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第1話 なんで俺が学園に?

 春、それは出会いと別れの季節。人間関係に最も変化が起きやすい季節は春である……もっとも、それは俺がもといた現代日本に限った話だが。そう、元の世界では。

 何が言いたいのかというと……俺は転生者なんだ。

 ちょうど就活も終わり、これから社会人として頑張っていこうと思っていた矢先に、急に異世界に転生してしまった。

 まぁ転生してしまったものはしょうがないから、心機一転頑張ろうと今まで過ごしてきた。せっかく貴族の3男に転生できたことだし、ニート生活を謳歌しよう、そう思っていたのに。


「まさか、もう一度学校に通うハメになるとはなぁ。」

 眼前にそびえ立つ石造りの高い外壁はさながら日本の城を感じさせる。正門も黒い鉄のようなもので出来ていて見るものに威圧感を与える感じだ。

 ここが王立貴族学園、今日から俺が通うことになる場所か。


『いつ見てもここは壮観ですな』

 そう発言したのは、俺と一緒に遠路はるばる王都の学園まで来た執事のクリフ。うちの家に務めて30年以上になる大ベテランの執事だ。


「じいやはここに来たことがあるのか」


『……ここにくると右手が疼くものですよ』

何があったんだよ


 じいやは意味深な発言の後、俺の目を見て哀愁漂う顔で言った。

『坊ちゃま、4年というのは案外長いようで短くございます。何も考えず過ごしていたら、あっという間に時間が過ぎ去ってしまいますぞ。悔いのないようお過ごしくだされ。私から言えることは、それくらいでございます。』


「わかってるって。その話、耳にタコができるほど聞かされたし」

ていうか、二度目の学校生活だし。


『なら何も言うことはございません。坊ちゃま、お体にお気を付けて。』


「ああ、ありがとな。」


さて、クリフも帰ったことだし、学生寮に行くとするか。


 王立貴族学園には4つの学生寮がある。王族や公爵家のみが使用を許される上級貴族寮、侯爵家や伯爵家が利用することのできる中級貴族寮、子爵家や男爵家が利用することのできる下級貴族寮、平民が利用する一般寮。


 なんでも、上級貴族寮は設備がものすごいらしい。専用の大広間、中庭、食堂、寝室、書斎、応接室使用人専用の部屋、個人浴室etc……

 まあ俺は由緒正しき子爵家三男であるため下級貴族寮を利用することになるのだが。

 ちなみに、伯爵家以上の爵位を持つ家は基本的に王都にある別邸から学園に通うため実際に寮を使うことはほとんどないらしい。まったくもって税金の無駄遣いである。


 学園の馬車乗り場から西に歩くこと10分。マグノリアのような白い花が咲き乱れるレンガ道を進んだ先にそれは建っていた。

 それまでの赤茶色のレンガ道とは似ても似つかない木造の建物。それも築何十年というレベルのボロさだった。


「おいおい……なんだこのボロ屋敷は!?」

2階建ての、言うなれば京都の老舗旅館みたいな感じだろうか。だが、老舗というのは趣きがあるからこその老舗なのだ。俺の目の前にある建物はただボロいだけだ。


「見るからに汚いぞ、ここに住むのか……でも、住めば都って言うもんな。ここだってきっと……」


 全っ然都じゃなかった。なんだあのごみ屋敷は。なんで壁に穴が開いてるんだよ。なんでゴキブリがいるんだよ。なんで廊下からアンモニア臭がするんだよ。意味の分からないことだらけだった。


 6畳半ほどの大きさの部屋にベッドと机と椅子が1つずつ置いてあるだけの、貴族が住むとは思えないほど質素な部屋。それに加えて部屋の壁が薄いため、生活音は丸聞こえである。


「ここに住むのかぁー」

学園に来て初日から不安になってしまった。

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