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傍観の人形使いと攻略対象の彼ら  作者: 朝霧波斗夜
第2章 黄昏の悪魔
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27/33

2-(12) 図書館は情報交換の場

 次の日、有言実行の大和兄は、これまた良い笑顔で私を迎えに来てくれた。


 で、今。

 私は授業に出ずに図書館に来ている。

 図書室ではなく、図書館である。学園敷地内には、大きな図書館が建っているのだ。

 中は壁全体が本棚になっていて、壁に作られた螺旋を描く階段を歩きながら本を選ぶ事ができるようになっている。分かりやすく説明すると、螺旋階段の外側の手すりが本棚になっている感じ。それを大きく(太く?)すると、大体のイメージがつくと思う。


 一階の部分は、入り口の近くが机とかの並ぶお勉強コーナーで、奥半分を本棚が占めている。

 いくら段差が低くて幅の広い階段だからといって、私には少し辛いので、階段の無い一階を徘徊してみることにした。


 なぜ私がここに来ているかというと、けして無理やり登校させた大和兄への反抗ではない。ちゃんと目的があって来ている。

 私はここに情報を求めに来ているのだ。私の仕事は情報屋だが、いくら人形を使えるからといって、全ての情報を人形で集めるには無理がある。そこで、私は私と同じで裏の世界に関係のある人を雇い、定期的に情報を報告してもらうのだ。大和兄なんかは、彼らのことを“目”と読んでいる。


 この学園に入学した子にも何人か“目”がいて、その子達には基本メールか、私が学校に来ている時は口伝で情報を伝えてもらっているのだ。

 その内の一人が今日私が登校しているのを知り、ここに呼び出してきたのが私が今ここにいる理由である。


 大きな本棚を見上げながら、自然な足取りで指定された本棚に向かう。授業中であろうとうちの学校は選択授業が多いため、授業間の暇つぶしに図書館を利用する人は多い。今ざっと見ただけで、50人くらいの人がここにいるようだ。

 人目につかないよう自然にゆっくりと指定された書庫に近づくと、相手はすでに来ていたのか、棚の向こうから小さな声が聞こえてきた。


 「お久しぶりです、ファントム」

 「久しぶり」


 棚の向こうの声に返事を返す。今この向こうにいるのは、春日井智乃ちゃん。ヒロインのお友達のあの『春日井ちゃん』である。

 彼女は3年前から“目”として働いてくれていて、初めは元々“目”だった彼女のお父さんの代わりに1・2回情報収集をこなしてくれていたんだけど、2年半くらい前にそのお父さんが亡くなって、そのまま“目”の仕事を継いでくれた。

 噂好きの春日井ちゃんは、今や嬉々として情報収集をしてくれている。


 「久しぶりにその名前で呼ばれたよ」

 「ファントムは、あまりお外に出られないですからね」


 本棚の本を適当に一冊取り、読む振りをしながら2人で話をする。


 「ところで、そろそろ敬語外さない?」

 「外しませんよ。お仕えする人に対して礼儀は尽くさなければいけませんから」

 「いや、私は君達を雇っているのであって、従えているわけではないんだけど……」

 「私は一生ファントムについていくと決めておりますので」


 今まで何回も繰り返した問答を受けため息をつく。彼女は何回言っても「ファントムについていく」の一点張りだ。

 私も気を取り直して本題に入った。


 「それで、報告があるって聞いたけど?」

 「あぁ、はい。裏の取れない信憑性の無い噂話なんですけど、ここのところ、市街地区E-7にある廃工場に、人が出入りしているらしいんです」

 「市街地区E-7?廃工場なんてたくさんあるよね。どれか分かる?」

 「えっと、一番大きい工場跡地。たしか、電子科学の比較的危険じゃない実験をしていた所らしいですけど。……他の“目”にもあたってみますか?」


 電子科学実験の工場は、あの辺りには結構な数あったはずだ。見つかりにくい所で潜伏している奴等もいるなぁ、と思いつつも、私は少し首を振った。


 「いや、いいよ。家の人形に探らせたほうが早そうだ。情報提供感謝するよ、春日井ちゃん」

 「お役に立てて良かったです。では、私はこれで」


 春日井ちゃんの気配が消えるまで待ち、私は適当に本棚を見ている時に見つけた、面白そうな本を持って近くに設置してあった椅子に座る。


 本棚と本棚の間の小さな空間で、人の目につきにくい所にある椅子だ。すぐ側の窓を開けて、春の風を感じながら読書をする。


 半分ほど読み進めたところで、窓の外から手元の本に、小さな紙切れが投げ入れられた。


 『お久しぶり、ファントム。昼休みに屋上で食事でもしないか。美味いサンドウィッチが手に入った。  桂』


 本で隠して広げてみると、書いてあったのはお昼のお誘い。頑張って丁寧に書いたような、何度も書き直した跡が微笑ましい。


 私は窓の外に手を突き出すと、手紙を燃やして親指を立てた。「昼食、伺います」のメッセージだ。意外と近くに隠れていたのか、潜めた笑い声が聞こえたから、メッセージは無事伝わったとみえる。


 私は昼食が待ち遠しくなった。

 桂先生は以前出てきました。執行部の顧問です。

 覚えてくれていると嬉しい!

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