VS.厨二病①
少年は驚いた私やヴァルキリー様を、どこかウキウキとした様子で見つめている。一方、私は神殿に現れた四聖獣たちにただ、呆然とした眼差しを向けることしかできない。
――チワワ。ダックスフンド。トイプードルに、ポメラニアン。
って、どれも小型犬かい! みんな超カワイイけど、絶対「聖獣」ってキャラじゃないだろ!
「うわあああああっ来るな来るなこっちに来るなあああああっ!」
子犬の可愛らしい姿にちょっと見とれていると、私の横でヴァルキリー様がそう叫び崩れ落ちる。そういえば、ヴァルキリー様って女神なのに犬が怖いんだっけ……ということは一応、今この場に現れた「四聖獣」は十分な強敵なのだろうか? へっぴり腰になるヴァルキリー様に向けて、4匹の犬たちは一斉に吠え掛かる。
「行け! 青龍、朱雀、玄武、白虎! 堕落した偽りの神に正義の鉄槌を下せ!」
「いやあああああっ吠えかけないでえええええっ!」
4匹のカワイイ犬に取り囲まれ、吠えられ思わず泣き出すヴァルキリー様。
……本人には悪いけれど、なんだか間抜けな光景だな……だけど今、悲鳴を上げているのはヴァルキリー様だけではない。
「やめてえええええっ十字架も銀も怖いんだってばあああああっ!」
「我が聖なる薔薇十字を恐れるとは……貴様、やはり闇の眷属だな! 生かしておけぬ!」
カミラを取り囲み、勝手なことを喚ている少年少女たち。あぁ、小学生の時と同じだ。本人たちは悪気なくカミラを追い詰めている……! でも、どうしよう?
気がつけばこの神殿にいるメンバーで、動けるのは私だけだ。でもどうしていいのかわからず、戸惑うことしかできない私に1人の少女が追い打ちをかけてくる。
「ねぇ、あなた。オロオロしているようだけど、私たちを呼んだのはあなたなんでしょう? だったらなんとかしようとしてくれないと、困るのだけど」
そう話す少女はフリルのたっぷりついたゴスロリ服を着ていて、まるでお人形さんみたいだ。だけどその眼差しは人形より冷たく、つぶらな瞳からはどうやらイライラしているらしい様子が見受けられる。
「私、好きなブランドの新作が出るからそれを買いに行きたいのだけれど……あの吸血鬼も、女神様もあなたの仲間なんでしょう? だったら、早くなんとかしてちょうだいな。それともまさか、あなた1人だけ何もできないの? あの犬だの十字架だのに怯えている連中を、助けようとすら思わないの?」
はっきり、図星をつかれた私は沈黙と共に視線を床に彷徨わせる。
そうだ、私はいつもカミラとヴァルキリー様に助けられてばかりだ。頼りない女神様だとか泣き虫な吸血鬼だとか言いながら、いざピンチに陥ると慌てるばかりで2人を救出する方法すら考えつかない。もちろん、「戦う」なんて選択肢も……
……私は、なんで戦えないんだろう。目の前で私をいつも助けてくれる2人が苦しんでいるのに。私は戦えない。いつも戦えない。なんで? どうして……?
胸の奥から湧き上がってくる、ぼんやりとした恐怖。不安定にぐらつき、眩暈すら感じる中で私の耳に届いたのは――
「――おーい! カミラ! ヴァルキリー! ヒルダ! いないのかー!?」




