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傍観の人形使いと攻略対象の彼ら  作者: 朝霧波斗夜
第2章 黄昏の悪魔
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2-(8) 動き出した彼ら

 「今日、小鳥遊優さんが魔法否定派に襲われる」


 朝早く呼び出して、開口一番そんな事を言った私に、夢路と志斗は驚いているようだった。

 しかし私が真面目に言っているのだと気づいた2人は、すぐにその場に膝を突く。片膝をついた志斗と両膝を突いた夢路は声を揃えてこう言った。


 「「私達は何を」」


 2人の言葉に頷く。


 「夢路はここで留守を守って。ありえないとは思うけど、魔法否定派がここに来ないとは限らない」

 「分かりました。警備を増やします」

 「よろしく。志斗は、私の代わりに動いてもらう。指揮は私がとる。いつでも動けるよう他の子達を連れて待機していて」

 「はい。すぐに召集をかけます」


 私の人形は志斗だけではない。この屋敷は、夢路を除くと人間は一人もいないようになっている。部屋に飾ってあったりするのはただの人形だが、屋敷で働いているのは全て志斗と同じで意思を持つ人形達だ。その他にも普段は屋敷でのびのび暮らしている人形もいる。

 警備のほうは屋敷にいる子達で大丈夫だろう。志斗には役職についていない子達を率いてもらう。


 今日はヒロインから目が離せなそうだ。




 ◆ ◇ ◆ ◇




 朝食をとってからすぐにいつものカラスのぬいぐるみを動かす。

 向かうのは小鳥遊優の自宅。

 魔法否定派がいつ襲ってくるかの予想は大体ついてるが、その油断からヒロインが殺されましたなんて事にならないよう、朝からついて回る事にしたのだ。


 この仕事は本来なら大和兄達の仕事なのだが、残念な事に彼らは未だヒロインの状況に気づいていない。これはシナリオより少し遅れているという事であり、私の予定通りには事が運ばないかもしれない事を意味している。

 もしもの時は無理やりにでも発破をかけるよう志斗にお願いしておいたが、なるべく自分達で真実にたどり着いてほしいと私は願っていた。


 現時点で、私は少し攻略対象たる彼らに関わりすぎなのだ。ゲームだと櫛灘瑠那の出番はこんなには多くないはずで、現実はゲームとは違うと知っているけれど、私は少し甘かったのかもしれない。

 大和兄達に情報を与えすぎたがゆえに、彼らはあまり自分で考えなくなってしまった。もちろん彼らがこちらの情報に甘えていると分かった時点で少し突き放して自分で考えるよう促したが、彼らの脳が今までと同じように動き出すにはもう少し時間が必要かもしれない。


 いっその事殴れば治るかな、とも思ったのだが、夢路に「それは少し乱暴すぎる」と怒られた。

 「人間ってのは複雑で面倒くさい」というのが、今の私の感想だ。


 はてさて。ボーっとする事約40分。時刻は7時50分である。

 ヒロインが玄関から出てきた。いつも通りの制服姿だ。

 ヒロインの可憐な容姿がシックなデザインの制服に良く合っている。



 いきなりだが、ここで一度朔唐魔法学園の制服について説明しよう。

 制服の色は2種類。生徒会と各学年S組は白、その他は黒と分けられている。これはいろんな行事で特例の認められている生徒会やS組の生徒を教師が見分けるためのものだ。色を変える必要はあるのか?とも思うが、バッチとかよりも遠目で分かりやすいらしい。


 制服はブレザーで、白には黒の、黒には白の線が美しいデザインだ。シャツは生徒会やS組は黒、他は白。このデザインについては初代校長の「モノクロ好き」が反映されたそうな。


 ネクタイの色は普段は、1年が薄紫、2年が薄青、3年が薄赤となっている(今の学年はそうだというだけで、基本、学年が変わるときにネクタイの色は変わらない。新入生は卒業生の色を受け継ぐ)。透けそうな薄色をネクタイに選んだのは、「白黒の制服に濃い色を合わせるのはちょっと…」という意見が第1期入学生の間で出たからだそうだ。この学校の制服は人の意見を聞いて作られたのだろう。

 公式行事の時、ネクタイはブレザーと同じ色を締めるのが通例だ。つまりS組私や生徒会の大和兄は白、A組のヒロインは黒といった感じになる。惜しむべくは公式行事になると、初対面の人の学年が分からない事だろう。



 とまぁ長々と喋ってしまったが、制服の説明は以上だ。


 結局ヒロインは1回も襲われることなく学校に登校した。ここから放課後までは学園の警備上、そう警戒しなくても良いはずだ。ハズというだけで相手は学生に手を出すエキスパート。余裕はかましていられないかも知れないけど。




 昼、昼食のためにヒロインの護衛を志斗と交代した時に、まるでそれを狙っていたかのように携帯がなった。

 案の定、画面には十塚大和の文字。


 「はいはい、もしもし?」

 『瑠那、小鳥遊優の素性を教えてくれ』


 挨拶も無しに大和兄が切り出したのは、ヒロインの事。ずいぶん焦っているようで、電話の向こうの声が掠れている。

 大和兄の声は丁度バスとテノールの間ぐらいのエロボイスだ。掠れた声は凶器にしかならなくて、私は眉を顰めて端末を若干耳から離した。


 気を取り直して、大和兄にいきなりヒロインの名前が出た件について問いただしてみる。


 曰く、私にオフレコと突き放された大和兄達は、自分たちで探れる範囲の情報をまとめていたらしい。そこに生徒から、不審な行動をする男達がいると通報。現場に向かった大和兄達は、その不審人物達(学園の生徒だったらしいけど)を問答無用で尋問し(ちょっと過激すぎやしないか)、魔法否定派の一味である事を吐かせた。

 その時に、仲間の情報を吐いた腰抜けが、ポロっとヒロインの名を口にし、その名前に聞き覚えのあった会長が「じゃぁ、その子も否定派の一味じゃね」的なことをこぼし、今に至ると。


 「あ、なるほど」


 あまりの偶然さに呆れた声が出た私は悪くないと思う。隣でくっ付いて聞いてた夢路も、さっきから頬に手を当てて「まぁ」しか言っていない。


 『瑠那、どうした?』

 「あー、うん正解。だいぶ運に頼った方法だけど、あってるよ」

 『じゃぁ』

 「小鳥遊優。彼女は妹の入院費の為に魔法否定派(敵サイド)に回らざるを得なかった被害者だ」

 『妹の入院費?』

 「彼女の両親は5年前に飛行機事故で亡くなっている。妹も確かその事故で脳死判定をされていたはずだよ」

 『……分かった』


 内容を理解するための沈黙の後、大和兄は重々しく返事を返してきた。

 しかし、この次に大和兄の言った言葉を私は慌てて止めることになる。


 『じゃぁ、彼女を捕まえるよ』

 「いやいや、待とう!ちょっと待とう!!」


 すぐさま返る疑問の声。


 『なぜ?』

 「なぜじゃないよ。もう一回言っとくけど彼女は被害者。しかも彼女自身、この頃組織に反発しているらしい」

 『反発?…………ちょっと待って瑠那。それって小鳥遊さんはっ』


 「反発」の言葉で大和兄も気づいたらしい。今現在、彼女は命を狙われ非常に危険だ。

 やっとシナリオ通りになってきた、そう思いつつ私は大和兄の懸念を肯定した。


 「その通り、彼女は今、組織に命を狙われている。私の人形に護衛をさせているけど、襲われるのは、おそらく学校が終わった後。より正確に言うなら黄昏の時間帯」

 『それって…』

 「私の予想が正しければさ、彼女は『黄昏の悪魔』初めての、生身の被害者になる」


 息を呑んで沈黙した大和兄に、私は優しく教えてあげた。


 「だからさ、大和兄。彼女を助けたいなら、目を離してはいけないよ?彼らは容赦なんてしてくれないんだから。本気で殺っちゃえ」


 悪戯をけしかけるようにそう言うと、わずかな沈黙の後、何も言わず電話を切られた。


 「ちょっと、言い過ぎちゃったかな?」

 「いえ、良い発破になったと思いますよ。大和様は、少し甘くいらっしゃいますから」


 思わず舌を出した私に、夢路はにっこり微笑んで答える。

 夢路の評価は辛辣だった。

 やっとヒロインに気付いた大和兄達、次回、彼らが大活躍します。

 瑠那はまだ補佐です。


 さて、前話の活動報告にも載せましたが、この章が終わった後、幕間としていくつか短編小説を入れたいと思います。

 そのリクエストを下さると良いなと思います。


 前回のアンケート、キャラクター紹介ですが。

 次の章が始まる前には入れておきたいなと思っています。


 では次回で。


 誤字・脱字・感想 待ってます。どんなくだらない事でもかまいません。リクエストのほうもしていただけるとありがたいです。

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