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執事とメイドのラブコメ  作者: 有明海
1章 一学期編

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14 執事とクラスの女の子達

「昨日は上手くいったみたいね、悠斗」

「はい。なんとか頑張りました」


 昨日は、クレーンゲームでぬいぐるみを取った後、悠斗たちはそのまま現地で解散となった。時間が遅かったのもあるが、何よりゲームセンターというものが未知の空間すぎてこれ以上長居するのは危険だと悠斗が判断したためだ。


 それに早速いただいたネクタイピンを付けさせてもらってる。これは学校用と言うことで使用することにした。


「私もゲーセンとか行ってみたいわ。『プリクラ』やってみたい」

「なるほど。では、次回のデートプランにはそのプリクラを組み込んでみましょうか」


 そんな会話をしながら教室のドアを開けると、いつも通りクラスからの視線が一斉に集まった。ただ、今日の視線はいつもと違う感じがした。


「あ、あの……」


 クラスメイトの女子生徒がこちらに向かって歩いてくる。てっきり、いつものように華凛に用事があるのだろうと悠斗は思っていた。転校して間もないというのに、華凛はすでに女子たちの中心人物となっており、朝の挨拶や雑談に花を咲かせるのが恒例行事になっていたからだ。


 しかし、その女子生徒は華凛の一歩手前で足を止め、悠斗を真っ直ぐに見上げた。


「星原くん!」

「え、私ですか? 何か……」


 珍しく自分に用があったようで、悠斗は思いがけない展開に少し驚いてしまう。


「あの……聞きたいことがあって」

「はい」

「星原くんって、富士見さんと付き合ってるの?」

「へぇ?」


 あまりに予想外すぎる質問に、悠斗の口から変な声が漏れた。


「ええっと……それは一体、なぜですか?」

「だって、昨日富士見さんと一緒にゲーセンにいたでしょ! 私、たまたま見つけちゃったんだよね。UFOキャッチャーやってたじゃん」

「あー……なるほど」


 昨日見かけた、同じ制服を着た生徒たちの中に、クラスメイトが混ざっていたらしい。それに、あの距離感でぬいぐるみをやり取りしていた姿を見られたのだとしたら、デート中だと勘違いされても文句は言えない。


「実際どうなの?」

「いえ、それは誤解ですよ。付き合っていません」

「えー? じゃあ、なんで二人きりでゲーセンにいたの? それに……」


 女子生徒の視線が、悠斗の後ろに立つ華凛へと向けられる。

 悠斗が華凛の「執事」であることは、クラスメイトも当然知っている。一方で、瑠衣が「大和の使用人」であることは周囲に隠している。


 つまり、クラスの面々の目には『星原悠斗は、自分の主である華凛様を放置して、クラスの女子と放課後デートを楽しんでいた執事』として映ってしまっているということだ。


「うーん。それは……」

「私が頼んだのよ。悠斗は最近頑張りすぎだから、たまには息抜きでもしてきなさいって」


 どう言い訳をするか考えていた悠斗に向かい、隣にいた華凛が上手いこと助け舟を出してくれた。悠斗は内心で安堵し、甘えるようにその船に乗ることにした。


「そ、そうなんですよ。ただ、私自身は何をすればいいかもよく分からなかったので……」

「だから、隣の席のるいるいに私からお願いしたの。そうよね、るいるい」

「ええ。月若さんからのお願いでしたので」


 いつの間にか教室に入ってきていた瑠衣が、いつもの無表情のまま悠斗たちの会話にすっと割って入ってきた。


「なるほど、そういうことなんだね。でも富士見さんもゲーセンとか行くんだね、意外」

「そうですね。今後の勉強のために」

「勉強?」

「あ、あー! それは、私がお嬢様に『一般的な娯楽を社会勉強として学んできたい』と事前にお願いしていまして! はい!」


 悠斗の苦し紛れの補足に、女子生徒は「なるほどぉ、執事ってそういうこともするんだ」と納得してくれたようだ。一息ついてようやく席に就こうとすると、その女子生徒は最後にとんでもない爆弾を落としていった。


「え! じゃあ月若さん。星原くんが彼女できることには何も問題ないの?」

「んー? まぁ別にいいんじゃない」

「恋愛禁止とかは? 家の決まりでとか」

「ないわよそんなの。まぁ私のこと優先にはしてもらうかもだけど。それは流石に仕事だからねぇー」


 華凛のその言葉を機に、周囲の女子たちの目が一気に輝きを増したように悠斗には見えた。これまで遠巻きにされていた視線が、なぜかこちらに一斉に向く。しかし、当の悠斗にはその理由がよく分からず、

「なんだか妙に視線がむず痒いな」と居心地の悪さに首を傾げる程度だった。

 クラスの女子たちがひとまず離れたところで、悠斗は隣の席の瑠衣に声をかけた。


「富士見さん、昨日はありがとうございました。それから、さっきのことも合わせてありがとうございます」

「いえ、問題ありません。私も……『クラスメイト』として、誰かと放課後に出かけるのは新鮮で楽しかったですから。ただ……」


 瑠衣はそう言って、周りをチラリと見た。悠斗も彼女の視線を追うと、そこには先ほど話しかけてきた女子生徒を含め、こちらをじっと見つめるクラスの女子たちの姿があった。


「ただ?」

「いえ。これからは色々と大変なことも多くなると思いますが……頑張ってくださいね。私も応援しています」


 瑠衣のどこか含みのある言葉の意味が分からず、悠斗は「あ、はい」と気の抜けた返事をすることしかできなかった。


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