2-(4) 生徒会室では side大和
瑠那との電話を理不尽な捨て台詞で切った俺は、携帯電話をしまいつつ生徒会室に入った。
「大和、瑠那ちゃんに連絡は取れたかい?」
連日のパトロールで溜まった書類を片付けつつ聞いてくる会長に、俺も席に向かいながら返事をする。
「えぇ。というか会長、何時の間に下の名前で呼ぶほど瑠那と親しくなったんですか……」
「誤解だよ。『櫛灘ちゃん』というのは少し呼びにくいからね」
「ちゃん付けってのもおかしいと思いますけど……」
「それは癖だよ。僕には女の兄弟しかいないからね。昔から女の子はちゃん付けで呼ぶべきと姉さんに指導されているんだよ」
「それは、何か違いません?」
思わず呆れとも同情ともいえる眼差しで会長を見る。会長はただ笑ってごまかした。
会話の途中もずっと資料を片付けていたら、生徒会の中で一番若く集中力の無い人間が机に突っ伏した。
「南、ちゃんと仕事をしてくれないか?ただでさえパトロールで活動時間が減ってるんだから、終わらせないと休日強制登校になるよ」
「だ、だって先輩、疲れてるところにこんだけ事務仕事があると眠くなっちゃいますよ」
言いながら南は眠そうに目をこする。今にも目蓋がくっつきそうだ。
「それでも今日のうちに少しでも仕事を片付けておいたほうがいいよ。明日は用事があるから」
「用事?」
「何だそれは」
俺の言葉に反応したのは会長と副会長だけで、南は半分夢の世界に旅立とうとしていた。
軽く叩いて意識を覚醒させてやる。恨めしく睨んでくるが気にしない。
「会長、明日はパトロールではなくて情報集めに行きましょう」
「情報集め?」
「えぇ、良い情報屋を知ってまして。彼女が『黄昏の悪魔』の情報を売ってくれるそうなので」
3日連続でサイボーグの死体が見つかったあの事件を、俺達パトロール要員は『黄昏の悪魔』事件と呼んでいる。名称の由来は、3件が全て黄昏と言われる時間に発生しているからということともう1つ、犯人の目撃証言が一切無い事から来ている。夕暮れとはいえ、商業区は授業から開放された生徒で溢れている。そんな中一切目撃される事無く次々とサイボーグを狩っていく犯人は、「まるで実体の無い悪魔のよう」と言われているのだ。
「腕のいい情報屋なのか?」
副会長が尋ねてくる。俺は特に気負いもせずに頷いた。
「えぇ、彼女は信用できますよ。知りませんか?『血塗れた人形使い』と呼ばれている情報屋です。もしくは『幻影の噂屋』でもいいですけど」
「ブラッディ・マリオネット?!」
「ファントム・ゴシップって、先輩!!」
会長が立ち上がり、南が吠える。副会長はただただその目を見開いていた。
俺は今にも食って掛かってきそうな彼らをなだめて口を開く。
「良かった、3人とも知ってるみたいですね。彼女の事」
「魔法師でありながら『幻影』とまで言われるブラッディ・マリオネットの事を知らない奴はモグリだろう」
「うん、智也の言うとおりだね。女性である事は初めて知ったけど、その存在を知らない人はいないと思うよ」
一応と思って確認を取ると、会長・副会長からなんとも力の篭った返事を貰った。やはり瑠那の通り名は有名だったらしい。
「俺と彼女は幼馴染でして。その伝手でさっき連絡を入れてみたんですが、『黄昏の悪魔』に関して情報を持っているということなんで明日聞きに行こうかなと思って。彼女にも言っときましたので、生徒会全員でお邪魔しませんか?」
少し軽めにお誘いを掛けてみたのだが、会長達は迷惑ではないのかとか言う事で悩んでいる。
俺も当初は会長達を瑠那に会わせるつもりは無かったんだが、あの娘はよりにもよって犯人を分かっていながら犯行を見逃し続けていたので、日頃のちょっとした仕返しと仲間はずれにした怒りをぶつけてみる事にしたのだ。
もちろん会長達の口の堅さを信頼しての事だが。会長と副会長は言わずもがな。南も普段は口が軽い印象があるが、大事な事は絶対に黙っているので問題は無い。
問題といえば瑠那の方だが、あの幼馴染は一度腹をくくれば意思を覆す事も無ければ逃げ出す事もしない。繊細な見た目に似合わず肝が太い少女なので、こちらも問題は無いだろう。
それに瑠那の方にもメリットはある。会長達は、この朔唐学園地区での有力者なのだ。パイプが出来る事に越した事はない。
まぁ、もっとも俺が重視するのは有事の際、瑠那を守れる人間が学園内に不特定多数いることなのだが。瑠那は扱っているのが情報のせいか、かなりの人間に命を狙われている。守りを固めておいてもいいだろうと思ったのだ。
と、俺が悶々と考え込んでいるうちに会長達も納得したようだ。
少し緊張した面持ちで「お邪魔する」と言っていた。
大和兄達生徒会メンバーが瑠那のもとにたどり着いていません。
次回は、たぶん必ずおそらくたどり着きます。
不測の事態が無ければ、必ず!!




