表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
執事とメイドのラブコメ  作者: 有明海
2章 夏休み編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/85

35 執事とメイドの夏休み最後の夜

 パーティも無事終わり悠斗は一人夜の砂浜を歩いていた。

 両家水入らずの時間を過ごしたいとのことでボディーガード以外の使用人は自由時間となっていた。

 ここちの良いよ夜風にあたりながら木の下に腰を下ろす。


 ポケットからスマホを取り出すとそこにはおびただしい数の通知。明日のスケジュールから帰宅後の学校でのこと、関連企業の現在情報。この満点の夜空の下でもすることは変わらない。


「お隣いいですか?」


 悠斗が歩いてきたホテルからの道には、自分とは違う足跡がついていた。足跡の主は水色のワンピースに麦わら帽子をかぶった少女。


「お疲れ様です、富士見さん。一日疲れましたね」

「そうですね。皆様のご機嫌を取るのに」


 パーティ中もイチャイチャする華凛に怒った父親たちが不機嫌になり、それを見た母親たちが説教をするという地獄絵図が誕生した。その対応で使用人達もてんやわんやでお疲れ状態と言うことだ。


「星が綺麗ですね」

「そう……ですね」


 遮るものなどなにもない満天の星空。確かに綺麗だと思うが悠斗は、それ以上に頭上に目立つの光の方が気になっていた。


「月も綺麗ですよ。海面に反射する様子が綺麗です」

「そうですね。……ですが私は星の方が好きです」

「星ですか」


 瑠衣は水色のワンピースの裾を丁寧に整えながら、悠斗から少し離れた砂の上に腰を下ろした。昼間の騒がしい様子とは違う穏やかな空気が二人に流れる。


「月は誰よりも輝いていて、どうしても目を奪われてしまいます。それはまるで、大和様や華凛様のように」


 瑠衣は小さく膝を抱え、またたく無数の星々を見つめた。


「私はあの方たちのような月にはなれません。でも星にはなれると思うんです。月に比べたらちっぽけで、明かりも小さい。それでも、その光で誰かの足元をそっと照らせるくらいには、輝きたいのです」


『月にはなれない』


 それは使用人になった時点で分かっていた。悠斗たちの人生は傍から見たら裏方で、月の明かりを引き立てるだけの星の一つでしかない。


 彼女の事情も日ノ内での扱いを聞いていた。人質と口にすることはないが彼女の中でなにか劣等感があるのは明白だ。それはこの夜空を見て思った率直な感想なのだろう。


「確かに我々の存在はこの星々に似ているのかもしれませんね。主たちが輝くための夜空を支え、いざという時にその足元を照らすこと。……あなたはすでに、日ノ内という月の隣で一番輝く星ですよ」

「星原さん……」


 このモルディブでの様子を見たが、日ノ内での彼女の扱いは決して人質と言うものには思えない。わざわざ日本からここまで連れてきて色々な経験を積ませる。


 そんなことは信頼を置いていない使用人にするとは思えない。


「な、なんだか星原さんにそう言っていただけると説得力がありますね……。いつも完璧で月若から完璧な信頼を得ているあなたに言われると」

「お褒めいただきありがとうございます。ですが、私もまだ発展途上です。もっと輝けるようになりたいですね」

「これ以上ですか」


 瑠衣はまじまじとこちらを見ながら、吹き出すように笑った。思えばこのバカンス前後から彼女は悠斗の前でよく笑うようになった。それは信頼を得れたからなのかわからない。


 でも前の固い関係より今の方がいい。


 悠斗は隣で小さく肩を揺らす瑠衣を見つめながら内心でそう思った。今こうして隣に並んでいると、ただひたむきに己の職務と向き合う一人の少女なのだと強く実感させられる。


「……? 星原さん、私の顔に何かついていますか?」


 視線に気づいた瑠衣が不思議そうに小首を傾げた。麦わら帽子の隙間から星の光を反射した瞳がまっすぐにこちらを見つめてくる。


「いえそういうわけではありません。ただ初めてお会いした頃に比べると、ずいぶんと柔らかい表情をなさるようになったと思いまして」

「えっ、そ、そうですか……?」

「ええ。最初は私に警戒していたのがまるわかりでしたから」

「それは……仕事柄仕方ないですよ」


 瑠衣は気まずそうに視線を泳がせ口を尖らせた。その様子がまた悠斗の心をわずかに和ませた。


「そうですね。でも今は一人の友人として付き合ってくれませんか? 俺はこの島で過ごす最後の夜はあなたとお話していたいです」


 月明かりに照らされた悠斗の瞳がまっすぐに瑠衣を射抜く。瑠衣はその思いに答えるように頬をあげた。


「わかりました。今は日ノ内や月若の使用人ではなく――友人としてお話ししましょう」


 瑠衣は一度だけ息を吸い、小さく微笑んだ。


「……悠斗くん」


 その一言だけで、悠斗の心臓が大きく跳ねた。


「……はい。瑠衣さん」


 華凛にからかわれて呼んだあの日以来の名前。それは今は自然と口からだすことができたいた。


 最後の夜は月若でも日ノ内でもない少女との思い出話で幕を閉じた。


 ◇


 モルディブでのバカンスはあっという間だった。東京に戻ったら両家の関係は元に戻り表では仲良くできない。


「悠斗楽しかったわね」

「はいお嬢様。また来たいですね」

「次も四人でいきましょ。まぁその時にはもうお互いの関係性が変わってるかもだけど」

「どういうことですか?」

「わからないならいいのよ。まぁともかく、二学期もみんなで楽しく過ごすわよ!」


 夏休みも十分楽しかった。でも、二学期はもっと楽しそうだ。


作品を見つけていただきありがとうございます!

三章ではさまざまなイベントに新キャラの登場で二人の距離が更に近づきます!


面白いと思っていただけたらブックマークやリアクション、ポイントをいただけると励みになります。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ