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執事とメイドのラブコメ  作者: 有明海
1章 一学期編

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24 執事とメイドのプリクラ(1)

「これがゲームセンターか! いいね富士見!」

「は。お褒め頂きありがとうございます」


賑やかで楽しかったクラスの打ち上げを最後に、一学期は幕を閉じた。

そして迎えた、夏休み初日。


今日は、テストを頑張った華凛へのご褒美として、約束していたプリクラを撮る日だ。当初は一学期中に決行する予定だったが、急遽クラスの打ち上げへ参加することになったため、こうして予定が一日ずれることになった。


日ノ内の大和と瑠衣。そして月若の二人といつものメンツだ。


「ゲームセンターと言っても、ショッピングモールのものを真似して再現しただけですがね」

「それでも十分よ。いいわね、これも!」


華凛が目を輝かせて見回すここは、本物のゲームセンターではない。横浜の倉庫を丸ごと一棟貸し切り、最新の筐体をかき集めて再現されたライベート空間だ。


当初は「本物のゲームセンターに制服で行こう!」という話になっていたが、治安の面を考慮した周囲は大反対。「危険な場所と言うならば、安全な場所作ればよろしいかと」とこの形で落ち着いた。


「よっし! それならプリクラまず行くわよ!」


華凛の号令と共に四人は歩き始めた。


並んで歩く先にはネオンで派手に彩られた、最新型のプリクラ機が二台置いてある。初めての異物に手探りで案内する。


「お嬢様、こちらがその『ぷりくら』の筐体になります。中に入って画面の指示に従うだけのようですが……」


悠斗が先行してピンクのカーテンを引くと、華凛は「ほう……!」と感心したように、未知の空間へ一歩を踏み出した。


「なるほどここで撮るのね。悠斗もるいるいも入ってきて」

「私達もですか?」


悠斗が確認するようにカーテンを少し大きく開けると、華凛はすでに筐体の中央に立ち胸を張っていた。そもそも今日は、大和と華凛のお戯れの延長でもある。まで使用人二人は、案内の為に来たつもりだったがそれは違うらしい。


「ほら早くおいで、二人とも」


大和にもこう言われてしまったら、そうせざるを得ない。


「……かしこまりました。大和様、お足元にお気をつけください」


悠斗と瑠衣は一瞬だけ驚いたように顔を合わせ、狭い筐体内へと滑り込んできた。

最後に悠斗が中に入り、ピンクのカーテンをきっちりと閉める。


最新型のプリクラ機の中は、大人四人が入るとさすがに少々手狭だった。


『――撮影を始めるよ! 画面の前に集まってね!』


突然、筐体内のスピーカーから明るい機械音声が流れ、正面の大きなモニターが有無を言わさずカウントダウンを開始する。


「なっ、もう始まるのかしら!? 悠斗、ポーズはどうすればいいの!?」

「画面に『ピースをしよう』と指示が出ています、お嬢様! ほら、富士見さんも大和様も、カメラはあそこです!」


普段の護衛任務では決して見せないような慌てぶりで、四人は一斉に正面のカメラレンズを見つめた。


『3、2、1』


それと同時にシャッターが鳴り、画面には四人の表情が表示される。

華凛と大和は笑顔だが使用人二人の顔は無表情で硬いものになっている。


「あんたたち笑いなさいよ!」


その後も、お嬢様の「もっと寄って!」「ほら、次はこのポーズよ!」という容赦ない号令のもと、数枚の撮影がドタバタと進んでいった。



撮影を終え、筐体の側面にある『落書きコーナー』のタッチペンを手にした華凛は、画面に映る自分たちの歪な写真を前に、ふと思いついたように振り返った。


「私たちが落書きするから、あなたたち二人で撮ってくれば?」

「え?」

「この後、大和と二人で撮りたいし。一つ余ってもったいないじゃない」

「しかし、華凛様。私たちはあくまで使用人であり、本日はお二人のサポートの為に……」

「いいから行ってきなさい! これは月若華凛としての命令よ!」


その言葉が出てしまえば悠斗はどうすることはできない。ちらっと横目で見ると、同じように困惑をにじませた瑠衣と同時に目が合った。


「……星原さん、お嬢様の命令とあれば、背くわけにはいきませんね」

「はぁ……承知いたしました。そのように」


大和が「楽しんでおいで」と優しく微笑むのを背に、二人は隣に設置されている、もう一台のプリクラ機へと移動した。


筐体から流れる明るい機械音声が、二人の間の沈黙を破る。


「だそうです。もう少しこちらへ」


瑠衣がモニターの枠内に収まろうとして、すっと中央へ一歩寄ってきた。そう言われるも、これ以上近づいたら肩が完全に当たってしまう。


「ちょっと近すぎるのでは……」

「仕方ありません指示なのですから。それに練習しましょう」

「なんのですか?」

「これから写真を撮ることは多くなると思います。『普通の高校生』としての笑顔や表情を鍛える練習です」


確かに昨日の打ち上げの際、クラスメイトたちはスマホを構え写真を頻繁に取っていた。あそこではビジネススマイルで乗り越えることができたが、あれを数パターン用意しなければいけないのか。


「なるほど確かにそうですね」

「はい……それと」


瑠衣は小さく頷くと、肩が当たる距離のまま、正面のレンズをまっすぐ見据えた。


『次は、可愛いポーズで行くよ! 3、2、1……』


「あなたとは使用人としての立場以上に……なんでも相談のできる関係になりたいですから」

「え?」


パシャリ、と白い光が弾ける。


画面に表示されたのは、ぎこちない笑顔を浮かべる瑠衣と口を開け彼女の方を見つめる悠斗の写真。


「星原さん、しっかりカメラを向いてください。ほら次はポーズ指定です」


瑠衣は何事もなかったかのように、モニターを指差す。が、その耳たぶがほんのりと赤くなっているのを悠斗は気づいていた。

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