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第3話 入学式

 あれから3日が経ち、今日は入学式当日。

入学式といえばおなじみの校長のありがたいお話を聞きながら、俺は自分の周りを軽く見渡した。


「入学式とはいえさすがに人が少ないな。」

 春入学なんだし、当然と言えば当然なんだろうが。この世界では秋入学が基本。春に入学するのは事情があって秋に入学が間に合わなかった人たちがほとんどらしい。とはいえ、国内で最も規模の大きい学園にもかかわらず120人程しか見当たらないというのは、前世で日本の大学に通っていた俺からすると驚きである。


 これから1年間で基礎的な内容を学んだ後、専門的な分野を学んでいくことになる。俺たちは入学後A、B、C、 Dの4つのクラスに振り分けられる。

 俺はCクラスの振り分けとなった。AクラスとBクラスには基本的には上級貴族の子供や下級貴族の跡継ぎが入っていて、CとDクラスには俺たちのようななんちゃって貴族や平民が入っている。一応この学園は建前上は身分による差は無いと謳っているが、実際はそんなことはない。寮の設備や教員の質、クラス分けなどからも明らかだ。


 特に今年は、この国の第1王子が入学してくるとかなんとかで例年よりも入学者数が増加している。そのため従来の寮の部屋数では生徒を受け入れられなくなり俺たちのような下級貴族が、ゴキブリが出てきて廊下から糞尿の匂いがするような寮に住まわされているのだ。許せない。


 この学園への恨みつらみを心の中で呟いているといつの間にか校長のありがたい話も終わり、教室での自由時間となった。


『なあなあカイ、タイプの子はいたか!!』

 そう話すのは自称爽やか系ハンサムイケメンであるバロール・ミロ。俺と同じ下級貴族である騎士爵家の3男で、本人曰く恋愛マスターらしいが、果たして彼は本当に恋愛マスターなのだろうか。今までに出来た彼女の名前を聞いた時に一瞬挙動不審になっていたり、会話のたびに彼女の名前が変わることからも相当怪しい。だがしかし、誰にでもこういう時期はあるので暖かく見守ろうと思う。


『えっ、そんな急に言われても……』

 ミロにそう言われ困惑した反応をしたのはカラクム商会の次男坊であるカイ。人見知りな性格をしているが魔法を扱うのがうまく頭も切れる優秀な奴だ。どこぞの自称恋愛マスターと違って。そして何よりかわいい。彼を見ていると、俺の新たな扉が開かれそうになる。


2人は俺が学園に入って出来た初めての友達だ。


「学園生活は4年もあるんだから、焦らずゆっくり探せばいいでしょ。」


『ふっ、エルムもカイも分かってないな。モタモタしてたらかわいい子なんてあっという間に売り切れちまうぞ。』

そういうものなのか。前世では恋愛とは無縁な生活を送っていたため正直よくわからん。


『俺たちみたいなnot跡継ぎの下級貴族はここで逆玉の輿するしか生きる道はないんだよ。俺はぜったいにかわいい子を捕まえて結婚してみせる!!』


「お、おう、頑張れよ」


『ちなみになんだけどさ、どうやってかわいい子を捕まえるつもりなの?』

それは俺も気になっていたところだ。おそらくこの自信から察するに、かなりの秘策があると見た。


『それは、あれだよ……壁ダァァンだよ』

ん?こいつは何を言っているんだ?


『目の前に女がいるとするだろ。まずはそいつを壁際に連れてきて、その子と目が合った瞬間勢いよく壁を叩く』

叩くな。


『そして最後に耳元で、俺と付き合ってくれと愛を囁く。』


『な、完璧だろ!!』

 何が完璧なのかが分からないが、とりあえずこいつに彼女ができることが当分先なのは分かった。

とまあ俺たちがくだらない雑談をしていると


『お前ら席に着け』

教室の前方の扉のガシャっという開く音と同時に渋い声が教室に鳴り響いた。


白い髭をつけたダンディなおじさんは俺たちが静かになったと同時に話し始めた。

『今日からお前たちの指導官となったローズベル、ヒューゴだ。気軽にヒューゴ教官と呼んでくれていいぞ。』


『何、気にするな。ここにいるのはほとんどが下級貴族や商人の子供だ。身分差を気にする必要はない。ただ上のクラスの奴らには気をつけろよ。あまり無礼な態度を取るなよ。』

 それからイケおじはこの学園での注意すべきことについて話し始めた。まあこれについては特に話すこともないので割愛する。


『これから1年間、時間を共にするんだ。自己紹介くらいはしておいたほうがいいだろ。』

それからはクラスメイトの自己紹介が始まった。


まあ自己紹介はつつがなく終わった。ミロが自己紹介で場の空気を凍らせたこと以外は至って平和に終わった。

えっ、ミロの自己紹介がどんなのかって?嫌だよ、思い出したくもない……


『学食行こうぜ』

 自己紹介でめちゃくちゃ滑ったというのに、当人は一才気にした様子が無い。俺だったら恥ずかしさで立ち直れずそのまま退学しているところだが……それがミロのいい所なのかもしれない。たぶん、きっと、おそらく。

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