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第2話 目覚まし

  『コケコッコーーーーー!!!!』

甲高い声が寮全体に響き渡った

 

「……は?」

俺はあくびをしながら眠い目を擦る。外はまだ薄暗く、肌寒さが残る時間帯。今、動物の鳴き声がしたような……まさかな……


そして再びーーー

『コケコッコーーーーー!!!!』

   『コケコッコーーーーー!!!!』

  『コケコッコーーーーー!!!!』

        『コケコッコーーーーー!!!!』    

                  『コケコッコーーーーー!!!!』

 先ほどとは異なり今度はいくつもの鳴き声が同時に聞こえてきた。流石に俺の聞き間違いではあるまい。これにはたまらず目が冷めてしまった。とりあえず、さっぱりしようと顔を洗いに1階の洗面所に行く。


 この寮ではトイレや洗面所等の水回り施設は1階に行かないと使えない。2階にもトイレと洗面所はあったのだが、建物の老朽化によって故障していて現在使用が不可能となっている。


『キィィ』

 一歩廊下を進むたびに床が軋む音が聞こえる。この音を聞くたびにここに住んで大丈夫なのか不安になってしまうのは俺が怖がりだからなのだろうか。いつかこの寮ごと倒壊してもおかしくない気がする。早くこの寮から脱獄したい……


 そんなことを考えながら階段を降りていると、1階の広間の方から話し声が聞こえてきた。興味本位で聞き耳を立ててみると……


『あっの鶏野郎フライドチキンにしてやる』


『俺らの睡眠の邪魔しやがって。ぶっ殺してやる。』


『落ち着いてください。鶏たちには何の罪もないんですよ。その縄で何をする気ですか。早く縄から手を離してください』



何やら物騒な話をしている。


 気持ちは痛いほどわかる。辺境の田舎貴族出身の俺といえど、さすがに鶏にモーニングコールをされたことはなかった。鶏小屋と寮が隣接しているのはおそらくここくらいなものだろう。


 俺もこんな朝早くに起こされて、イライラしているため俺も彼らに混ざって文句を言い合うことにした。

俺たちが鶏の鳴き声について文句を言い合っていると……


『うるさいよ!!いったい何を騒いでいるんだい?』

 この寮最強のお方。寮母マーガレットさんが現れてしまった。まだこの寮に住み始めて2日目だが、すでに寮生全員がマーガレットさんに逆らってはいけないという共通認識を持っている。というのも、昨日、一部の寮生が寮のボロ具合についてマーガレットさんに抗議しに行ったところ、全員ボコボコにされてしまったのだ。


『に、鶏が急に大声で叫んできて』

どうやらこいつは死にたいらしい。骨くらいは拾ってやるか。


『ここでは鶏の鳴き声なんて当たり前だよ。むしろ、鶏が朝起こしてくれることを感謝しなさい。もう朝起こしに来てくれる家族や執事なんていないんだよ。』


『そんなぁ~こんな朝早くに起こされても』

そうだそうだ、俺は心の奥底で密かにそう呟いた。


「なんか文句ある」

マーガレットさんはおそらく朝食の支度に使っていたであろう包丁を彼に向けながらそう言い放った。包丁からはおそらく先ほどまで捌いていたであろう動物の血がついていた。この辺り一体で手に入る血が出るほど新鮮な肉といったら、これ以上考えるのはやめにしよう


『いえ、文句なんて滅相もございません。大変失礼いたしました。』

彼も命が惜しかったのか先ほどまでの態度とは打って変わっておとなしくなった。正しい判断だろう。もし彼がまだ抗議を続けていたら、マーガレットさんの包丁は血で染まっていたに違いない。

しかしまあ、


「……これを毎日か」

王立貴族学園に来て2日目にして、なんとも言えない気分になったエルムたちの朝の出来事であった。

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