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傍観の人形使いと攻略対象の彼ら  作者: 朝霧波斗夜
第2章 黄昏の悪魔
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2-(15) 襲撃~ミナセ~

 夜。闇に閉ざされた市街地区E-7で、影が躍る。

 闇に紛れ、足音を殺し、密やかに。

 速度はバラバラ、間隔もまちまちで、彼らはとある廃工場に迫っていく。


 影の一人、南は、丁度廃工場を見下ろす位置にある廃れた倉庫の屋根に寝そべっていた。

 穴が開いたトタン屋根の上を、匍匐(ほふく)前進で慎重に進む。腹ばい姿勢をしているのは、下手に立ち上がると隣の廃工場にいる敵に気付かれかねないからだ。

 屋根の隅まで行って見下ろすと、廃工場の近くには警備員に成りすましている敵の姿が見える。

 南はそのまま視線を工場に移し顔をしかめた。


 「予想より数が多い……」


 割れた窓から見える工場の中には、直立不動で目を閉じる少年少女がいた。

 サイボーグ。

 いつから学園都市内に侵入していたのか。いつから奴らは動き始めていたのか。

 そんな疑問を抱きたくなるほど、工場内に揃えられたサイボーグの数は多かった。今、南がざっと見ただけで30体。他の空き倉庫にはまだまだいるのだろう。よくも学園の目を逃れてここまでの数を集められたものだ。


 「まぁ、やる事は変わらないけど」


 数が予想より大分多くとも南のやる事は変わらない。今回南に与えられた役割は【なるべく人目を引く】こと。つまり囮だ。【敵の戦力を削る】九谷と、【敵ボス確保】の役割を与えられた四見との3人で、敵の指令系統の混乱させ、その内に【人質救出】役の大和が小鳥遊優をこの地区から連れ出す。それが作戦の概要だ。

 作戦を成功させるためにも、人目を集める大きな狼煙(のろし)を作らなければ。


 南は工場内部に目を光らせつつ、身に(まと)ったマントを背に払った。マントの下は黒ずくめの軽装だ。


 「まだ見つかりませんように」


 ポツリと呟いた南は、腰のベルトに取り付けられたポーチを探って、小さなメモ帳を取り出した。

 無地の紙が綴じられた、文房具店で普通に売っているもの。

 中には魔力節約のために事前に書いておいた魔法陣が一枚につき一つ描かれている。


 魔法発動において最も魔力を消費するとされている魔法陣をあらかじめ描いて持っておくだけの魔法師では割とポピュラーなアイテムだ。

 メモ帳を開いた南は、その中から一枚を切り離す。それに魔力を込めようとした瞬間、後ろから声がかかった。


 「三海南様ですか?」


 敵に気付かれた?!と、勢い良く振り向いた視線の先にいたのは一人の女。マントのフードが取り払われ(あら)わになっている女の顔に、南は覚えがあった。


 「櫛灘さんの……」


 今朝、クラスメイトで協力者でもある少女に対面させられた人形。その内の一人として南は女の顔を覚えていた。


 「今朝ぶりです、三海様。主より、三海様の補佐をするよう命じられました」


 表情筋を一切動かすことなく告げられた内容に、南は戸惑いながら頷いた。


 「そうですか、……えっと」

 「識別番号は12F066。固有名称はミナセです。お好きにお呼びください」


 「じゅうにエフぜろろくろく」ポツリと南が呟いた識別番号に、ミナセとも呼ばれる女は返事をする。どうやら本当にどっちで呼んでもいいらしい。

 呼んでもいいなら呼ぶが、さすが数字で呼ぶのはどうだろうか。てか識別番号とか言ってるけど、実は製造番号の間違いなんじゃ?


 そんなことを思いつつ南が唸っていると、その様子に小さく首をかしげたミナセは、南の隣で廃工場を見下ろして言う。


 「三海様、人目はどのように引くつもりなのでしょうか」

 「え? あぁ、大規模な火事を起こして狼煙代わりにするつもりだけど」

 「では、邪魔な警備員たちは私が始末します」


 断言口調で言ったくせに視線で許可を求めてくるミナセに、南は頷いて答えた。

 すると、ミナセは何のためらいも無く「では」という言葉だけを残して、倉庫の屋根から飛び降りる。


 「え、っちょ?!」


 南が慌てて下を覗き込むと、ミナセは丁度地面に着地しているところだった。上体を前に倒し、膝を曲げて衝撃を吸収する。猫のようにしなやかに着地したミナセは、そのまま死角から敵の警備員に襲い掛かった。
















 まず、一人。

 警備員の後ろから駆け寄り、左右に大きく広げた腕を振り下ろすようにクロスさせる。

 たったそれだけ。それだけで、ターゲットにされた警備員の首が吹き飛ぶ。悲鳴を上げる事もできずに倒れた警備員の体。


 その音に気付いた他の警備員が拳銃を乱射するが、ミナセには当たらない。まるで空中に足場でもあるかのように(そら)を舞う。辺りを彩るのは月光に輝く幾本もの線。


 「ワイヤー?」


 ミナセの行動を息を潜めて見ていた南はポツリと呟く。

 極細の糸が近くの倉庫の壁に渡され、それを足場にしてミナセが舞う。

 そして、その(ワイヤー)の“速さ”と“細さ”を最大限使い敵の命を狩る。


 二人三人と血の海に沈んだ警備員たちは、数分もせずにその全員が沈黙した。


 「三海様、お待たせしました」


 ミナセの言葉に、南は一度下を確認した後、音を立てないようにそっと飛び降りる。

 浮遊感。足元の不安定な気持ち悪さに襲われながら、南は先程――――――ミナセに声を掛けられる前にメモ帳から切り離していた紙に魔力を注ぐ。

 発動した魔方陣がわずかに輝き、書かれていた情報を元に事象を改変する。


 「――――――よ、っと」


 魔法で起こした風に衝撃を吸収させて、南は地面に立つ。

 今までの不安定な足場から信頼できる地面に着地して、小さく安堵のため息をつく。


 「さて、特大の狼煙を上げようか」

 「はい」


 南は忠実な人形を一人従え、目的の廃工場に向かった。

 長らくお待たせしました、最新話です!

 予想通りというかなんていうか。結局、題名は予告どおりとは行きませんでした。


 内容も初め考えていたのより大幅に路線変更があった模様です。そのせいでここまで遅れるとは思いませんでしたが、そこは読者様の寛大なお心で許してください。

 何しろプロット無しのお話ですから。流れが当初と違う方向に転がっていってもしょうがない。ということで(- -;)


 あっちにコロコロこっちにコロコロしているこの作品ですが、作者としてはどんなに遅れようが一回始めたらせめてその章の最後まではやり遂げる所存です。

 見捨てないでくれるとありがたいです。


 では、これからもコロコロと転がりながら頑張ります。



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