2-(18) 襲撃~新たに来る敵のために~
別名『フラムの暴走』
キンッ、と金属の跳ね返る音が響く。
暗闇に浮かぶ火花は途切れることがなかった。
「(マズイかも)」
相手の突き出してくるクナイに似たナイフを弾きながら、九谷は冷静にそう判断した。相手の獲物は短く、リーチは自分のほうが長いのに、先ほどから実力は全くの互角。
単純な剣士としての実力では、2人の間で決着がつくのに時間が掛ってしまう。かといって、魔法を併用しての戦いは難しいというのが現状だ。
リーチの短い刃での攻撃は、接近戦になるため魔法を使う間を取らせない。同等の実力を持つ相手に対して意識を向けたまま、魔法を発動するのは難易度が高い。一介の高校生たる九谷には少しばかり負担が大きいのだ。
「(僕一人じゃ力不足かな)」
考えると同時、九谷は相手の懐に踏み込む
――――――ように見せかけて、敵に背を向けコンテナ置き場から離脱する。
「っ?!」
後ろで黒装束が息をのみ、ついで追いかけてくる気配を感じたが、九谷は無詠唱の身体強化を発動して一気に駆け抜ける。
向かうは火柱の根元、同じ役目を課した後輩のもとへ。
◆ ◇ ◆ ◇
「んぅ?」
火柱の下で、攻撃を仕掛けてくる敵を燃やしつくしていた南は顔を上げる。
辺りに張り巡らした感覚に、何かが引っ掛かった気がしたのだ。南はそのまましばらく首をひねっていたが、ナイフを持った男が突っ込んできたところで思考をやめた。
「無駄だよ」
殊更優しく囁いて、突き出されたナイフを手に持っていた剣で弾き返す。
男の持っていたナイフは一瞬で溶け、崩れた。
熔解。
これは南の剣が持つ特性のようなものだ。高温の炎を剣の形に圧縮して作った南専用の剣。
刃からは零れるように炎が揺れて、切ったものを炙り焼く。本来の使い方(南が想定した使い方)は敵の傷口を焼くことによって苦痛を増大させることだが、あまりにも温度の高い炎を使って作ったおかげで、副産物としてナイフ程度の薄さなら苦も無く溶かすことができるようになってしまった。成功作に見える失敗作。
とはいえ攻撃力は十分なので、南は有効活用しているが。
「三海様」
剣をふりふり男達を切り刻んでいた南のそばに、ミナセが近づく。
「どうしたの?」
「先程、仲間から連絡が。九谷様が持ち場を離れこちらに向かっているそうです」
「会長が?どうして」
「敵と思われる黒装束に追いかけられている、と聞きましたが」
「あー、会長とは戦闘方法が合わないか、もしくは一人じゃ無理って判断したのかな?」
「それは……」
「うん、その可能性が高いね!」
戦闘のせいでテンションが上がっているのか。自分で疑問を呈したにもかかわらず、南はミナセが答える前に一人で納得し頷いている。
「自分は対話に不必要ですか」とでも言いたげな表情をして一人で納得し続ける南を見ていたミナセは、ふと後ろを振り返る。
「来ます」
ミナセの呟きに、南はすばやく行動を始めた。
剣を両手で持ち、上に掲げる。深紅の透き通った刃に、蛇のように絡みつく炎が発現する。
爆発的に上がったな魔力に、南が新たに来る敵のために近くにいた男達を一掃しようとしているのに気がついて、ミナセは懐からメモを一枚取り出した。
火柱を上げてすぐに、「もし僕が大技を使おうとしたら、コレを発動するんだよ」といって渡された魔法陣だ。南の魔力がすでに注がれているそれは、発動を待って淡く点滅を繰り返している。
ミナセはそれに魔力を注いで発動し、自身の周りに半円形の防御用結界を張った。
南の魔力が膨れ上がり、いざ剣が降り下ろされそうになって。気付いたミナセは九谷が向かってくる方向を見つめた。
「そういえば、九谷様はコレを防御する術をお持ちなのかしら」
敵だけならともかく仲間である九谷様を巻き込んでしまうのはちょっと……、と呑気に首を傾げている彼女の声が、もし九谷に届いていたら「そんなの持ってないよっ?!」という叫びが返されることだろう。
九谷を巻き込むことなど微塵も考えず、南は攻撃を開始する。
そして。
――――――――――――廃工場群の一角で、紅き刃が降り下ろされた。
瑞希くんかわいそう(T0T)
死ななきゃいいけど……(笑)




