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傍観の人形使いと攻略対象の彼ら  作者: 朝霧波斗夜
第2章 黄昏の悪魔
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2-(2) 執行部の協力要請

 「はぁっはぁっ……は、ぁ」


 商業区の裏路地を人目を避けるように歩く影がある。黒のパーカーにズボンという不審者丸出しな格好をした人影は、前方を歩くサイボーグを見て奥歯を噛んだ。

 人影はサイボーグが街路樹の近くを通り抜けるところで、その背中に黒の手袋をした手を伸ばす。


 「《答えよ精霊、其が敵を捕まえろ》っ」


 古風な呪文(スペル)とともに魔方陣が浮かび魔法が発動した。サイボーグの近く、街路樹に絡みついた蔦が解け、サイボーグの四肢を拘束する。街路樹に縛り付けられた格好のサイボーグに歩み寄り、懐から小型のナイフを取り出すと突きつける。


 「ごめんね」


 そう呟いた声は今にも泣き出しそうに揺れ、人影より身長の低いサイボーグにはフードに隠されたその顔が見えた。

 瞳を潤ませ崩れ落ちてしまいそうなほど追い詰められた顔の、美しい漆黒の髪を持つ少女。

 自我を持たない接客用サイボーグは、そんな少女の顔を見て、笑顔で声を掛けた。


 「どうしましたお嬢様、何かお困りですか?」


 客に向けられるマニュアル通りの言葉。

 少女はくしゃっと泣きそうな笑みを作り、ナイフを振り上げる。


 「ありがとう」



 少女の肩越しに見える空は、綺麗な夕日色をしていた。




 ◆ ◇ ◆ ◇




 サイボーグの死体?が見つかった次の日、私は自室で志斗の報告を聞いた。


 「そう、またサイボーグが壊されていたの」

 「はい」

 「犯人の記録は?」

 「商業用サイボーグの視覚カメラには、いずれも黒い人影が写っています」


 黒い人影。残念ながらはっきりとした映像は残っていないようだ。2体目のサイボーグのカメラには顔が映っていたが、逆光のせいで顔の判別が出来ない。すごく残念だ。


 「瑠那様、それは?」


 志斗の質問に首をかしげると、彼の視線が私の膝に向く。膝の上には学園敷地内の自治を統括する執行部からの手紙が乗っていた。


 「あぁ、情報をさ、集めて欲しいんだって。執行部が」

 「瑠那様に直接協力依頼が来るということは、(かつら)様ですね?」

 「うん」


 執行部の顧問・(かつら)水宜(みなぎ)先生は、中等部の特待生監督教師であり、私の裏の仕事を知ってる数少ない人の一人だ。涼やかな名前の癖にどこか体育系というか、親しみやすい教官肌というか、ちょっとマッチョな人で、たまに執行部で手に負えない事件の情報を私に求めてくる。


 「お受けになられるので?」

 「まぁ、こっちも元々調べてるし。どうせ桂先生もおこぼれが目的だと思うからなぁ」

 「少々教師としては大人の威厳が無い方ですが」

 「うん、元生徒に頼るなんて桂先生らしいよね。……志斗は反対?情報売るの」

 「僕は瑠那様が納得されたことに従います」


 志斗の答えに頷いて、便箋を用意してもらうように頼む。

 私の元にくる依頼は、ハッキングを気にしてかほとんどが紙媒体で送られてくる。そのためこちらも紙媒体で送り返す事にしているのだが、届けるのは私の人形の中でも自我を持った者達で、情報の保護のために普通の郵便会社に任せられないのが面倒なところだ。


 志斗の用意してくれた便箋に「いいよ。その依頼受ける。(意訳)」的なことを書いて志斗に持たせた。


 窓の外は夕焼けの色。

 奇しくも、また、黄昏だった。

 3話連続更新第2話目!


 瑠那は意外に頼りにされてます。私とは大違い(ToT)

 次話は大和兄と電話です。

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