フラグの陰
「なぁレイダさん、酒置こうぜ酒」
最近ひだまり食堂でよく言われることだ。
元々量が多くボリュームがあってうまい食事にきっぷのいいレイダの人柄に惹かれて冒険者が寄り付いていたひだまり食堂であったが、そこにリデルという美人の看板娘が入ることによって(リデルは自覚していないが)、最近は冒険者で終始いっぱいである。
売り上げはとてもよいのだが、冒険者ばかりがたむろして、一般のお客さんが入りづらくなったのだろう、完全に客層が冒険者一択になってしまったのだ。良くも悪くもリデルの影響は大きかった。レイダ達としてもそのことで怒るわけにもいかず、かといって手放しで喜ぶわけにもいかなかった。
そして冒険者というのは危険なことも多い仕事なので、無事に仕事を終えた際には酒を飲んで大いに楽しむというのも理解できなくもない。
「うちは食堂だよ!酒が飲み炊きゃ酒場にいきなっ!」
が、レイダさんの冒頭の質問への返答はいつもこれだ。
「ちぇっ、オプシさんのから揚げできゅ~っと一杯やりたいのによ」
渋々引き下がっていく様子も皆同じだ。
よっぽど皆さん飲みたいんだなぁと苦笑しつつその様子を見ている私である。先日お泊り会でお酒を初めて飲んだわけだが、労働後の一杯!には目覚めていないリデルである。どちらかといえば甘党かもしれない。
「どうしてうちはお酒を取り扱わないですか?」
食堂の終了後に尋ねてみた。
「やっぱりお酒が入るともめ事が増えるしねぇ。特に今は冒険者が多いだろう?気がいいやつらも多いけど、ランクの高くないやつらでも私らからすりゃ十分脅威さ。厄介ごとはゴメンだよ」
なるほどなぁ。確かに言いたいことはよくわかる。
お客さんには申し訳ないのだけれど、反対する理由はないなぁ。
テーブルを拭きながら今日のことについて考える。
平穏な日々を送りたいなぁ…。
日常になってきた生活がいとおしいリデルであった。
これはゲームではなく、もう一つの現実ですというだけあって、いかにも"ゲームらしい"演出はない。頭上に名前や体力が表示されているといったような。「スキル」の存在は若干抵触しているが、これも各人の持つ技能の程度を示す基準だと言えばその程度である。
だからまず珍しいことなのだが、リデル宛に運営からメールが届いていた。視界の隅にメールのマークがあった。
リデルは気づいていなかったが、その内容は
「キャラメイクの特定動作による、バグのお知らせと謝罪と保証について。」




