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傍観の人形使いと攻略対象の彼ら  作者: 朝霧波斗夜
第2章 黄昏の悪魔
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2-(14) 急展開

 後日、桂先生から連絡があった。

 魔法否定派には泰蔵という強い魔法師がいて「そいつが動いてるみたいだから気を付けろよ」と言われた。


 すぐにそれを大和兄に伝えると、大和兄達は相手に襲撃をかける予定を立てていたようだ。情報収集していた時に、生徒会のご意見箱(生徒の要望を聞くための箱。投函は誰でも可能)に、魔法否定派の本拠地と思しきとある廃工場の住所が書かれた紙が入っていたらしい。

 おそらく、というかなんというか。十中八九、春日井ちゃんの仕業だろう。

 私のほうで調べると言っておいたのに、自分で調べに行っていたみたいだ。

 大和兄達も一回自分たちで確認し真偽を確かめたから、襲撃の作戦を立てていたのだろう。敵の本拠地の場所は私が情報を遮断したことなので、大和兄達が、過程はどうであれ探し出せた事が素直に嬉しかった。


 しかし物事はそううまく進まない。



       大和兄達が作戦を実行に移すその前日、

                         ヒロイン、小鳥遊優が攫われた。







 ◆ ◇ ◆ ◇





 翌日の朝。大和兄から連絡を受けた私は、生徒会室と電話を繋げていた。

 画面の向こうには重苦しい空気を纏った生徒4人と、驚いたように目を見開いている教師が1人。

 私は朝の挨拶などせず本題を切り出す。


 「小鳥遊さんが攫われたって聞きましたけど」


 冷え冷えとした私の声音に、大和兄・九谷先輩・三海くんの3人はビクッと肩を震わす。四見先輩の顔は強張った。


 「私、彼女の安全には気を使えと言いましたよね」

 『そ、それは……』

 「言い訳はいりません」


 何かを言おうとした九谷先輩の言葉を切って捨てる。

 すると、今まで口を挟まなかった人が声を掛けてきた。


 『ちょっと待ってくれ』

 「何でしょう、千葉先生」

 『君は誰だ。こいつらと知り合いのようだが、俺にも分かるように説明してくれないか』


 千葉先生の言葉に私は少し驚いた。しかし少し考え納得する。

 私は千葉先生を知っているが、千葉先生は私を知らなくて当たり前だ。私がこの世界で千葉先生を見たときはぬいぐるみだったし、挨拶をした訳でもない。千葉先生は特待生監督教師ではあるが、名簿は渡されていても生徒本人の顔は知らないだろう。

 私はあぁ、と頷くと少し笑みを浮かべて挨拶をする。


 「初めまして千葉先生。私は高等部1年S組所属特待生で、櫛灘瑠那といいます。そこにいる十塚大和の幼馴染です」

 『特待生? ……なるほど、大和の幼馴染だったか。それで、この話し合いに君が参加している理由はなんだ?』

 「生徒会の方々に『黄昏の悪魔』についての協力を求められたからです。一応、協力者という関係になります」


 そこで千葉先生は一度口を閉じた。

 大和兄達は無言で私と千葉先生のやり取りを聞いている。下手に口を出さないほうがいいと判断したんだろう。

 理解のための沈黙を挟み、千葉先生は再度口を開く。


 『協力というと……情報関係か? 君は接続(リンク)系魔法を使えるのか?』

 「いえ、どちらかと言うと私は操作(アパレイト)の方です。『幻影の噂屋(ファントム・ゴシップ)』と名乗れば分かりますか?」

 『ファントム・ゴシップ?! ………………噂の情報屋はこんなに若かったのか』


 千葉先生は目を見開き、長い沈黙の後そう言った。私の通り名はそんなに有名だったらしい。

 思わずため息をつきたくなるのを堪えて話を続ける。


 「納得してもらえましたか」

 『あぁ、分かった』


 千葉先生が頷くのを見て、さて、と私は視線を大和兄達の方へ向けた。


 「それで、さっきの続きですけど」


 そう話を振ると、九谷先輩は先程とは違う静かな瞳で言い切った。


 『作戦を今夜に早めて実行するよ』

 「…………正気ですか。小鳥遊さんはどうするんです」


 彼女を見捨てるんですか、という副音声の付いた私の問いに、先輩は首を振る。


 『彼女は見捨てない。元々この作戦はいつものツーマンセルで僕達が相手の本拠地に乗り込み、千葉先生は小鳥遊さんの護衛でここに残るというものだった。だけど、今ここに彼女がいないなら、千葉先生は護衛に残る必要が無いよね』


 九谷先輩が、自分の中にある作戦を整理しながらゆっくりと口にする。


 『僕達が調べたところ、相手の本拠地は元の廃工場を中心に、何個か他の廃倉庫とかを飲み込んだ大規模なものだったはず。その内の一つに、彼女は囚われている。たぶん、相手は彼女を囮にして僕たちが来るのを待っているんだと思うんだけど』

 「だけど?」

 『僕達を誘き出した時点で彼女の利用価値は無くなる。だから、僕達は彼女が始末される前に助ける必要がある』


 今の状況を声に出して整理すると、先輩は小さく頷いて新しい作戦を話し出した。


 『まず、ツーマンセルをやめて、個人で動こう。役割は、南が……』



 全てを聞き終えた後、私達はその新しい作戦に同意した。

 私はまず、その作戦に必要になるであろう補佐として、私の所にいる自我を持つ人形を何人か彼らと顔見せさせる。

 名前を覚えなくていい。敵本拠地であった時に倒すべき敵と間違えないよう顔だけは覚えてもらった。



 そして、夜。

 作戦は始まった。

 急展開です!題名でもいいましたが急展開です!!


 2章も終了間近、リクエストの締め切りも迫って来ました今日この頃。

 プロット無しの見切り発車だからできる急展開。

 起承転結の“起”から、“承”を飛ばして行き成り“転”に。

 次話から“結”、『襲撃』の始まり。乙女ゲームにあるまじき血なまぐさい話になりそうです。


 次話『襲撃~炎魔フラム~』

    *題名は現時点での予定であり、投稿時に変更されるかもしれません


 誤字・脱字・感想・リクエスト お待ちしてます。

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