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【完結】異世界から勇者を召喚したいのにろくでもない奴ばっかり出てくるせいで世界が全く救われない  作者: ミント


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VS.フェンリル<作戦会議③>

「オーディンはワシに、最初から何もかも言い聞かせた上で命令を下した。もっとも、それより先にロキがわざわざ告げ口をしに来たから遅かれ早かれ事情を知ることにはなったと思うが……ヴァルキリーはワシに、『それを決してヒルダに教えないでほしい』と言っておった。まぁ、もともとヒルダを助けるために異世界からの勇者を召喚していたのだから当然といえば当然じゃろう……それについては、素直に申し訳ないと思う。意味などないかもしれんが、言わせてくれ。すまんかった、ヒルダ」


 いつも堂々と、威張り散らしているドワーフさんが私に向かって頭を下げる。その姿が意外だったのかカミラも堕流救世主のみんなも、驚いて目を丸くしていた。変態さんだけはなぜか、「素晴らしい、角度も背筋も全て完璧のお辞儀だ」なんて言っていたけど……そのお辞儀をされた方である私は、ドワーフさんに何と言っていいのかわからず狼狽える。代わりにドワーフさんが頭を上げ、何か考え込むようにじっと目を瞑ると真剣な表情で口を開く。


「ワシは神にも人にも縛られぬ完璧生物パーフェクトクリーチャーじゃ。例え誰が相手であろうと、依頼されたのなら最高のものを作る。じゃがな、ワシがどんなものを作り上げても『それ』をどう使うかまでは指図できんのじゃ。『最高の匠』であるからこそ、ワシは使用者にあれこれ口を出す権利も必要もないと思っている。……それでも、情というものは湧くものじゃ。特にワシの腕を認め、困難に打ち勝ち運命に抗おうとする者であればどうしても応援したくなる。ワシの作品は、腕によりをかけて作った道具たちはそういう人間に使われてこそじゃからな」


 ゆっくり目を見開くと、ドワーフさんは私とカミラ、そして堕流救世主のメンバーたちを順番に見つめる。


 全員、ドワーフさんに気に入られて何かしらの「作品」を受け取ったことのある者ばかりだ。見た目はちょっと怖いけど、一応彼らなりの信念がある堕流救世主。元いた世界で酷い目に遭ったけど、この世界で自分の居場所を見つけ私とヴァルキリー様を助けに来てくれたカミラ。そして――世界に必要とされなかったが、この世界に来て魔王フェンリルと戦うことになった私。


 事情はどうあれみんな、私たちが何かと戦っているのは事実だ。そしてそういう相手に自分の作品を提供することが、ドワーフさんの本来の望みなのだろう。自分の道具が正しく使われ、道具としての能力を最大限に発揮する……気難しい性格だけど仲良くなれば優しくしてくれる人情家。そして、「最高の匠」を自称するからこその誇りとプライド。きっとそれが、ドワーフさんの譲れない信念なのだろう……と考えているところで変態さんが私に横やりを入れてくる。


「うむ、その気持ちはよくわかる。これから先、自分たちより後の時代を生きていく人間たちを見守る立場になってくると思わずそれを導き、応援したくなるものだ。というわけでヒルダ君、変態の世界はいつでも君を待っているからな。この戦いが終わったら、共に変態の世界を歩もうではないか!」


 いや、そんな道、絶対に行きません! だいたい今それどころじゃないですから!


 ドワーフさんもこれには「露骨な死亡フラグを立ちましたー! するんじゃない!」と怒り出し、カミラが慌てて「結局どうするのよ?」と話を元に戻す。


 そう、結局フェンリル対策はまだ何も決まってないのだ。再び重苦しい空気が貼り詰める中で、絞り出すように堕流救世主のリーダーが口を開く。


「とりあえず、そんなに強え奴ならまともな方法じゃ無理だろ。奇襲とか不意打ちとか、そういう戦法をとることはできねぇのか? 俺らの愛車バイク仲間チームなら、速さじゃそう簡単に負けねぇ自信があるし……あの神々の館(ヴァルハラ)を襲撃した時みたいに、全員で力を合わせれば……」


「……それでも勝てる保証はないが、ワシらにできる方法はそれしかないじゃろう。幸い、フェンリルが現れる黄昏時ラグナロクならカミラも吸血鬼のフルパワーを出せるしまたドワーフスマホのチートアプリや勇者だョ! 全員集合作戦も可能じゃろう。まずは数でフェンリルの気を散らし、そうして奴に攻撃を……しかし、問題はその攻撃手段じゃな」


 意外と戦略的なことを言い出す堕流救世主のリーダーに、ドワーフさんも真剣な表情で頷く。そう、私たちの目的はあくまでも魔王フェンリルを「倒す」こと。オーディンの時みたいに一時停戦をしたり、腹井真白の時みたいに元の世界へ追い返したりすることはできない。結局、振り出しに戻った議題を前に私たちはただ頭を抱え――迫りくる黄昏時ラグナロクに、焦りの感情を募らせていくのだった。


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