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給仕令嬢は悪女  作者: 雨宮白雨


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第9話 新月の誓い

不遇な令嬢が前世の記憶を取り戻したとき、自分を幸せにする覚悟を決めた。記憶と接客技術を武器に踏み出した一歩は、やがて国も巻き込んでいく…。


不定期更新です。

ハンナに紙とペンを頼んだ。

温かいハーブティーとクッキーと共に机の上に置かれた。


「病み上がりだから、早く寝てね。」


ハンナは優しい目で見守る。

静かに部屋を後にした。

リノは椅子に腰を掛け机に向き合う。

ハーブティーを一口飲み呟く。


「ふぅ…。」


リノはペンを手に取った。

順調にペンを走らせる。


ー母の死…


リノの手が止まる…。

口が乾く。ハーブティーを飲む。

徐々に冷めていく。

両手で自分の頬を叩く。

再びペンを走らせた。


「前世である佐藤梨乃の記憶がある。

 

 前世

 ・大学では心理学を学んでいた。

 ・カフェの店長をしていた。 

 ・母が殺された。

 ・許せない女性がいる。鈴木?

 ・プリンが好き。


 現在

 ・母の死の記憶がない。私を庇って亡くなった…?

 ・前世の記憶を持つ者がいる。誰?

 ・エノレアは昔の私を知っている。 

 ・本家での立場は弱い。

 ・父はこの状況知っている?

 ・執事は味方っぽい…?


 疑問

 ・なぜ私は本家に引き取られることを選んだ?

 ・なぜ過去の記憶を消した?

 

 推測

 ・前世の知識を利用して記憶を操作出来るぐらい母の死は衝撃だった?

 ・前世の記憶を持つ者が母の死に絡んでる?

 ・前世の記憶を持つ者が本家にいる?

 ・前世の記憶を持つ者は敵??                   」




「ふぅ…。」


リノはペンを置く。

見上げた天井は歪んで見えた。

冷めたハーブティーを飲む。

冷たさが心の感覚を呼び戻す。

メモに目を落とした。


ー異世界転生っぽい。

 前世は好きだったな。

 物語の中ならこれから逆転しかないけど…。

 これは現実…。


リノは胸のあたりが重くなるのを感じた。

窓を開け、深呼吸する。

暫く外を眺めていた。

クッキーを食べる。

思考を巡らせた。

時計の針の音だけが部屋に響く。


ー状況が良くない…。

 どうしたい…?

 まずは自由に動けるようにならないと…。

 おば様の養子になる…?

 前世の記憶を持つ者が気になる…。

 そのためには本家に味方を作らないと…。

ハンナさんに協力してもらいたい。

 どこまで話す…?全て話そう…。

 どんな結果も受け入れよう。


リノの心が震える。

メモを見る視界が揺れた。


ー前世も今も優しい人に囲まれているのに…。

 何一つ守れてない。 

 私はただやられているだけ…。

 変わらなきゃ…。

 戦わないと…。

 誰と…?自分と。


リノの脳裏に”優しい眼差しのハンナさん”が浮かんだ。


ーハンナさん…。

 巻き込む。 

 憎んでいいよ。

 …必要。

 

リノは残ったハーブティーを飲み干す。

一度、大きく伸びをした。

鋭い眼差しで外を眺める。

妖艶な闇が一面に広がっていた。


ー新月か…。


闇を静かにリノの目に写す。

 

ー幸せにする…。必ず…。 


リノは身震いをする。

そして、静かに笑う。

冷たい夜風を全身で感じた。


静かに夜が明けるのを待つ。

リノは朝焼けと共に騎士の練習場に向かった。

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