2-(1) 黄昏に
夜に最も近い時間、黄昏。
すれ違う人の顔が見えないことから『誰そ彼』とも呼ばれるこの時間は、古来から悪意を持つものが動き始める時間として知られている。
◆ ◇ ◆ ◇
「もう一回言って」
予想外の言葉に、私は思わず振り返る。外を眺めていた視線を室内に戻すと、ガラス玉のような綺麗な瞳に行き着いた。
「散策の途中で大破したサイボーグを見つけました」
事務的に返すのは私の人形、志斗だ。
私より幾分高い背に、藍色の髪と瞳を持つ美しい人形。自我を持つ彼に、私は毎日学園区内をパトロールしてくれるように頼んでいる。
この朔唐学園がある土地は、前世の世界なら学園都市とでも言うような規模を誇っている。正確にはこの敷地内には朔唐学園しか無いため、どちらかというと朔唐学園地区と呼んでいるんだが。魔法師を育てる学校という事もあって警備も厳重で生徒であってもめったに外に遊びに行けない、所謂城塞都市とも言える学園である。
そんな訳で、パトロールを頼んだ志斗が持ってきた報告に私は驚きを隠せなかった。
敷地内とはいえ、厳しい警備の中事件が起こるなんてほぼ無い。
「そのサイボーグを見つけたのは商業区内ね?」
「はい」
朔唐魔法学園は、魔法の教育のほかにも選択学科と呼ばれる学科が存在しており、生徒は必ず学科選択をする事になっている。学園敷地内にある商業区は、商業科の生徒達による店が軒を連ねている所だ。商業区には作業の効率化や人手不足、警備の都合上のため一定数のサイボーグが常駐していた。警備用という事もあってそれなりの強度と俊敏性を持つはずのサイボーグがやられたとなると、相手はかなりの能力者となる。
外からの侵入なんて手間を掛けるだけ無駄なので、おそらくというかほぼ絶対、内部の犯行だろう。頭が痛くなりそうだ。
「少しこっちでも調べてみる。あなたも街の様子に気を配っておいて」
「分かりました。失礼します」
部屋を出て行く志斗を見送って、外を見る。
窓の外は憎らしいほどの夕焼け。
丁度、黄昏の時間だった。
第2章始まりました!キーワードは何でしょう!!
これからちょっと血生臭くなったりならなかったりしますが、どうぞお付き合いいただけるようお願いします。
大丈夫!人的被害は出ないから。死ぬのは主にサイボーグだから。
では、これからもよろしくお願いします。
誤字・脱字・感想 お待ちしてます。




