1-(12) 四見先輩は茶道部員
四見先輩は茶道部だ。
190cmもの長身の癖に剣道とか柔道とかではなく、実にいい抹茶をたてる茶道部員なのだ。
鍛えられた体をしているくせに、ずっと畳に正座している文化部だ。実にもったいない。
なぜ私がこんな事を力説しているかと言うと、ヒロインが放課後部活見学と称して茶道部に向かったときにちょっと思い出したからだったりする。
◆ ◇ ◆ ◇
昼放課のイベントからヒロインに違和感を抱いていた私は、放課後になってもヒロインの後を追い掛け回していた。
昼放課の時、ヒロインは人気が無いから怖いと嫌がる春日井ちゃんを、無理やりに近いくらい強引に校舎裏へ連れ出したのだ。少し曰くつきのあの場所へ。
あの校舎裏は、昔(といってもそれほど前ではない)学園ができたばかりの頃、不良たちが集うところだったらしく2~3人は人知れず人が死んでいるのではないかと言われるところなのだ。
毎年のように下級生には先輩から伝統のように語り継がれ、ヒロインも知らないはずは無い。
それなのに、春日井ちゃんを連れ出した。
私の記憶の通りならば、あそこで起こるイベントは千葉先生との出会いイベントだけのはず。ヒロインは何のためにそこに行ったのか。私は気になるのだ。
もしかしたらヒロインも、私と同じ転生者かもしれない。
なんて。
ぶっとんだ事を考えてみた私だけど、なぜかこの疑問をそのまま放置してはいけない気がして、ヒロインの後を追っかけた。
ヒロインは、放課後に春日井ちゃんともう一人、仲のいい宮野多恵ちゃんと3人で部活見学にくりだすそうだ。
私も学園の部活動には興味があったので、嬉々としてついていく。
「ねぇ、茶道部ってここ?」
「たぶん」
「パンフレットにはここだって書いてあるけど……」
3人は呆然とした様子でその建物を見上げる。私も同様だ。
入学式をした第1体育館の裏はちょっとした森になっていて、茶道部の建物はそこにあった。黄色みがかった漆喰の壁に茶室(何ていうのかな)特有の屋根があり、丸い連子窓がついた小さな茶室。
テレビとかに出てきそうな本格的な建物だ。
「これ、入っていいんだよね?」
ヒロインは呟きつつ茶室に忍び寄っていく。
忍び寄る必要あるのかなぁ、と思いつつも私はヒロインを注視。
「誰だ」
ヒロインが襖に手をかけようとしたまさにその時。襖が向こうから開けられて、四見先輩が顔を出す。
「~~~~っ?!」
ほぼ至近距離で見詰め合う事になったヒロインが、面白いぐらいに飛び上がった。
四見先輩はそんなヒロインに一瞥もくれずにキョロキョロ。
何かを探してる?
と思った瞬間、四見先輩の目がこちらを捕らえた。
私はとっさに身繕いの真似をする。
カラスの姿で表情も何も無いが、必死に表情を取り繕う。
チラッと見ると、四見先輩がヒロイン達を茶室に招き入れるところ。先輩の視線が何かを探すように動くたび、生きた心地がしない。
茶室の襖が閉められてしばらくたって、やっと私は頭を上げた。
見つからないだろうと油断していた自分を責める。危うく見破られるところだった。四見先輩の得意魔法を忘れていた。
彼は攻撃魔法より、補助的な魔法の方が得意なのだ。1番の得意は対象に道を繋ぐ事。要は、相手の魔力の波長に自分を合わせるのがうまいのだ。
私とこのぬいぐるみは道で繋がっている。おそらく四見先輩は、油断していた私からわずかに漏れ出していた魔力の波動を感知したのだろう。末恐ろしい感知能力だ。
こっちの心臓に悪い。めっちゃ負担かかった。うぅ。
四見先輩の出会いイベントにも興味はあったが、警戒心の方が好奇心を上回った。
そのまま私は方向転換をすると、ぬいぐるみをロッカーに返しに行く事にする。
なるべく早く、四見先輩から離れたかった。
◆ ◇ ◆ ◇
「ふぅ……」
ぬいぐるみとコンタクトを取るための秘密部屋で、私は大きく息を吐き出した。
長い時間道を繋げていたため、少し倦怠感がある。
しかしまだ仕事があるしなぁ。
よし、と気合を入れて立ち上がると、私は大和兄からの依頼を遂行するべく部屋を後にした。
恐ろしや、四見先輩。
あんな感知能力、イヤだ!
さて今回。
四見先輩の出会いイベントは主人公の油断によって見られません。
すみません。主人公には言って聞かせますから。
次回は、主人公瑠那ちゃんのお仕事です。
瑠那のちょっとイタイ通り名も出てきます。
ではまた次回で。
誤字・脱字・感想お待ちしてます。




