VS.厨二病②
「おーい! ワシのこーの声が聞こえーるかーい!?」
場にそぐわない、能天気な声が聞こえたかと思うと空間が渦を巻く。その中心から子どもの背丈ぐらいの小さなオジサンが現れると、その場にいた全員が動きを止めた。
口元に立派な髭を、背中に大きなハンマーを持ったそのオジサンは一度、なぜかバク転すると華麗な着地をしてサッとポーズをキメる。
「レディース&ジェントルメン! ワシこそはアカデミックでワンパンな勇気びんびんのヒーロー、ドワーフ! 最高の匠、パッパッパラッと参上じゃ!」
唐突で濃い自己紹介に、カミラとヴァルキリーを追い詰めていた少年少女たちは呆気に取られる。ただし、それは私も同じだ。
なぜ、ドワーフさんがここに? っていうか、いつからヒーローになったの? そんな疑問に答えるかの如く、ドワーフさんはハンマーをぶんと振り回しその場にいる全員を見渡す。
「最近、ドワーフスマホからの連絡がぱったりと途絶えていたからな。気になって来てみたらこの有様じゃ。やい、少年少女諸君! ワシはオールマイティーな名人であるキング・オブ・キング、ロード・オブ・ロードじゃ! そんなワシが大勢で寄ってたかって、持て余した力を振りかざす連中を放っておくと思うか!」
そう言い終えたドワーフさんはヴァルキリー様を取り囲む4匹の犬、もとい四聖獣に向かって「シャー!」と猫の威嚇のような構えをしてみせる。犬たちはそれに驚き、怯えたのかキャンキャン鳴きながら文字通り、尻尾を巻いて逃げ出した。途端に犬を召喚した少年は「お、おい!」と弱々し気な声を上げる。
「青龍! 朱雀! 玄武も白虎も、逃げ出すんじゃない! ちゃんと戦うんだ!」
「こりゃ、犬を虐めるな! だいたい、戦うなら自分の手で戦わんかい! ペットに戦わせるなんて卑怯じゃぞ!」
それに龍だの虎だのゴツイ名前など付けてやるな! もっと可愛い名前を考えてやれ!
ドワーフさんに一喝され、四聖獣……いや、カワイイ4匹の犬を連れた少年はたじろぐ。どうやら言い返すことができないようだ、そのまま臆している少年に「クソ坊主が!」と捨て台詞を吐いたドワーフさんは今度はカミラの傍で、立ち尽くしている少年少女たちに近づく。
「おぬしたちもだ! 1人では何もできないくせに集団になった途端、威張り散らして誰かを虐げるなど言語道断! 恥を知れ恥を! うつけ者ども!」
「な、なんだとこのジジイ……!」
強い口調で叱られ、反感を持ったらしいヴィジュアル系の少年の1人がドワーフさんに殴りかかろうとする。だけどそれを遮ったのは――騒々しいエンジン音だった。




