師匠から渡された水晶には、相手のレベルを計測する性能もありますからね」
「それは凄いな!」
「もう全盛期の力はないから、大分パワーダウンしてるけどね」
「レベルは年齢と同じで経験値の積み重ねなので、下がる事はありませんからね」
「そうなのか。儂も知りたいから、宜しく頼むよ」
「数値化されるのも、何だか小っ恥ずかしいけどね」
「別に、婆さんのスリーサイズを測る訳じゃないんじゃから」
「喧しいわ!」
「す、水晶を取りに行って来ます!」
桃太坊は逃げるように飛び出して行って、筏から桃色の水晶玉を持って来た。
水晶玉に「お爺さんとお婆さんのレベルを教えておくれ」と呼び掛けると、2人のレベルが表示された。
『源五郎 Lv.38
麻紗子 Lv.41』
「いくつじゃったか?」
「源五郎さんは…」
「名前まで表示されるのか! 儂の事は老いぼれジジイで構わんよ。こっちは垂れパイババアで」
「王子様に下品な事吹き込むんじゃないよ!」
「お爺さんは38で、お婆さんは41です」
「私の方が上なのかい!」
「流石は武術の達人じゃわい!」
「数字だけ言われても、他に比較対象がないと私らのレベルが強いのかどうかが分からんからな。因みに、桃太坊君はいくつなんだい?」
「僕は32です」
「何じゃと!? 儂と大して変わらんじゃないか!」
「太桃王族は生まれつきレベルが高いですけど、僕は王族と常人の混血なのでまた特別みたいですけどね」
「末恐ろしい子供じゃわい。じゃあ、桃太坊君のご家族は相当高かったんじゃ?」
「母の家系は王族ではなかったので常人並みでしたけど、父が55で祖母が47で、一番高かったのが祖父で62でした」
「かなり高いな! それでも、鬼には敵わなかったのか!?」
「はい。この水晶は半径5キロ以内に居る人のレベルを観測する事が出来るんですけど、鬼は79でしたからね…」




